ロマン・グロージャンが、ハースへの移籍を決めたのは、将来フェラーリへ行きたいためというよりも、むしろルノーが2016年には下位に転落する可能性が見えたからだと述べた。
フェラーリが7月にキミ・ライコネンと来季の契約を交わすまで、グロージャンはライコネンの後任としてフェラーリ入りが噂された、何人かの候補者のひとりに数えられていた。また、ハースとフェラーリの関係の深さこそ、昨年グロージャンがロータスを離れようと決めた主な理由とも考えられていた。すでにその時点で、ロータスが再びルノーに買収され、ワークスチームになることは彼も知っていたからだ。
いずれはフェラーリ入りを果たす可能性が残されていると思うか、との質問に対し、グロージャンは次のように答えた。
「まだあると思うよ。ただ、ハースへ行こうと思ったのは、その先のフェラーリ移籍を考えていたからではない。僕は、ルノーが今年実際にそうなっているように、かなり厳しいシーズンを送ることになると予想していたんだ」
「その一方で、アメリカのチームがF1に参入しようとしていた。そこで考えたんだ。もし僕がそれに加わって、チームの成功に貢献できれば、アメリカでF1の人気を高めることができるかもしれないってね。『ハースはフェラーリのエンジンを使うから、いずれは僕もフェラーリへ行けるかも』という考えよりも、そういう理由のほうがずっと大きかった」
「フェラーリは、チームに必要だと思ったドライバーを雇うだろう。そのドライバーがハースにいたか、他のチームにいたかは、彼らにとっては関係ない。だから、僕らにできるのは、良い仕事を続けて、一貫性があることを証明し、クルマを速くするように努め、彼らにとって良い候補者であり続けることだけだ」
また、フェラーリがライコネンと再契約したことを知って失望したかとの質問に、彼はこう答えている。
「ああ、だって僕もいつかはフェラーリへ行きたいと思っているからね」
「ただ、それと同時に、『よし、そういうことなら、僕にはハースの新車に乗るチャンスがある』とも考えた。僕はこのチームで初めて選手権ポイントを獲得したドライバーだ。そして、初めてポディウムに上がったドライバー、あるいはチームとして初優勝を記録するドライバーにだってなれるかもしれない」
とはいえ、グロージャンも、F1世界チャンピオンになるという彼の野望を、ハースと共に実現できる可能性はあまり高くないと承知しており、当面は忍耐が求められると考えているようだ。
「ハースとの契約は、僕のキャリアと人生にとってすばらしい機会であり、このチームにいることに心から満足している」と、30歳の節目を迎えたグロージャンは言う。
「もちろん、ワールドチャンピオンにはなりたいし、レースを続ける理由もそこにある。僕はここへ来るまでに参加したすべてのシリーズで、タイトルを勝ち取ってきた。だから、『やっぱりF1のチャンピオンは無理だったか』と思いながらキャリアを終えたくはないんだ。ただ、それにはチャンピオンになれるクルマを持ったチームにいる必要がある」
「僕もいつかはその夢を実現したい。だけど、焦っても仕方がないんだ。僕は30歳だ。そして、来年からレギュレーションが変わることを考えると、フェラーリが継続性を求めてライコネンを選んだのも理解できる」
「このチームはとても居心地がいい。初日から自分が歓迎されていると感じてきたし、チームにとって重要な役割を任され、さらに経験を重ねながら、楽しい時間を過ごせそうだと思っている」