ツインリンクもてぎで9月3日に開幕したWTCC世界ツーリングカー選手権日本ラウンド。今回最大のトピックスと言えるのは、長年日本のトップドライバーとして活躍してきた道上龍のスポット参戦だ。ただ、午後3時から行われた予選では、僅差ながらノックアウト予選Q2進出を逃し、4日の決勝レースはオープニング、メイン両戦とも15番手からスタートを切ることになった。
長年スーパーGT、フォーミュラ・ニッポン等で活躍し、ホンダのエースとして活躍してきた道上は、2013年以降本格的にレースに参戦することはなく、自身が率いるドラゴ・コルセの代表、監督として戦っていた。自ら“引退”とは公言していなかったが、今季のWTCCもてぎ戦で、ひさびさにレースに参戦することになった。スポット参戦というかたちではあるが、いきなりの世界選手権だ。
「こうしてWTCC参戦のチャンスをいただいたホンダさんには感謝しています」という道上は、スペインのバルセロナで行われたテストに参加し、シビックWTCCを初ドライブ。その後、レース直前になって岡山国際サーキットでふたたびシビックをテスト。迎えたもてぎでは、国内メディアはもちろんWTCC公式のメディアも大きく道上に注目していた。
■フリープラクティスでは他車と互角のタイムも……
3日午前のフリープラクティスで道上は、1回目の走行で10周をこなし、1分58秒998というベストタイムをマーク。チームメイトのノルベルト・ミケリスに0.001秒差の12番手という順位となった。続く2回目でも道上は10周をこなし、1分59秒028で15番手。初挑戦の世界戦で、事前の走行が合計1時間という難しい条件のなか、予選を迎えることになった。
ただ、この時点で道上はFF由来のものと思われるアンダーステアと、ブレーキング時にリヤが安定しない症状に苦しむ。WTCCマシンはF1同様、ほぼ全車がレーキ角をつけ極端にマシンを前傾させているが、道上はその状態にもあまり馴染むことができなかったという。
「今週末を迎えるまでの2ヶ月間、自分でやれることというと、それこそバルセロナで一度走って、岡山で走るということだけだったので、フリープラクティスまでは他のホンダドライバー3人と近いタイムで走れていたのですが、難しくなると思っていました」という道上の予感は的中してしまう。予選になってほとんどのドライバーが大きくタイムを上げるなか、道上はアンダー対策としてリヤにユーズドタイヤを装着するなど試行錯誤はしたものの、1分57秒971というタイムで15番手。これで道上はQ1脱落となってしまい、4日の2レースとも後方からのスタートを強いられてしまった。
■違っていた“イメージ”。決勝の追い上げに期待
「予選になるとタイヤの使い方だったり、モニターで他のドライバーの走りを見ていても、走らせ方やラインどりだったりも自分のイメージとは違うんです。データロガーにもそれは表れていました」と道上は言う。
「エンジニアからは『こういう走りをしろ』とは言われているんですが、それがすぐできたら簡単に前を走ることができると思いますけどね(苦笑)。難しい予選になったと思います」
とは言え、道上自身は「自分としては楽しめたと思います」とひさびさの挑戦を楽しんでいる様子だ。
「明日の決勝はうしろからのスタートですが、世界のトップドライバーの走りをうしろから見ながらになりますが、2回レースもありますし、自分自身も学んで活かすことができたらと思っています」と道上は言う。
レースともなれば、また予選とは状況は異なるはず。とくに道上の極めてスムーズな走りは、レースで活きてくるはずだ。ひさびさの勇姿が輝く姿を、多くの日本のファンが期待している。