2016年09月04日 09:51 弁護士ドットコム
店の女の子と連絡先を交換したのがバレて、店長から罰金を命じられました。払わないといけないんでしょうかーー。デリバリーヘルスの送迎ドライバーとして働く男性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこんな質問を寄せた。
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男性はシフト制、時給950円の業務委託契約で、風俗嬢を客先まで送迎し、客から料金を徴収する仕事をしていた。罰金の規定は契約書に書いてあったそうで、すでに男性は「30万を払う」という誓約書を書き、捺印してしまったという。
男性にはもう1つの悩みがある。捺印のとき、店長に辞意を伝えたが、辞めさせてくれないのだ。店の背後には暴力団がついているという。男性は契約書通り、罰金を払わないといけないのだろうか。また、スムーズに辞めることはできないのだろうか。三野久光弁護士に聞いた。
ーー男性は罰金を払うべきでしょうか?
払う必要はありません。労働基準法第16条は、使用者が「労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約」することを禁止しています。契約書に罰金のことが書かれていたとしても、効力は無効と解すべきです。
相談者はすでに誓約書を書いているようですが、その内容は相談者の真意によって判断されます。今回のような場合は錯誤無効、脅迫取消が可能で、公序良俗違反などを理由に誓約書の効力を否定することもできるでしょう。
ーー男性のような業務委託にも労基法は適用される?
確かに業務委託は、対等な当事者間の契約になるので、労基法は適用されません。しかし、実体が事実上「使用従属関係」であれば、たとえ外形上「業務委託契約」となっていても労働者として保護の対象となります。
この場合、使用者の指揮監督下での労務を提供したと言えることが必要で、その判断基準は(1)指揮監督関係がある、(2)報酬の労務対価性がある、(3)そのほか労働者性の補強事実があることの三要素に分析されます。
店長が罰金を課して、スタッフを支配しようとしているわけですから、この男性の場合は「指揮監督関係がある」と認められる可能性が高いでしょう。
ーー相談者は店を辞めることはできるのだろうか?
労働者には退職の自由が認められており、退職意思の表示から2週間経過すると効果が生じます。違約金などを請求され、やむなく退職の意思を撤回しても、その真意によって判断されます。また、業務委託契約でも、受任者はいつでも解約できることになっています。特約で制限されていることもありますが、「労働者性」が認められればその特約は無効です。
男性のように、相手が暴力団とつながっているときや強引な人で自分では対応できないときは、弁護士に相談してみてください。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
三野 久光(みの・ひさみつ)弁護士
同志社大学卒、1987年4月弁護士登録、大阪弁護士会交通事故委員会委員長等歴任、2015年9月からシリウス法律事務所 共著に「狙われる!個人情報・プライバシー 被害救済の法律と実務」(民事法研究会)、「Q&A 自動車保険相談」(ぎょうせい)など
事務所名:シリウス法律事務所
事務所URL:http://www.sirius-law.net