今週末イタリアのミサノ・ワールド・サーキット‐マルコ・シモンチェリでMotoGP第13戦サンマリノGPが開催される。
サンマリノGPの舞台となるミサノサーキットはアドリア海を望むイタリアのリッチョーネという街に位置する。2011年のマレーシアGPでのアクシデントによりこの世を去ったマルコ・シモンチェリの生まれ故郷が近く、シモンチェリにとってホームコースであったことから、彼の功績を称えて、2012年より『ミサノワールドサーキット マルコ・シモンチェリ』という名がサーキットの正式名称となった。
サンマリノはミサノのそばにある小さな共和国で、サーキット自体はイタリアにあるが、グランプリの名称はサンマリノGPとなる。もともとミサノは世界グランプリのホストサーキットとして長い歴史を持っていたが、1993年を最後にグランプリのカレンダーから一度外れ、2007年に復活した。世界グランプリ復活に向けて、コースの大改修を受け、それまでとは逆回りとなり、コースレイアウトも大きく変更された。
そして、2008年には、3コーナーのレイアウトに変更を受け、1周4.180kmから4.226kmへと全長が伸びている。左コーナー6、右コーナー10の計16のコーナーから構成されており、中低速コーナー主体のテクニカルコース。全体にフラットなコースレイアウトで、アップダウンはほとんどない。メインストレートも565mと短めで、1周のアベレージスピードもMotoGPクラスで165km/h前後とグランプリ開催コース中では低い。
昨年のレースは、MotoGPクラスではスタート時点から小雨が落ち始め、レース序盤にウエットに、その後、雨は上がり、ドライとなる波乱のレースとなった。この結果、フラッグ・トゥ・フラッグでマシンを2度乗り換えることになる混乱のレースをマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)が制し、2位にブラドリー・スミス(ヤマハ・テック3)、3位にスコット・レディング(プラマック)が入賞した。Moto2クラスとMoto3クラスはドライコンディションで争われ、Moto2ではヨハン・ザルコ(カレックス)が優勝、Moto3ではエネア・バスティアニーニ(ホンダ)が優勝した。
いよいよシーズン終盤に入ったMotoGPクラスでは、マルケスが前戦イギリスでは表彰台を逃したものの、ランキングトップをキープしている。ミサノではMotoGPクラスで昨年1勝を記録、125時代の2010年からMoto2時代の2012年まで3連勝を達成した経験を持つ。
「イギリスGPではフロントタイヤの選択が最善ではなかったけど、失ったのはわずか3ポイントだけ。ミサノはシルバーストンとはコースのキャラクターが全く異なる。週末にいい仕事ができれば、表彰台争いができるだろう。セッション毎に最大のパフォーマンスを引き出せる機会が得られるように、天気がいいことをを願う」とマルケス。
マルケスから50ポイント差のランキング2位につけるバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ)は、チェコ、イギリスと2戦連続で表彰台を獲得。ミサノはロッシにとってホームコース。MotoGPクラスでは2008年、2009年、2014年に優勝した経験を持つ。
「ミサノはシーズンで最も特別な週末。僕の地元だ。今年も素晴らしい雰囲気に包まれるだろう。たくさんのファン、たくさんの人、大きなプレッシャーがある。120%以上のパフォーマンスを発揮する必要がある」とロッシ。
ホルヘ・ロレンソ(モビスター・ヤマハ)はチェコ、イギリスと思うような結果を残せず、ロッシとは14ポイント差のランキング3位。ミサノは2011年から3連勝した経験を持つ得意なコースだ。
「シルバーストンでは、週末を通じて問題があり、レース前にセッティング変更を決断したけど、期待していたより、うまく機能しなかった。ミサノはお気に入りのコースの1つ。流れを変えられるか見てみよう。現時点で唯一できることは、懸命に働き、ベストリザルトの獲得に向けてトライすることだ。チャンピオンシップのことは考えない」とロレンソ。
前戦イギリスでMotoGPクラス初優勝を飾ったマーベリック・ビニャーレス(スズキ)はこの勝利でランキング4位に浮上した。
「MotoGP初優勝、スズキの復帰後初優勝の余韻をまだ楽しんでいる。シルバーストンは完ぺきだった。チームのすばらしい仕事の結果だ。そんなエモーショナルな週末の後、すぐにレースができるのはいいこと。この勢いのままミサノでもプッシュしたい」とビニャーレス。
ダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ)はランキング5位に後退したものの、前戦イギリスで5位と低迷からの脱出の兆しを見せた。ミサノのMotoGPクラスでは2010年に1勝を記録、通算5度の表彰台獲得経験がある。
「自信とモチベーションをもたらしてくれたイギリスGPの後で、ミサノを迎える。シルバーストンでは、周回ごとに僕たちの弱点と強さを理解した。今週末は同じ延長線上で仕事を継続する必要があり、バイクをあまりいじらず、タイヤ選択とコースに対して最適な走りで、セッションに集中しよう。目標達成に向けて集中力を維持する必要がある」とペドロサ。
前戦イギリスでは腕上がりに見舞われ、マシンコントロールが効かずに転倒リタイアに終わったアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)だが、ミサノはドゥカティにとってホームレース。チェコGPの後にはプライベートテストを行ない、非公式ながらサーキットレコードラップを更新した。
「ミサノでは腕上がりの問題は発生しないと思う。2013年の手術以降、腕上がりに苦しむことはなかった。イギリスと比べて、天候もいいはずだから、週末を通じて、安定して進歩することができるだろう。デスモセディチGPは、このコースで戦闘力があると思う。2週間前のテストでは、いい結果を残すことができた。プライベートテストだったので、ライバルとの直接比較はできなかったが、フィーリングはすごくいい。チャンスがあると思う」とイアンノーネ。
ランキング6位にアンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)が続く。8月のプライベートテストでは転倒を喫したが、ドビジオーゾも非公式ながらサーキットレコードを更新。イギリスGPでは腕上がりに見舞われたが、大きな問題ではないようだ。
「イギリスGPは残念だった。前腕の問題がなければ、よりよいリザルトを獲得できただろう。すぐに、ミサノに戻れることがうれしい。シルバーストンよりも期待度が高いことは確かだ。8月の下旬にテストを行ない、転倒を除けば、よい仕事ができ、自信を感じている」とドビジオーゾ。
チェコGPでの初優勝に続いて、ホームレースのイギリスGPでも表彰台を獲得したカル・クロッチロウ(LCRホンダ)は、インディペンデントチームランキングトップの8位に浮上。チームのホームレースとなるミサノでも3戦連続となる活躍が期待される。
「シルバーストンで、母国のファンの前で表彰台に立てたことは特別であり、本当に誇りに思う。現時点でとてもいい状態にあることを感じる。ここ数年のミサノはホンダのマシンにとって難しいコースであることは分かっているが、ミサノでもいいレースがしたい。進歩を止めず、今週末もベストをつくしたい」とクロッチロウ。
世界耐久ドイツラウンドに参戦した際に負傷したブラドリー・スミス(ヤマハ・テック3)は欠場、イギリスGPに続いて、アレックス・ロウズが代役を務める。
また、イギリスGP決勝スタート直後のクラッシュで負傷したロリス・バズ(アビンティア・レーシング)は今レースを欠場、SBKライダーのチャビ・フォレズが代役を務めることになった。
Moto2クラスではヨハン・ザルコ(カレックス)がランキングトップをキープ。ザルコは昨年のミサノで優勝している。前戦イギリスではトップを争っていたサム・ロウズ(カレックス)を巻き込んで転倒させてしまいペナルティを受けノーポイントに終わったものの、チャンピオンシップをリード。ケガを抱えながら、イギリスGPで7位入賞を果たしたアレックス・リンス(カレックス)がランキング2位につける。
ホームレースをノーポイントで終わったロウズはランキング3位。イギリスGPで優勝したトーマス・ルティ(カレックス)はランキング4位に浮上した。
そして、昨年、3位に入賞した経験を持つ中上 貴晶(カレックス)にとって、ミサノは特別なサーキット。2010年にアクシデントでこの世を去った、幼いころからのライバルである富沢祥也と共に2勝目をねらう。
Moto3クラスではブラッド・ビンダー(KTM)がランキングトップをキープ。ホルヘ・ナバーロ(ホンダ)はランキング2位につけるが、前戦イギリスでの転倒ノーポイントにより、ビンダーとの差は86ポイントに拡大した。
イギリスGPで2位に入賞したフランチェスコ・バニャーヤ(マヒンドラ)がナバーロと8ポイント差のランキング3位、昨年のサンマリノGPのMoto3クラスのウイナー、エネア・バスティアニーニ(ホンダ)がバニャーヤに7ポイント差のランキング4位、ホームレースとなるニッコロ・ブレーガ(KTM)がバスティアニーニに3ポイント差のランキング5位と、ビンダーの後方では熾烈なポイント争いが展開されている。
バスティアニーニは来季はエストレージャ・ガルシア・0,0でMoto3クラスに継続参戦が決定。ブレーガはVR46のトレーニングでミサノを走り込んでおり、初優勝の期待が高まる。
日本勢ではランキング23位に尾野 弘樹(ホンダ)、ランキング26位に鈴木 竜生(マヒンドラ)がつけ、入賞をねらっていく。