少子化に悩む日本。晩婚化に伴い出産年齢も上がり、子どもを望んでもなかなか得られず不妊治療を受ける夫婦は増加しています。しかし不妊治療は精神的、肉体的、金銭的な負担が大きいもの。保険が効かないため高額になりがちで、出産まで至らなくても治療費がかかります。
政府は少子化対策の一環として、今年1月から高額な「特定不妊治療」の助成拡充を行いました。特定不妊治療とは「体外受精」と「顕微授精」のことで、人工授精が1~3万円程度なのに対し、1回でおよそ30~40万円と高額な治療法になります。
これを受け、日本生命が国内で初めて、不妊治療を対象とした保険を10月2日から販売します。筆者も不妊に悩み専門外来に通った時期があり、他人事ではなく真剣に発表資料を見て中身を調べてみました。(文:篠原みつき)
加入後2年以内の不妊治療と1年以内の出産は対象外
加入年齢は16~40歳、保険料は年齢によって変わりますが月1万円前後です。特定不妊治療を行なった際の給付金は、12回を限度に1~6回目までが5万円、7~12回目が10万円。3大疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中)や死亡保障も1回のみ300万円の保障額でついています。
治療に関わらず出産時には給付金があり、1人目は10万円、2人目は30万円と増額され、5人目以降は100万円受け取れます。満期時は一時金も出るとのこと。ただし、加入から2年以内の不妊治療と1年以内の出産は対象外です。
つまり3大疾病と死亡に備えつつ、出産すれば10万円からの祝い金をもらえて、万が一特定不妊治療が必要ならば1回5万円から受け取れるというものですね。若いうちに入っておこうと考える人がどれだけいるか分かりませんが、たくさん産むほどメリットがあり、不妊というより出産サポートが手厚いように見えます。
不妊治療を一番に考えるなら「貯金した方がいいわ」という声も
それはそれで良いことですが、やはり、不妊治療をメインにと考える人には物足りない気がします。加入から2年は治療の給付金が出ないという点についても、40歳目前で1日も早い出産を望んでいる人にとっては酷な空白期間だと感じました。ツイッター上では、「これは画期的だ」と讃える人がいる一方で、メリットを疑問視する声があがっていました。
「1万円の保険料を10年払って120万円か…貯金したほうがいいわ」
「今のうちに入って2年分の保険料を差し引いてもプラスになるかは複数人産まないと微妙なところだな……」
ちなみに国の助成金は1回につき15万円~20万円(初回のみ30万円)で、43歳未満で結婚している人が対象になります。保険はこれを補完するためで、今年4月に金融庁が民間の不妊治療保険の販売を解禁したことを受け商品化されました。
しかし、いずれにしても対象は特定不妊治療だけです。人工授精に1回3万円かかるとして、成功するまで何度か続けますから3回やれば9万円です。不妊専門クリニックは遠方にあることも多く交通費もかかりますし、仕事をやめて治療に専念する人もいます。
あまり水を差したくありませんが、依然として経済的な負担は大きいのが現状です。ツイッター上に「私はそっちの保険じゃなく、不妊治療を保険適用の治療にしていただきたいです」なんて声もありました。私も同感です。
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