2016年09月02日 11:42 弁護士ドットコム
指導に逆ギレした新入社員に「不倫している」とデマを流されてしまった。途方に暮れる人が、弁護士ドットコムの法律相談に「左遷させられるかもしれません」と、相談を寄せました。
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相談者は、4月に入ったばかりの新入社員を「色々と指導していた」そうです。ところが、その新入社員は「納得がいかないみたいで、私と先輩社員(女性)を恨んでいたみたいです」。その結果、新入社員は「いきなり社長に電話をして、私と先輩が不倫をしている。そんな事で良いのかと伝えたらしいのです」。
新入社員はすでに何度か同様の電話をしており、相談者は社長からの信頼を失って左遷されるのではないかと心配しています。相談者によると、不倫の事実はないそうです。
相談を寄せた人は「新入社員に法的措置ができるのでしょうか」と聞いています。社長がこの電話を信じて、相談者の左遷や処分をした場合、相談者は何らかの法的措置を取ることはできるのでしょうか。鈴木 謙吾弁護士に聞きました。
●デマを流した社員ではなく、会社の対応の方が問題になる
新入社員のデマによって、相談者が左遷など処分を受けてしまった場合には、民法上の不法行為として、会社に対して損害賠償請求できる可能性はあります。
その際、ポイントとなってくるのは、会社の対応です。具体的には、会社として社員からある事実を伝えられた際、事実関係を確認することなく、懲戒処分に及ぶことが許されるのか? という点です。
会社は「社内不倫をしている」という密告があったとしても、事実関係を十分に調べずに処分すべきではありません。処分の前に事実確認を行うべきで、今回のように、不倫が事実でない場合には、懲戒処分は無効と争える可能性は十分にあるでしょう。
また仮に社内不倫が事実であったとしても、その事実に比べて不当に重い処分をすることも問題視されます。仮に、社内不倫があったとしても、円滑な企業活動に支障を来すような社内秩序の混乱が認められない限り、懲戒処分は認められにくいというのが、裁判所の傾向です。
なお、相談を寄せた人は、「新入社員に法的措置ができるのでしょうか」と質問をしています。虚偽の報告をしたことで、仮に相談者が不利益な処分を受けることになった場合には、新入社員に対して、損害賠償を請求することは不可能ではないでしょう。しかし、今回のケースでは、その新入社員よりパワハラの主張がある可能性もありますし、事実関係の精査も簡単ではありません。
相談者としては、デマを流した新入社員ではなく、会社との関係で問題になりうる可能性を考慮に入れて行動されるべきでしょう。
【取材協力弁護士】
鈴木 謙吾(すずき・けんご)弁護士
慶應義塾大学法科大学院教員。東京弁護士会所属。
事務所名:鈴木謙吾法律事務所
事務所URL:http://www.kengosuzuki.com