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涙が出てくる。極上のお弁当フォトエッセイ

2016年09月04日 00:02  オズモール

オズモール

写真


【毎週土曜日10:00配信】
コミック、エッセイから、絵本、レシピ本まで、ページを読み進めると思わずグーーッとお腹が鳴ってしまう、食欲刺激系の本を、“食” にまつわる本棚プロデュースやイベントなどを通じて、いろんなおいしいを提案・表現する〈COOKCOOP〉のブックディレクター・鈴木めぐみさんがピックアップ!




◆COOKCOOP 鈴木めぐみさん選

『おべんとうの時間』

私は人がなにを食べているのか気になる性質で、同僚や兄弟に「今日なに食べた?」と訊くことがよくある。だから、いろんな人のお弁当を覗き見できる、この本を初めて手にしたときのワクワク感は特別だった。

「おべんとうの時間」は、全国各地の手づくり弁当を取材して回る阿部夫妻によるフォトエッセイ集。写真は旦那さんの了さん、文章は奥さんの直美さんが担当している。登場するのは、幼稚園生からおばあちゃん、茅葺き職人、海上自衛隊、ラジオ・パーソナリティーなど、年齢も職業もさまざまな39人だ。

ポートレートとお弁当の写真。それと、ご本人の語りでページが綴られていく。その人の表情、おかずの種類や品数、お弁当箱の形など、眺めているだけで会ったこともないのに親近感が湧いてしまう。語られるのは、お弁当の思い出、仕事や家族のこと、ときには過去の出来事も。それがたとえ淡々としたエピソードであっても、読んでいると心の奥からじんわりと暖かくなってくるのが分かる。

ひとつのお弁当を介して、その人を少しでも知ることができる。ときにはコミュニケーションのツールにもなり得る、お弁当がもつ不思議な力をあらためて知ったような気がする。





『おべんとうの時間』写真・安部了 文・安部直美 木楽舎 1512円




COOKCOOP
鈴木めぐみさん

食を中心とした雑誌の編集者を経て、料理本専門書店〈COOKCOOP〉のブックディレクターに。現在、実店舗は持たず、ブックセレクトや食関係のイベントの企画運営に携わっている。