モンツァでは、大きな発表が行われることがある。古くは1987年に、ホンダが翌年からマクラーレンにエンジンを供給するとともに、ドライバーラインアップをアラン・プロストとアイルトン・セナというドリームチームを結成することを発表した。2006年にはミハエル・シューマッハが優勝した直後の会見で引退を発表。日本GPが鈴鹿と富士の交互開催となるという発表も2007年のモンツァだった。
今年は木曜日にフェリペ・マッサがF1からの引退を発表。そして、土曜日にはマクラーレンがストフェル・バンドーンのレースドライバーへの昇格とジェンソン・バトンがアンバサダーとしてマクラーレンに残留することを発表した。
ホンダの長谷川祐介総責任者によれば、今回の件を聞いたのは、金曜日だったという。「朝一番で、ロンさんが『ホンダの確認を得てから、最終決定を下す』」と言ってきたという。長谷川総責任者は、すぐに本社に確認をとり、最終的にF1担当役員の松本宜之(本田技術研究所の代表取締役社長)とモータースポーツ部長の山本雅史との間で、最終的にマクラーレン側の提案を了承する決定を下した。
気になるのは、第3期F1活動時代から長い間、ホンダとともにレースを戦ってきたバトンが、第一線から遠ざかることでホンダのF1活動に影響が出ないかということだ。長谷川総責任者は、今回のユニークな契約では、その心配はないという。
「確かにジェンソンはホンダにとって、とても大切なドライバーです。だから、このような形でジェンソンがチームに残ることは、ホンダとしても歓迎しています。来年、ジェンソンがどんな活動をするのか具体的なことは何も決まっていませんが、少なくともチームに残ることでわれわれのコマーシャルイベントなどには参加しやすい環境になり、別な意味でこれまでよりも深い関係が築けるかなと思っています」
チームのアンバサダーとしてだけでなく、技術的な面でのサポートも今回の契約では明記されている。
「たとえばシミュレータに乗ってもらうなど、これまで以上に積極的に協力してもらうことになるでしょう。来年はレギュレーションが大きく変わるので、ジェンソンのような経験があるドライバーなら、これまでのマシンとの比較もしやすいので、シミュレータに乗ってもらうのは大きい。シェンソンのようなドライバーをシミュレータ・ドライバーとして起用できるというのは、とても贅沢な話だと思っています」と長谷川総責任者は語っている。
最後に来年からレースドライバーとして共に戦うバンドーンについてだ。
「ストフェルに期待することは、もちろん、速さと安定性です。すでに今年のバーレーンでそれらを兼ね備えているところを見せていますが、若いドライバーというは、得てして自分を良く見せようとして無理をして失敗したり、または失敗を恐れて自分の力を出せないことがあるので、そういうことがないように落ち着いて、彼のパフォーマンスを100%発揮してほしいなと思っています」
バンドーンは今回ホンダがF1に復帰する際、初めてマクラーレン・ホンダとして、2014年最終戦直後のアブダビのサーキットでテストしたときにステアリングを握ったドライバー。今年は日本のスーパーフォーミュラでもホンダ・エンジンを走らせている。ただの新人ではなく、ホンダとともに歩んできたドライバーだ。彼には新しい歴史を刻んでほしい。