「すいません」が挨拶化している日本。本来なら英語でいう「I'm sorry」の意味で使う言葉だが、謝罪以外でもあらゆるシーンで便利に使えるため、皆使いまくっているというカオスな現状だ。
飲食店でスタッフを呼ぶのに「すいません」。人にプレゼントをもらって「すいません」。落し物を拾ってもらって「すいません」。上司に注意されて「すいません」。子どもがうるさくて「すいません」。まさに、日本で最も使われているであろう言葉。それが「すいません」なのである。
先日もこんな記事が話題になっていた。はてな界隈で人気のブログ「全マシニキは今日も全マシ」の9月4日の記事で、タイトルは、「すいませんを多用するとナメられるからありがとうと言おう。」というものだ。(文:みゆくらけん)
ただの条件反射だから相手には伝わらない
普段から「すいません」を使わないように心がけているというブログ主。理由は、以前の職場に「すいません」を言いまくる上司がいて、周りの人にナメられていたから、というものだ。その上司は、とにかく「すいませんすいません」と息を吐くように連呼していたのだとか。
「コイツ『すいません』言い過ぎじゃね・・・?」
「『すいません』言わなきゃ死にそうwww」
思わずそう思ったブログ主は、以降その上司を「すいま仙人」と名付けた。すいま仙人は必要以上にヘコヘコ謝っていて周りからナメられ、損をしていたという。「言霊」がそうさせたのだろう。わざわざ「すいません」を使わなくてもいい場面では、なるべく「ありがとう」などポジティブな言葉を選びたい。
はてなブックマークでは、共感の声が多く上がっている。
「『すいません』は、うっかり言いがちな人多いですよね。私も『ありがとうございます』と言うように意識してます」
「『すいません』って条件反射みたいなもので、何にも言ってないのと同じなんだよね。謝罪にもなってない」
また、「異性に対しての『すみません』を全て『ありがとう』『ごめんなさい(ごめんね)』に変えるとモテるよ」という声もあった。なるほど納得だ。
「すいません」という言葉からは無駄に卑屈さが感じられる
以前、「マツコ&有吉の怒り新党」(テレビ朝日系 7月27日放送分)でも、落し物を拾って渡した時に青山愛が有吉に言われたいのは「『すいません』よりダンゼン『ありがとう』」だと言っていた。「すいません」だとそうは感じないが、「ありがとう」にはキュンとくるものがあるのだとか。
「感謝してもらえたっていう嬉しさがある。『すいません』だと人のミスをカバーしたという気持ちで嬉しさはないです」(青山アナ)。確かに、「すいません」は聞き慣れ過ぎてもはや何も感じないが、たまに言われる「ありがとう」は新鮮に心に響く。
考えてみよう。たとえば客から指名をもらったキャバクラ嬢のことを。嬉しそうな顔で「ありがとう!」と言われたら客もいい気分になるだろうが、「すいません」と恐縮されたら客もなんか辛い。「すいません」の裏には「こんな私なんかを・・・」という卑屈さが感じられ、言われた方は「喜びを与えたかった」はずなのに、なぜか「救済してあげた」気分になってしまうのだ。
そう考えると、感謝の気持ちを伝える際の「すいません」には注意が必要だ。できるだけ素直な気持ちで「ありがとうございます」と返したい。よくよく考えてみると、「お客様に『ありがとう』と喜んでもらえるのが嬉しくてこの仕事をしています」というのはよくあるが、「『すいません』と言わせたくて・・・」というのは滅多に聞かない。
ちなみにブログに登場したすいま仙人、上司から「すいませんを連呼するな」と注意され、「ハイ、すいません!」と返したのだとか。なんとかしてやろうと思った上司が「『すいません』1回につき100円な」と提案したら、「わかりました!すいませんすいません」と仙人。1分で5回くらい「すいません」と言っていたらしい。
その様子を見ていたブログ主は、このままでは仙人の月の支出の9割ぐらいが「すいません費」で終わると心配してしまったという。すいま仙人だらけの世の中、できるならば「ありが党」所属でいきたい。