一流大学を出て、一流企業に入るのが人生の成功――。そんな考えは昭和の古い価値観かと思いきや、リスクを避けたい若者たちの間で再び注目を浴びているようです。ゼロ成長社会の産物でしょうか。その一方で、せっかく入った一流企業を辞める大人もいます。
Q&AサイトのOKWAVEには、こんな質問が寄せられていました。相談者のeeyore5さんの知人が務める中小企業の求人には、なぜか超有名な大手総合電機メーカーP社の社員がよく応募してくると聞いたのだそうです。(ライター:Makiko.N)
辞めてから初めて「有り難さ」が分かるのか
質問には、知人が勤める中小企業がどんな会社なのか、どのくらいの年代の人が来るのかは書かれていません。しかし大手総合電機メーカーで定年を迎えずに退職してしまう人がいることには変わりません。
相談者さんは「そんな一流企業に勤めているのに、転職だなんてもったいない」と言い、一流企業から他の中小企業に転職する人はそんなに多いのかと疑問を抱きつつ、こんな質問を投げかけています。
「やはり一流企業であっても転職を考えるほど不満があるのでしょうか? どんな理由で転職する人が多いのでしょうか?」
一流企業は給料が高く、福利厚生も整って安定しているイメージです。中小企業で味わうような理不尽な経験も少なく、社会的地位も高いので気分がいいはずですが……。回答者からは、社内にいるとそのありがたみが分からないから、という指摘がありました。
「一流企業に居ることのメリットが解らない人が多いと思います。転職して、初めてその有り難さが解りますが、その時には手遅れです」(hekiyuさん)
確かに一流企業で仕事をバリバリしていた人が、全部を自分の実力と過信してしまい、独立した途端に仕事がなくなるというケースはよく聞く話です。実は「会社の看板」に加え、上司や同僚、他の部署の協力があって初めて成果が上げられていたというわけです。
「会社の歯車」に嫌気が差した転職経験者も
その一方で、回答者の中には一流企業から中小企業に転職した人もいました。「某有名電機メーカを辞めて小さなIT企業に転職」したf_t_f_tさんは、大企業で働くことのデメリットやリスクが転職理由だったと答えています。
「私が転職した理由はいくつかありますが、大企業というところに的を絞ると、1.つぶしの利かない人間になってしまいそう 2.自分のやっていることが役に立っている実感がない というところですかね」
東証一部に上場するメーカー系企業を2社経験した末、地元の中小企業に転職したhotminmi11さんも「会社の『歯車感』は強い」と振り返ります。
「私は開発・技術系の職業でしたが、試作一つやるのにも、多くの人に根回ししながら頭を下げなければいけません。会社のために新しい製品を生む出す仕事であるはずが、頭を下げ続け、迷惑がられることも多々あります。大きいが故に設備導入や新しい開発品の立ち上げ説明などに、様々な部署を通して進階が必要であり、立消えになることも多くあります」
やりたいことがハッキリしているエンジニアには、「業務の裁量が小さい」「機動性が悪い」「他部署とのコミュニケーションが煩雑」といった点は、大企業のデメリットと感じることが多いでしょう。それも技術的に無知で、有益なアドバイスもしてくれない社内官僚たちを動かして調整することは至難の技です。
「割増退職金」を突きつけられた人もいそう
別の回答者のok8821さんは「辞めたくて辞めるわけではなく、上司から肩叩きに遭い、割増退職金を突きつけられて」会社を去る人もいるとコメントします。大企業はその規模ゆえに、何かあったときの人員削減も大規模になってしまいます。
昔はいくら不満があっても、「定年まで安定して過ごせるのなら」と会社に居続ける人も多かったでしょう。しかし近年の大企業は、再編の嵐。かつての一流企業が倒産しないまでも、不採算部署を切ったり買収されたりしています。
もちろん大企業とは勝手が違うのは承知のうえで、「大企業でも終身雇用で定年まで安泰というわけにはいかないのなら、中小企業で身軽に自分の裁量で仕事をしたい」と転職をする人が増えているのかもしれませんね。
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