2016年09月07日 10:12 弁護士ドットコム
子どもの行動や思考に過度に干渉して、悪影響をおよぼす「毒親」。暴言や暴力で子どもを抑圧したり、子どもの交友関係や進路選択をコントロールしたりするケースもありますが、中にはお金を無心する「毒親」もいるようです。
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ネットにも様々な体験談が投稿されていました。ある女性は、大学進学で親元を離れて一人暮らしをした際、バイトを始めるとお金を送るように言われたそうです。奨学金を10万円受け、取っていたため、そのほぼ全額を送るようになってしまったそうです。
別のケースでは、母親に奨学金を母親の口座に振り込まれるようにしていたところ、全額を使い込まれて、大学を卒業できなかったとの悲痛な声もありました。
大学生の奨学金やバイト代を無心したり、勝手に使い込んだりする「毒親」に対して、返金を要求することは可能でしょうか。田中真由美弁護士に聞きました。
●お金を渡した趣旨によって、結論は変わってくる
親子間のお金のやりとりも、原則的には一般的なお金のやりとりと同じルールに則って考えることになります。返済を求めることができるかどうかは、お金を「贈与した」ものなのか、「貸した」ものなのかなど、その趣旨によって異なってきます。
今回のケースでも、親に返済を請求できるのかどうかについては、お金を渡した趣旨によって異なってきます。
バイト代を親に送るように言われて送ったという場合、法律的には「贈与」、つまり「無償であげた」ということになります。返済を請求することはできません。
一方で、「お金を貸して」と言われて貸したという場合には「消費貸借」、つまり「後で同額の金銭を返還する」という契約を結んだことになります。この場合、返済を請求することができます。
●「使い込み」のケースは?
母親の口座を奨学金の振込先として指定していたところ、母親に奨学金を使い込まれたケースでは、母親は、子の金銭という「他人の財物」を横領したことになります。
横領は刑法上の犯罪にあたりますが、母と子は「直系血族」なので、刑が免除されます(刑法255条、244条)。
ただし、この場合でも、民事上の請求として、母親に対して損害賠償を請求することが可能です。
【取材協力弁護士】
田中 真由美(たなか・まゆみ)弁護士
あおば法律事務所共同代表弁護士。熊本県弁護士会所属。「親しみやすい町医者のような弁護士でありたい」がモットー。熊本県弁護士会子どもの人権委員会、両性の平等に関する委員会所属。得意分野は離婚、家事全般、債務、刑事事件、少年事件。
事務所名:あおば法律事務所
事務所URL:http://www.aoba-kumamoto.jp/