ベルギーGP金曜日のフリー走行で試走されたピレリのプロトタイプ。1週間後のイタリアGPでも、同じ仕様のタイヤが金曜日に1チームに4セット(1人につき2セット)ずつ配布され、初日のフリー走行でテストされた。
このプロトタイプは現在使用されているソフトコンパウンドに、新しいコンストラクション(構造)を組み合わせたもので、マレーシアGPからの投入されるというを予定してテストされたものである。
ところが、ピレリは「チームからのフィードバックが芳しくなかったため、マレーシアGPからの導入を見送るかもしれない」と語った。あるチーム関係者は、次のように今回のプロトタイプの性能を評価する。
「はっきり言って、別のタイヤ。つまり、このタイヤを投入することになれば、すでに選択しているソフトタイヤはも私たちが望む形では使えない。そもそも、なぜこの段階になってピレリがコンストラクションを変更しようとしているのかが理解できない。もし安全性に不安があるのなら、そう言ってくれればいい。安全上の問題なら、FIAはチームからの同意を得なくても、スペックを変更できる。われわれも安全のためなら、その提案を引き受けるよ。でも、そうでないのなら、もう少し慎重になるべきだ」
おそらく、ピレリは昨年のスパのバーストが不安でこのようなタイヤを作ってきたのだろう。しかし、何が問題でタイヤがバーストしたのかという原因を、じつはピレリ自身も確信を持ってつかめていないのではないだろうか。別のあるチーム関係者は、こう言う。
「ピレリがプロトタイプで何を変更してきたを教えることはできないが、それを見る限り、縁石によるカットを防止しようとするものなのか、スタンディングウェーブを抑制しようというものなのか、よくわからない。いずれにしても、これはスペックダウン。そういうレポートをわれわれはチームとしてFIAに出した。あとはFIAが、どう判断するかだ」
ピレリが迷走している様子は、イタリアGPの週末にタイヤの最低内圧を変更していたことでもわかる。グランプリが始まる前、ピレリはフロント23.5psi(ポンド/平方インチ)、リア21.5psiと設定。それは1週間前に行われたベルギーGPのフロント23.5psi、リアが22psiとほぼ同じだった。
しかし、ベルギーGPとイタリアGPが同じということに関しても、チームからは大きな疑問が投げかけられていた。というのも、ベルギーGPが行われる中高速コーナーがいくつもあるだけでなく高低差があり、タイヤには横荷重だけでなく縦荷重もかかって大きな負荷がかかるのに対して、イタリアGPが行われるモンツァはコーナーが数えるほどしかなく、加えてほとんどフラットで、タイヤにかかる負荷がまったく異なり、同じ内圧で走ること自体無理があった。
果たして、ピレリは金曜日のフリー走行後、フロントは23.5psiから23psiへと0.5psi下げ、リアは21.5psiから20.5psiと1psi下げたのである。 タイヤをワンメイクにしたのはFIAであり、その1社をピレリにしたのもFIAである。安全性に関して、ピレリだけに任せておくのではなく、FIAには主体的にこの問題に取り組んでもらいたい。