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今宮純によるベルギーGPドライバー採点&短評・もっとも我慢強いチャンピオン

2016年09月02日 20:11  AUTOSPORT web

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ペナルティで最後尾からスタート、7位までリカバーしたフェルナンド・アロンソ
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、22人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレイを重視して評価する。後半戦のオープニングゲームで五つ星を獲得したのは?

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☆ ニコ・ロズベルグ
 ほんの200メートルで“追跡集団”のマックス・フェルスタッペンとフェラーリ勢が多重側面衝突で消えた。脅かす者はいないも同然。1周目は1分56秒フラット、2位に上がったニコ・ヒュルケンベルグは2分00秒111、あっという間に4秒リード。これだけ速ければセーフティカー導入、赤旗中断も、あせることはなかった。青空スパの下のクルーズ・ドライビング、ミカ・ハッキネンとキミ・ライコネンに並ぶ通算20勝を挙げた。

☆ ジェンソン・バトン
 4年前にポール・トゥ・ウイン、本人は「あのときの予選よりも、いいアタック」と。新ホンダパワーユニットの実走チューニングを初日から着実に進め、プラス・ダウンフォース方向にシャシーをセットアップ(ラディオン通過速度は21位だった)。予選では下りのセクター2で7位タイム、ベテランは現状マシン戦力の勝負どころを、しっかり攻めた。無念の1周リタイア、もうすぐ300戦のバトンの心中や、いかに?

☆☆ エステバン・オコン
 予選18位、決勝16位。決勝はパスカル・ウェーレインの開幕デビュー戦と同じ結果。さまざまなことが起きたスパ、クラッシュ混乱対応、バーチャル・セーフティカー対応、セーフティカー対応、赤旗対応、青旗対応……これらは実戦でしか学べない。この1レースに得られた経験は3レースぶんにも等しい。

☆☆ マックス・フェルスタッペン
 熱しやすく、冷めにくい性格が露わに。ひとことでいえば1980~90年代に見られたような、むきだしのバトルをやっただけだ。それを肯定する見方もあれば、いまのルールに即していないという見方もある。オランダのファンにとってはヒーロー、ティフォシにすればヒール。上位ダブル入賞チャンスを失ったチーム側は、どうとらえたか。

☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
 チャンピオンたちが、そろって挽回レースを見せたスパ。1周目の混乱事故によって19番手まで下がったベッテルは6位へ。あの多重接触に言いたいことは山ほどあるだろうが公式発言は抑え気味、イタリアGPに気持ちを切り替えた。

☆☆☆ キミ・ライコネン
 ベッテル同様、21番手から一時は周回遅れになりながらも9位入賞。怒るアイスマン、怒鳴りまくる無線会話がオンエアされた。記憶にないが、現役時代に父ヨスとキミの間で何かあったのを息子は聞かされているのか、敵対心を彼にぶつける。この週末、高温路面に対してタイヤを巧くマッチングさせ、乗れていたキミ。8年ぶりのポールポジションあるいは予選2位につけていたなら、ロズベルグの強敵となっただろう。

☆☆☆ セルジオ・ペレス
 変身2016年型ペレス、1コーナー混乱を大外ターンで回避。昔の彼ならば巻き込まれていたかも。それで8番手までいったん下がるも、得意の“タイヤケア・マジック”に専念。22戦連続完走で、5位入賞。

☆☆☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
 2012年ベルギーGP、2013年韓国GPから3年ぶり、3度目の自己ベスト4位。真っ向勝負の展開だったがダニエル・リカルド、ルイス・ハミルトンを防げず、またも初表彰台を叶えられなかった。フリー走行2回目で3位躍進、一気にセットアップ方向を正軌道に乗せたのに予選でセンサー・トラブルによる速度ダウン。いい流れをつかむと起きる、ささいな不運。めげずに序盤2位ラン、後半開幕リフレッシュ気分を感じさせたのは確かだ。

☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
 心の中に忍耐力が芽生えたのか、30+25(パワーユニット)+5(ギヤボックス)=60グリッドダウンにも平常心で、21位から取り組んだ。冷静なメンタルバランス、攻めすぎず守りすぎないレースメイキングが3位を引き寄せた。後半戦のターニングポイントをしのいだ『ゲームの達人』ハミルトン。

☆☆☆☆ ダニエル・リカルド
 表彰台インタビュアーは同郷マーク・ウェーバー、また靴でシャンパンを飲む“儀式”を。フェルスタッペンと組むようになって徐々に変化が感じられる。一例が、予選Q2でのソフトタイヤ選択。若い相手がスーパーソフトで先行しても決勝を見据えたレース戦略を。こういう発想はダニール・クビアトと一緒のときには見られなかった。ちょっと大人なベテラン戦術、ここで対フェラーリ22点リードは大きい。

☆☆☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
 待ち遠しかった後半の開幕戦、待望の新パワーユニットを装着した初セッションは、たった3周きり。予選はゼロ周……怒り心頭、モティベーションも萎えそうだが、アロンソほど我慢強いチャンピオンはいまい。1周目に10台抜いて12位、7周目に5位、赤旗後はソフトで飛ばして守り、23周目からミディアムで粘った。30周前後はスローペース、しばらくセーブしてからラスト5周を自己ベストでスパート。こういう頭脳プレイを、もっと上位で見てみたい。7等賞アロンソ、金銀銅ではないが五つ星メダリストに選ぶ。