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#31 TOYOTA PRIUS apr GT スーパーGT第6戦鈴鹿 レースレポート

2016年09月12日 13:31  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

#31 TOYOTA PRIUS apr GT
2016 AUTOBACS SUPER GT ROUND 6
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km
8月27日(予選)天候:晴れ コース:ドライ 観客数:26,500人
8月28日(決勝)天候:晴れ一時雨 コース:ドライ 観客数:34,000人

伝統の1000kmレースをしぶとく戦い、2位入賞を果たす!

 スーパーGTシリーズの第6戦は、伝統の1戦「インターナショナル鈴鹿1000km」として、鈴鹿サーキットで開催された。豊富な車種のバラエティと激しいバトルが魅力のGT300クラスに挑むaprは、今年から2台の新型ZVW50プリウスを投入。31号車を昨年に続いて、嵯峨宏紀選手と中山雄一選手に託すこととなった。タイヤも引き続きブリヂストンが使用される。

 嵯峨選手と中山選手の駆る「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は、スポーツランドSUGOで行われた第4戦で予選2番手を獲得。決勝では、終盤の激しいオーバーテイクショーによって逆転でトップに立ち、その結果、新型プリウスでの初優勝を飾ることとなった。その一方で、前後の3レースでは不運が重なり、完走を果たすだけの展開となってしまってもいた。

 しかし、ウエイトハンデに苦しんでいない状態で、ボーナスポイント制度がとられている1000kmレースに挑めるのは、前向きに捉えればビッグチャンス!特に今年のGT300クラスはシリーズポイントの分散が目立っているだけに、上位入賞を果たせばランキングも一気に上げられるからだ。SUGO、富士から短いインターバルで続いた「真夏の3連戦」の最終幕での活躍が、大いに期待された。

公式練習 8月27日(土)9:20~11:55
 公式練習が始まる直前に雨が降り、WET宣言も出されたものの、一瞬でやんで結局、全車がドライタイヤで走行開始となった。今回も最初に「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」をドライブしたのは中山選手。まずピットイン~アウトを行って、チェックを行った後、2周計測を行い2分1秒990をマークしてピットに戻る。しかし、その後が続かない。ブレーキにトラブルが発生し、修復を強いられていたからだ。ようやくピットを離れたのは、間も無く計測開始から1時間を過ぎようという頃。

 引き続き中山選手が走行したが、5分後には赤旗が掲示され、計測は中断となる。赤旗は5分後に解除となり、中山選手はロングランを実施。そして2分0秒124を記録した後、ピットに戻ってくる。GT300単独の走行時間帯からは、嵯峨選手がようやくマシンに乗り込み、そのままチェッカーまで走行。最後の計測ラップに2分1秒303を記録し、このセッションの順位は10番手と、序盤のトラブル以外は上々の滑り出しとなった。なお、嵯峨選手はこの後に行われたサーキットサファリも走行し、15分間をフル活用。よりセットアップを進めることとなった。

公式予選 Q1 14:30~14:45
 今回も予選のQ1を担当したのは嵯峨選手。公式練習で予選シミュレーションを行えなかったものの、いざ走り出せば、そうとは感じさせない大胆なドライビングを披露してくれた。アウトラップに加え、2周をウォームアップに充ててタイヤの内圧を完璧に整える。そしてアタックを開始。セクタータイムを自己ベスト~ベスト~ベストで繋いで、あとはシケイン、最終コーナーを駆け抜けるだけとしていたのだが……。

 なんと、シケインで痛恨のオーバーラン。直前の130Rで縁石をまたいだ際にブレーキのピストンが開いてしまい、察知した嵯峨選手は対策を講じていたものの、十分ではなかったようだ。止む無く、次の周をクールダウンに充て再度アタックをかけるも、すでにアタックを終了したスローカーが随所にいて満足にクリアラップが取れなかったばかりか、タイヤはすでにグリップのピークを過ぎていた為、1分59秒638を出すに留まったが、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は11番手で難なくQ1をクリア。Q2に控える中山選手に無事バトンを託すこととなった。

公式予選Q2 15:15~15:27
 Q1終了後、嵯峨選手からのインフォメーションを受けて「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はセットを変更。これが功を奏することとなる。中山選手もまた2周のウォームアップを経て、アタックを開始。その時すでにトップは1分57秒台に突入、ハードルがグッと上がる中、中山選手はそれにはあと一歩及ばずも、1分58秒092をマークして2番手に浮上する。そして、その直後にチェッカーが振られ「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は2番手、フロントローから決勝レースのスタートを切ることとなった。

嵯峨宏紀選手
「タイヤのウォームアップは入念に行って、内圧が完璧に合った時にアタックをかけたんですが、130Rのイン側の縁石を踏んだら、思いの外ブレーキのピストンが戻ってしまって。ダフったつもりなんですけど、完全には戻りきれていなくて、シケインのブレーキングで止まりきれず、オーバーランしてしまいました。クールダウンを入れて、もう一度行ったんですが、その時にはピークのグリップを過ぎた中でのアタックになって、しかもみんなアタックを終えている状態だったので、クリアも取れず……。それでもQ1は突破でき、クルマのバランスは見えたので、それをエンジニアに伝えてセットを変えたら、結果的に2番手だったんで、明日に向けてはいい位置につけられたと思います。長いレースなので、『トップ6ぐらいにいれば、なんとでもなるな』という予想はしていましたが、目の前に誰もいない状態からスタートできるので、そういう意味では一歩優勝に近づいたのでは。あとは何事もなく1000kmを走りきりたいです。」

中山雄一選手
「タイムをしっかりひねり出してきました(笑)上出来だと思っていたら、もう一台僕らより速い車がいたのは残念でしたが……。130Rでマシンのバランスはそんなに良くなかったようで、その部分を嵯峨選手からのフィードバックでQ2までにセットを変えて、それがうまく決まったので全体的に良かったと思います。でも、明日は雨っぽいのですねぇ。どうやら灼熱の1000kmという感じではなさそうですが、それでも決勝はいい位置からスタートできるので、みんなで仕事をきちんとこなせば、実力が発揮できると思うのでそれだけ意識して走ります。」

金曽裕人監督
「上出来!中山選手がうまく纏めてくれました。嵯峨選手も、もっとタイムは出たはずなんですよ。1~2周目は賢くタイヤを温めてから、集中して一発で出してやろうという様子がはっきり分かりましたから。ただ、今回から新型のブレーキローターを入れているんですが、その傾向をまだ掴めていなかったので、残念ながらシケインで止まり切れなかった…。でも、クルマのバランスは悪くないという印象で、嵯峨選手から少しだけアンダーを減らして欲しいことを伝えてもらって、改めたセットがピタリとはまり、中山選手が好タイムを出してくれたという感じです。決勝は長丁場なので、トラブルなく淡々と走れば、必ずいい位置に行けると思っています。」

決勝日・ウォームアップ走行  8月28日(日)11:08~11:28
 日曜日は天候が一転して、朝からあいにくの雨模様。しかし、今回は早朝にフリー走行が行われず、代わりにスタート進行の開始と同時に行われる、ウォームアップ走行が8分間から20分間に延長されていた。すでに雨は上がっていたものの、路面はしっかりまだ濡れたままだったため、ウェットタイヤを装着して「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は中山選手のドライブでコースイン。計測2周目には2分10秒768をマークして3番手につけることになった。中山選手は3周の計測の後、ピットに戻って嵯峨選手にバトンタッチ。1周のみの計測だったものの、無事最終チェックを完了することとなった。

決勝レース(173周) 12:30~
 夏休み最後の週末を楽しもうと、詰めかけた大観衆が見守る中で、グリッド上では各チームが頭を抱えていた。すでに雨は完全に上がっており、路面は回復傾向にあったから、タイヤをどうするか。ただ、日曜日の天気は極めて不安定で、すでに青空が見えていたが、いつ崩れてもおかしくはなかった。スタートから間もなく降ってくる可能性がないわけでもないことから、ほぼ全車がドライタイヤに改める中、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は頑なにウェットタイヤを貫いた。

 今回もスタートを担当するのは嵯峨選手。フォーメーションラップの前に三重県警のパトカーによるパレードランが行われるが、その時路面を見れば、レコードラインはもう乾いていた。よぎる一抹の不安……。スタートダッシュの良かった嵯峨選手は、1コーナーでトップをアウトからかわそうとするが逆転ならず。それどころか、スプーンで1台、戻ってきたストレートであっさりと抜かれた後、次の周には21番手にまで後退。これではもはや堪らずと、3周終了時にピットに戻ってドライタイヤに交換、併せて中山選手への交代を早々と行うこととなった。

 幸い「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は燃費に優れるため、今回は5回のドライバー交代を伴うピットストップが義務づけられていたが、4回+ショートでも十分走りきれる計算だった。ほぼ最後尾まで後退したものの、視界が開けた状態でトップグループに遜色ないタイムで、周回を重ねていくこととなる。そればかりか、他とは明らかに異なるタイミングでドライバー交代を行えたことで、ピットでの混乱も避けられるように。

 2番手にまで浮上した36周目に再び嵯峨選手が乗り込み、68周目からは再び中山選手が。ドライバー交代のたびに順位は落とすが、徐々にトップとのギャップは縮まっていく。そして3時間を間もなく迎えようという頃、2コーナーでクラッシュした車両を回収するため、83周目から4周にわたってセーフティカーランが。この時、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は8番手につけており、トップと同一周回で走っていたのは後続の1台のみ。つまり、優勝の権利を持つのは、事実上9台に絞られ、しっかりその中に加わったのである。

 このSCランで燃費がさらに稼げたこともあり、中山選手はトップにも躍り出た102周目、ようやくピットに戻ってくる。嵯峨選手は8番手コースに戻るが、残るピットストップはもう1回だけ。これに対して、ライバルは2回残していたから、さらに順位を上げるのは確実だった。時おり降る雨にも足を引っ張られることなく、それどころか好機として順位を上げることにも成功。そして、132周目には最後のピットインを行い、嵯峨選手から中山選手へ着実にドライバーチェンジ。全車が交代を済ますと中山選手は3番手に立っていた。

 この時点で2番手との差は約8秒、これが一時は少しずつ広がっていたが、ゴールまであと6周となったところで、突然今までにはなく強い雨が降ってくる。すると中山選手が2番手とのギャップを秒単位で上回るようになり、どんどん差が詰まって行く!159周目には真後ろまで追い付き。そして1コーナーで並んでS字でパス。土壇場の大逆転を果たすこととなり、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は2位でゴールすることとなった。

 18ポイントの大量得点となったことで、ドライバーランキングで2位に浮上。これを弾みに続くタイ、そしてもてぎの最終2連戦も、豪速で駆け抜けてくれることを祈りたい。

嵯峨宏紀選手
「僕らは燃費的に4ストップで行けるので、ロングでつないで最後1周っていうのも作戦としてあったんです。だから、スタートであえてスリックタイヤにせず、乾いてきたら入ればいいということにしていたんですが、路面が思った以上に早く乾いたので傷口が広がる前に、ミニマムでピットに入ることにしました。ただ、みんなとピットウィンドウがずれたんで、僕らはドライバー交代が終わった段階でSCが入ったんで良かったんですよ。逆にスタートで普通のことをしていたら、いったいどうなっていたことか。そのへんが勝負のあや、というか運だと思います。2位でゴールできて、ランキングも2位。本当に良かった。次のタイは、過去プリウスとの相性は良くなかったのですが、今年から新型になってしっかり冷却対策もしていますので、その辺がどのくらい功を奏するか、自分の中では非常に楽しみではあります。」

中山雄一選手
「第1スティントは、『予選やらなくて良かったんじゃないの』っていうところまで落ちましたけど、それでかえってSCでも順位を上げられました。何より濡れていても乾いていても、タイヤのパフォーマンスはすごく良くかったです。さらに僕らドライバーが100%の力を引き出し、普段の3倍長いレースを走り切れるような最高のクルマを用意してくださったチームに感謝しています。これまでプリウスはトラブルに弱かったイメージを少なからず皆さん持っていたと思いますが、克服して強くなった感があるので、残る3レースも頑張ります。タイは去年、レース後半のペース良かったので、たとえ表彰台は難しくても、その次あたりには入っていけると思います。今日は自分の仕事を100%やり切ったつもりでいるので、この流れが維持できればいいな、と思います。最後に雨が降った時は、周りより3秒速かったとか?そうなんですか、あと2周ぐらいあれば良かったのに(笑)」

金曽裕人監督
「今回はいろんなところで賭けに出よう、挑戦的にやろうということで、スタートからいきなり奇襲作戦を実行。全車の中で1台だけレインタイヤをチョイス。フォーメーション時に天候が不安定な状態で大気が揺らいだら、雨が降るというのは定番だから雨待ちをしていたんです。関係者の皆様も理解が出来ないほどの作戦でしたが絶対王者になるには、あえて真逆を選択した。実は我々のクルマはハイブリッドなので燃費がいいことから、6スティントは必要ない。そこでリスクの少ないスタートでチャレンジしたんです。雨が降ろうが晴れようが最短距離でPIT INは決めていたので、雨が降らなかったこと以外は、もともとのプログラムを実行しただけです。4 PIT+ α のレースで僕らは戦略を立てていたから、それに対してタイヤも、ドライバーもいい仕事をしてくれました。欲を言えば優勝したかったが、#61 BRZはタイヤ2本交換を2回も繰り返してピット時間を削ってきたことから、終盤までPRIUSがリードしていたにもかかわらず大きく逆転されてしまった。悔しいが僕らはその作戦が取れなかった。ですが、この前のレースを落としてしまった分、今回大量得点取ろうということに関しては、達成できたかなと思います。たくさんの皆さんに感謝しています。」