三菱自動車が今年4月の燃費データの不正発覚後、別の車種の再測定でも同じような不正を続けていた問題が大きな波紋を呼んでいる。
国交省は9月15日、同社を「常軌を逸する事態と言わざるを得ない」と厳しく批判。同社の益子修会長兼社長も「現場が本当に悪いと思っていたか疑問だ」と述べたとされるが、2000年の「リコール隠し」以来続く不祥事は、なぜいつまでも続くのだろうか。
若手社員が「上申を取り合わない」会社を見限り退職
口コミサイトの「キャリコネ」には、ここ1年の間に同社を退職した元社員の告発が数多く見られる。技術関連職で働いていた30代前半の元社員は9月初旬の書き込みで、自らの退職は「燃費不正問題が発端」とハッキリ明かしている。
「問題が発生して以降、一般社員の中では企業内体質の改革について必要、実施すべきとの声が上がっていたが、上層部へ上申しても全く取り合わない、燃費不正問題すら過去のこと、他部署の問題と相手にしない態度に、この会社の将来はないと感じた」
かなり厳しい調子だが、この男性は5月に発表された日産自動車との資本業務提携についても「他社に改革をしてもらえなければ変われないようでは、真に問題を反省しているとは言えず、また問題を起こすと思う」としている。
不正再発を懸念しているのは、この男性だけではない。海外営業に従事しながら、やはり「燃費不正問題」を理由に退職した30代後半の元社員も「更にもっと大きな問題が発覚するのではと感じた」という不安を8月に書き込んでいる。その問題とは今回発覚した不正なのか。それとも新たな火種なのか。
研究開発部門に在籍中の40代男性も「若手の社員の流出が止まらなく、今後の開発を賄っていく人材がいない」と嘆き、自らも退職を予定している。制御設計を担当する20代男性も、まもなく退職するという。
「企業としてあるまじき行為を1度、2度ならず3度目を行ってしまい、呆れてしまった。また、こんなことを起こしても社員は特に気にすることなく、三菱という名前からか危機感がない。こんな状態では、今後また問題を起こす」
居心地はいいが「成長できないまま年を取りたくはない」
こんな会社だが、不正を自分のこととして気にしない社員にとっては、依然として居心地はいいようだ。「今回転職することを考えております」という30代後半の商品開発担当者は、不満を連ねた書き込みをこう締めている。
「ただ、働きやすい環境の会社ではありますが」
昨年10月に書き込みを残した20代後半の元エンジニアは、「居心地が良過ぎて自身の成長を止めてしまいそうだから」という驚くべき理由で退職したという。
「三菱自動車は、言われたことだけをやって大きなストレスを抱えることなく定年まで穏便に働きたい人には、天国のような会社です。しかし20代でこの環境に満足し、成長できないまま年を取りたくはない」
30代前半の財務担当者は「激務の大手メーカー」に勤めていたが、「まったり企業」で働きたくて三菱自動車に転職。そんな彼でも「成果を出さずとも年功序列で課長職レベルまでいける」代わりに、波風を立てないことばかりを求める社風に嫌気が差したようだ。
「たった2年ほどの勤務経験でしたが、自分のスキルが落ちる一方だったので転職を決意しました」
「古きよき日本企業」の不祥事はいつまで続くのか
同社社員・元社員からの400件を超える「キャリコネ」への書き込みに見られるのは、自社を「古きよき日本企業」と称する言葉だ。聞こえはいいが、事なかれ主義の風通しの悪い組織の姿である。
「配下社員がNOと上司に伝えても、上司がNOと上にあげることはない」(機械設計)
「一社員が問題と思って上司へ報告しても、上司が問題を問題と認識しないことが多い。そのため、『報告しても無駄』という雰囲気が出来上がってしまっている」(技術関連職)
ある20代の社員は「『企業体質』が完全に腐りきっていると感じる」とまで断じているが、同じような組織の問題は他の大企業にもはびこっているのではないだろうか。
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