WEC世界耐久選手権第5戦は9月3日、メキシコのアウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスで6時間の決勝レースが行われ、1号車ポルシェ919ハイブリッド(ティモ・ベルンハルト/マーク・ウエーバー/ブレンドン・ハートレー組)が前戦ニュルブルクリンクに続き2連勝を飾った。
25年ぶりに開催されたメキシコでのWEC第5戦は、雨まじりの不安定な天候、LMP1クラス各陣営のトラブルなど、不確定要素の多い波乱の展開となったが、夕闇迫るサーキットでトップチェッカーを受けたのは、またしてもポルシェ1号車だった。
曇り空が広がるなか始まった6時間の決勝レースは、アウディ陣営がワン・ツー体制を築きスタート。ポルシェの2台がすぐ後ろに続き、両陣営は接近戦を展開する。ところが、39周目にトップの8号車アウディR18がLMP2クラスの接触を避けるためコースオフ。その隙を突いて、2番手を走行していたポルシェ919ハイブリッド1号車がトップを奪う。
ポルシェ1号車はそのまま差を広げつつあったが、LMP2クラスの接触によりフルコースイエローが導入された際、タイヤ交換のためピットに向かう最中にステイアウトの指示が飛ぶ。1号車はピットレーン入口の白線を横切り強引にコースに戻ったが、このアクションが危険行為と判定され、残り約3時間のところでドライブスルーペナルティを課せられ後退してしまう。
だが、ポルシェ1号車のペースは速く、ペナルティ消化の最中にトップに立ったアウディ8号車を134周目にパスし、再びトップに浮上する。2周後には2号車ポルシェもアウディを抜き去り、ポルシェがワン・ツー体制を構築。そのままペースを上げていたが、突如として降り始めた雨がコースをウエットコンディションに変えていく。
各クラスのマシンがピットに向かいレインタイヤに交換するなか、8号車のアウディはインターミディエイトタイヤを選択し、ドライバーのオリバー・ジャービスをコースに送り出す。だが、その直後にジャービスは激しいクラッシュを喫する。マシントラブルに起因するクラッシュと発覚し、修復に30分以上を要したため表彰台争いからは完全に脱落してしまう。
ところが、波乱の展開はまだ終わらず、2番手を走行していたポルシェ2号車がLMP2クラスのマシンに追突され、破損したリアカウルを修復するため緊急ピットイン。これにより堅実なペースで走行を重ねていたトヨタTS050ハイブリッド6号車が接近し、小雨の降るコンディションでステファン・サラザンがオーバーテイクを決め3位に浮上する。
その後も6号車のペースは良好で、レース残り20分のところで、2位を走行していた7号車のアウディに接近するもそのまま3位でフィニッシュ。6号車は、初日に行われたフリー走行でモノコックを交換するほどの大クラッシュに見舞われており、厳しい戦いが予想されたが、波乱のレースを生き残り表彰台を獲得。メカニックの懸命な修復作業に報いる結果を手にした。
一方、後続の争いを尻目に1号車のポルシェは2連勝を達成。前戦に続き、レースペースの速さを見せつける結果となった。最後のスティントを担当したベルンハルトは「複雑なコンディションでとても難しいレースだったけど、優勝できて本当に嬉しいよ」と喜びを語った。
なお、負傷したアンソニー・デビッドソンを欠き、セバスチャン・ブエミと中嶋一貴の2人でレースに挑んだトヨタ5号車はレース序盤、パワートレーンのトラブルによるリタイアに終わった。
LMP2クラスはメキシコ人のリカルド・ゴンザレス擁する43号車RGRスポーツ・バイ・モランドがポール・トゥ・ウィンを達成。LM-GTEプロクラスは97号車アストンマーチン・レーシング、アマクラスは88号車のアブダビ-プロトン・レーシングがそれぞれ勝利した。