WTCC世界ツーリングカー選手権の日本ラウンドは9月4日、ツインリンクもてぎでオープニングレース/メインレースが行われたが、メインレースでは残り3周まで首位を快走していたホセーマリア・ロペスが突然のスローダウン。チームメイトのイバン・ミューラーが優勝を飾るシーンがあった。
2014年、15年とチャンピオンを獲得してきたロペスは、2017年に向けシトロエンがWTCCでワークス活動を行わないことも関係してか、フォーミュラEへの参戦が決まっており、今季でWTCCでのワークス活動は最後となる可能性が高い。
そんなロペスは今季もチャンピオンシップをリードしてきたが、もてぎでもメインレースのポールポジションからスタートし、ふたたび勝利を飾るかと思われた。しかし、残り3周で突如としてスローダウン。ミューラーが先行することとなった。
2位に入ったロペスはチェッカーを受けた後、母国アルゼンチン国旗をコースサイドで受け取ると、ウイニングランかのように1周をまわった。実は第11ラウンドのタイ戦がASNとの関係でキャンセルになることがほぼ確定しており、残りラウンド数との関係を考えても、2位で“暫定”ながらチャンピオン決定だったのだ。
レース後、ロペスのスローダウンで勝利を得ることになったミューラーは「週末の間、そういう可能性があるということはチームの中でも話していたんだ。実はアルゼンチンでは僕が彼に譲っているし、彼は今回チャンピオンを決めたことから、勝利を譲ってくれたんだ」と明かした。
「前にもこういったことは何度かあった。ロペスがチャンピオンを決めた後、彼に求められるのはチームにタイトルをもたらすことだからね」
「最後に付け加えたいが、モータースポーツではポジションを譲ることはなかなかあることじゃない。このチームだからこそあることなんだ。チームスピリットを表していると思う。素晴らしいことだと思うよ」
一方、目前の勝利を譲ったロペスは、チャンピオン獲得の喜びにひたりながら、「イバンのおかげで3年間チャンピオンを獲得することができたから、彼に勝利を捧げたいと思ったんだ。もちろん自分が優勝することができれば最高だけど、それよりもこのチャンスに、本当に尊敬しているチームメイトに勝利を譲ることがいいと思った」と理由を語った。
「レーシングドライバーである限り、勝利を譲るのは難しいことだけど、それほどまでに彼を尊敬しているということだ」
「“暫定”のチャンピオンではあるけれど、幸せだよ。たぶんいま世界中でいちばん幸せなのは僕なんじゃないかな。多くの人々にとって、チャンピオンを獲得することはなかなかできないことだ。素晴らしい3年間になったと思うよ」
「でも、それも強いチーム、そして強いチームメイトのおかげだと思う。3年間に渡ってお互いに力を合わせて戦ってきた。こうして三度世界選手権のチャンピオンを獲ることができて、シトロエンに感謝している」
タイ戦の正式なキャンセルは、9月末に行われるワールド・モータースポーツ・カウンシルで決定することになる。代替は予定されていないとのことで、正式な決定が出た段階で、ロペスが2016年の真のチャンピオンを決めることになりそうだ。