住む場所を探すときの条件は様々だ。交通アクセスの良さや家賃価格、街の活気や雰囲気など、どの条件も捨てがたく悩む人は多い。"住めば都"という言葉があるが、"引越し貧乏"という言葉もあるように、賃貸といえども引越しの初期費用は決して安くはなく、それだけに物件は賢く探したいものだ。
そこで今回、「住みたい街ランキング」に出てくることは余りないが、しかし住民が実際に住みやすいと実感している「穴場の街」をご紹介したい。(文:伊藤綾)
■割安な物価で都心アクセスも抜群、武蔵小山
東急目黒線・武蔵小山の家賃相場はワンルーム7.8万円。これは東横線では学芸大学駅くらいの価格ではあるが、在住者の年齢層は学芸大よりも少し高めで30代から40代が中心。高齢者も多い。
そのため大人が落ち着いて飲めるようなお店が多く、晩杯屋や虎圭など激安居酒屋もある。住みたい街ランキングでは見落とされがちな電車の混雑度だが、東急線のなかでも目黒線は東横線よりもやや空いている印象で、のんびりとした雰囲気が漂っている。
駅を出てすぐのところにあるパルム商店街は単一のアーケード商店街として日本一の長さ誇っており、約250店舗が軒を連ねる。L字形のアーケードの総延長は約800メートル。最近は「流氷まつり」など、商店街が企画するファミリー向けのイベントも人気を集めている。
商店街とは反対側に位置する駅北側へ歩くと、林試の森公園が存在し、子育てママたちで賑わう。東京の中でも子育てと教育の施策で常に注目を集める先進地区・品川区だけあって、保育料・就園奨励費の補助を始めとした各種子育て助成制度が整っているのも魅力的だ。品川区の中では物価も割安なため、若いファミリー層には住みやすいだろう。
■格差を感じないユートピア、大山・板橋区役所前
板橋区の最大の欠点といえば、区内にターミナル駅がひとつもなく、あくまで池袋ありきという残念な鉄道網。副都心線や有楽町線も区をかすめる程度なのだ。
しかし、そんな板橋区にあってオススメなのがこの地域だ。東武東上線大山駅は池袋から3駅目とアクセス良好。大山駅から徒歩10分のところには、都営三田線の板橋区役所前駅もある。三田線は巣鴨・神保町などを経由し目黒へ至り、東急目黒線との相互直通運転も行う。
この2駅の間を、中目黒や東中野を通る環状道路・山手通りが南北に走る。しかし、平均家賃はワンルームで6.7万円(HOME'S)と、中目黒・東中野に比べると格段に安い。
板橋区随一のハッピーロード大山商店街も活気がある。アーケードにはチェーン店と個人商店が共存し、都内屈指の物価の安さを誇る。住宅街に佇むちょっとした割烹料理屋まで安いから驚きだ。その圧倒的なコスパの良さから若い子育て世代の家族も多い。
最寄駅に区役所や税務署などの行政機関があるのも、忙しい共働き家族には地味に有難いだろう。公園が各地にあるだけでなく、健康長寿医療センター病院といった大規模病院や、少々距離があるが日大医学部付属板橋病院・帝京大学医学部付属病院など、都内屈指の先進医療機関も近い。まさに「揺りかごから墓場まで」といった様相である。
この地域は古くから交通の要衝として栄えており、仲宿交差点・板橋ジャンクションがあるため車持ちにも嬉しい。住んでいるからといってモテることはないだろうが、生活重視の人にはもってこいだ。
■ターミナル駅と穴場的な魅力を併せ持つ、立川
多摩地域の中心都市として発展してきた立川。武蔵小山や板橋区役所前に比べ、都心部へのアクセスは劣るが、南武線・青梅線は言わずもがな、中央ライナーや特急あずさ、かいじなど、立川駅を経由する電車で素通りするダイヤはほぼゼロだ。
1時間に3~5本(平日午前7時台は2本)ほど運行している中央線特快に乗れば新宿まで28分と23区内と遜色はない。この数年ほどで、無印良品や東急ハンズが入っているららぽーとや、IKEA、MEGAドン・キホーテなど話題の大型店の開発が進んだことで利便性もかなり向上した。爆音上映で有名な映画館、立川シネマシティや昭和記念公園などもあり、まさになんでも揃うターミナル駅と呼ぶに相応しい。
漫画やアニメ、映画などの舞台やロケ地としても度々登場しており、中央線らしいサブカル的な一面も持ち合わせている。平均家賃はワンルームで5.85万円(HOME'S)ほど。都心へと向かう通勤電車はラッシュ時でも座れやすいのが◯ 帰宅時のラッシュはツラそうなのが玉に瑕で、休日は立川だけで完結させる住民も多数だ。
「住みたい街ランキング」では再開発で注目を集める街や、不動産価値の高い憧れの街が上位に食い込む傾向がある。しかし、住みやすさという視点で考えると、また違った結果になるのではないだろうか。