今年、ハースF1チームに移籍し、チーフエンジニアとしてチームのレース部門を統括する小松礼雄氏。新チームながら、すでに中位を争うハースの評価は高まるばかり。今回は夏休み明けの連戦、ベルギーGPとイタリアGPの内情が盛りだくさん。F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラム第12回をお届けします。
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熾烈な中盤戦で許されないミスとトラブル
計算できる、良いドライバーの必要条件
みなさん、お久しぶりです。夏休み明けの2連戦、ベルギーGPとイタリアGPについて今回のコラムはお伝えしたいと思います。休み明けでいきなりの2連戦ですが、休みボケみたいなものはなく、僕も含めて、休んだお陰でみんな元気になって帰って来ました。なにせ、休み前は冬の新車組み立てからノンストップでみんな疲れきっていましたからね(苦笑)。
明けての2連戦はきついと見えるかもしれませんが、毎年、ベルギー~モンツァの連戦でヨーロッパラウンドが終了、その後はフライアウェイでシンガポールという流れが、もう体に染みこんでいます。
そのベルギーですが、前のグランプリから期間は空きましたが、クルマのアップデートなどは特にありませんでした。今あるパッケージの中でミディアムダウンフォースのレベルに合わせられる部品があるので、ベルギーは何も入れず、モンツァだけは、さらにドラッグを減らした新しいローダウンフォースパッケージを入れました。
ベルギーの週末は、まずは安定して走らせるためにやや多めにつけたダウンフォース設定で走り始めました。その後、他のクルマの最高速やタイヤ、路面状況を見ながら、適度なダウンフォース設定を探りました。クルマは最初から思った以上に良く、ドライバー2人ともに前向きな感触でした。
予選も予想どおりのパフォーマンスが出せましたが、レースではそれをポイントにつなげることができず、残念でした。レース序盤に2度、セーフティカーが出ましたが、1回目はピットストップするには早すぎたのでステイアウトしました。2度目のマグヌッセンのアクシデントの際は通常予定していたピットストップのタイミングに近かったので、2台ともタイヤ交換に入りました。しかし、結局は赤旗中断になったので、これで少し順位を下げてしまいました。
この赤旗で最も救われたのは1周目のアクシデントで大幅に遅れをとっていた3台(セバスチャン・ベッテル、キミ・ライコネン、マックス・フェルスタッペン)とミディアムタイヤでスタートしていた(フェルナンド)アロンソと(ルイス)ハミルトンでした。
結局、ウチのチームはこの5人全員に負けてしまうんですけれど、赤旗がなければこのうち何人かには勝ててポイントが獲れたと思うので残念です。でも、あまり文句ばかり言っていられません。メルボルンでは逆に赤旗中断が僕らの戦略にぴったりはまって6位になれたんですから、得をするときもあれば損をするときもあるわけです。
それでも、この後も普通に戦っていればポイントは十分に獲れたと思いますが、セーフティカー後にロマン(グロージャン)のマシンにエネルギー関連の問題が起きてしまいました。エネルギーを回生ができなくて、全然トップスピードが伸びなくなってしまったのです。
エネルギー不足でMGU-Kがストレートのかなり早い時点でカットされてしまいました。スパでストレートがある程度より遅かったら、もうディフェンスのしようがなく、勝負になりません。5周のうちに9位から13位くらいまで落ちてしまいました。起きてはいけない問題が、一番悪い状況で出てしまいました。このトラブルでエステバン(グティエレス)にも抜かれたので、さらにこれが2度目のピットストップのタイミングに影響を与えることになります。
エステバンの方はFP3での進路妨害でグリッドペナルティ受けていたので、スタート前から入賞は厳しくなりました。そういうペナルティを受けてしまうと、中位争いが僅差の現在の状況では、自力でポイントを獲得するのは厳しくなってしまいます。ロマンにしても、エステバンにしても、週末を通して何かひとつうまくいかないとポイントに届かないという、ベルギーGPはまさにその典型的な悪い例となってしまいました。
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