今週末、イギリスのシルバーストンサーキットでMotoGP第12戦イギリスGPが開催される。
シルバーストンは60年以上の歴史を誇るサーキットで、1970年代から1980年代にかけて世界グランプリの開催コースだった。その後、イギリスGPのホストサーキットはドニントンパークで定着していたが、2010年にシルバーストンは大幅な改修を受け、MotoGPの開催コースとなった。
1周約5.902km、4本のストレートと右コーナー10、左コーナー8を組み合わせたシルバーストンは、高速レイアウトで、1周の平均スピードも高いが、中低速コーナーもあり、マシンのセットアップが難しいコースとして知られている。また、天候が不安定な場合もあり、昨年の決勝は雨のレースとなった。
昨年のレースは、MotoGPクラスではバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ)が優勝、ダニロ・ペトルッチ(プラマック)が2位に入賞し、MotoGPクラス初表彰台を獲得、3位にアンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)が続いた。Moto2クラスではヨハン・ザルコ(カレックス)が、Moto3クラスではダニー・ケント(ホンダ)が優勝している。
MotoGPクラスではマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)がランキングトップをキープ。前戦チェコでは、難しいウエットコンディションのレースを確実に3位でフィニッシュした。シルバーストンでは2013年に2位、2014年に優勝しているが、昨年はウエット路面でトップを争っていて転倒リタイアに終わっている。
「シルバーストンは、天候の予想が難しい。気温が低く、雨が降る可能性がある。コースは大好きなレイアウトで、前半セクションは低速だけど、その後にセットアップさえ決まれば、ライバルに差をつけられる幾つかのセクションが続く。これまでのレースではいつも楽しんだ。ベストなリザルトを獲得できるように全力を尽くしたい」とマルケス。
前戦チェコで2位に入賞し、ランキング2位に浮上したロッシ。ウエットレースとなった昨年のシルバーストンでは優勝を果たしている。
「ここ数年、シルバーストンではいい思い出がある。昨年はとても困難な状況の中で信じられない優勝を挙げた。今年はいい天候に恵まれることを期待するけど、イギリスでのレースは天候がとても不安定だ。シルバーストンは大好きなコース。とてもおもしろいコースだけど、高いスピードでの方向転換が多く、低速と高速のコーナーの両方に適応するために完璧なセットアップを見つけることが重要なコースだ」とロッシ。
前戦チェコで17位とノーポイントに終わったホルヘ・ロレンソ(モビスター・ヤマハ)はランキング3位に後退。ここ数戦のウエットレースでロレンソは精彩を欠いている。
「オーストリアとブルノの連戦は思ったような結果ではなかった。今後はレースごとに、ベストリザルトの獲得に向けてトライする。シルバーストンでは全力でプッシュする必要がある。もう一度ライディングを楽しまないと。好きなコースの一つだけど、天候は予想が不可能だ。いいレースができるかどうか、様子を見てみよう」とロレンソ。
ランキング4位にダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ)。ここまでの11戦で3位表彰台2回と、ランキング4位はキープしているものの、ペドロサも苦戦が続いている。
「現時点における一番の目標は自信とフィーリングを取り戻して、そこから前進すること。ブルノのオフィシャルテストでいくつかのアイデアを得たので、今後のレースでスピードを高めることができるか見てみよう」とペドロサ。
ペドロサに9ポイント差のランキング5位につけるのがマーベリック・ビニャーレス(スズキ)。ここまでの11戦中10戦でポイントを獲得する安定した走りを見せているが、ウエットレースではやや苦戦を強いられている。
「ボクにとってシルバーストンはいいコースで、初めてのポールポジションを獲得した場所でもある。大好きなコースだし、スズキのマシンにも合っているかもしれない。ここ数戦でバイクに対する認識が高まっている。難しい天候でのセットアップと電子制御の解決策を見つけることが重要だと思う」とビニャーレス。
前戦チェコでレースをリードしながら、タイヤの消耗により8位と連勝を逃したアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)はランキング6位。
「ボクたちのマシンは、全てのコースにおいて戦闘力がある。シルバーストンでのレースでも、ポジティブな結果が残せるかもしれない。過去には幾つかの問題があり、得意なコースではないけど、うまくやれるチャンスだと考える」とイアンノーネ。
インディペンデントチームトップのランキング7位にポル・エスパルガロ(ヤマハ・テック3)がつける。
「イギリスGPが楽しみ。シルバーストンは高速コーナーもあってライディングしていて楽しいコースだし、ポジティブだったブルノテストの直後だから、いい結果を残せると思う。イギリスの変わりやすい天気は心配だけど、ここ数戦ウエットが続いたから、ドライで走りたいね」とポル・エスパルガロ。
ランキング8位のアンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)は昨年のイギリスGPでは3位に入賞している。ドゥカティはチェコGP後のブルノオフィシャルテストに参加せず、サンマリノGPの舞台となるミサノでプライベートテストを実施したが、ドビジオーゾは転倒、右ヒザを痛めてしまった。
「シルバーストンに向けて、万全な体調で臨めるように理学療法士と共に働いている。右ヒザはまだ少し痛みがあるけど、集中的な理学療法を受けている。シルバーストンは好きなコース。攻略が難しいけど、すばらしいコースだ。昨年は3位表彰台を獲得しているし、戦闘力はあると思う」とドビジオーゾ。
ランキング9位にエクトル・バルベラ(アビンティアレーシング)が続き、前戦チェコでMotoGPクラス初優勝を達成したカル・クロッチロウ(LCRホンダ)がランキング10位でホームレースを迎える。
「昨年のシルバーストンではウエットでもドライでも戦闘力があった。ブルノよりもボクたちのバイクに合ったコースだと思う。MotoGP初優勝の直後のホームレースを楽しみにしている。100%プッシュするよ」とクロッチロウ。
ランキング11位にユージン・ラバティ(アスパー・チーム)、ランキング12位にスコット・レディング(プラマック)とホームレースとなるイギリス人ライダーが続く。
ランキング15位のブラドリー・スミス(ヤマハ・テック3)は、先週参戦した世界耐久選手権ドイツラウンドの初日に他車と接触した際に、左足の大腿部、右ヒザの靭帯を負傷。残念ながらホームレースと次戦サンマリノGPの2戦を欠場することになった。スミスの代役にはSBKライダーのアレックス・ロウズが起用される。ロウズは7月末の鈴鹿8耐で優勝、チェコGP後のオフィシャルテストでは、MotoGPマシンのYZR-M1を初ライドしている。
Moto2クラスではヨハン・ザルコ(カレックス)がランキングトップをキープ。前戦チェコでは予選でポールポジションを獲得しながら、雨となった決勝では11位に終わったが、Moto2クラス連覇に向けてタイトル争いを優先する構えを見せた。シルバーストンでは昨年も優勝しており、今年も優勝候補の最右翼だ。
いっぽう、ランキング2位のアレックス・リンス(カレックス)はチェコGPの翌週、ミニバイクでのトレーニング中に転倒して左鎖骨を骨折、イギリスGPへの参戦はメディカルチェック待ちとなる。
ランキング3位のサム・ロウズ(カレックス)はホームレースで今季2勝目をねらう。前戦のウイナー、ジョナス・フォルガー(カレックス)はランキング4位に浮上。ランキング5位のトーマス・ルティ(カレックス)は転倒により前戦を欠場したが、今レースでの復帰を予定している。
前戦で無理やりインに突っ込んできたシモーネ・コルシ(スピードアップ)にはじき飛ばされて転倒リタイアに終わった中上 貴晶(カレックス)は、ランキング7位に後退。中上はシルバーストンでは2013年にポールポジションを獲得、2位表彰台に立った経験を持っており、今季2勝目の期待が高い。
Moto3クラスではブラッド・ビンダー(KTM)が前戦チェコの決勝で転倒し、今シーズン初のノーポイントを喫したが、ランキングトップをキープ。シルバーストンでは表彰台経験はないものの、タイトル争いに向けて重要な一戦となる。
ランキング2位のホルヘ・ナバーロ(ホンダ)は昨年のシルバーストンではポールポジションを獲得しながら1周目に転倒リタイア、今年はビンダーとの差を縮めることが優先課題となる。ランキング3位のエネア・バスティアニーニ(ホンダ)は、2014年にシルバーストンで3位入賞経験を持つ。
日本勢では尾野 弘樹(ホンダ)がランキング23位から巻き返しを図る。鈴木 竜生(マヒンドラ)はランキング24位。昨年のシルバーストンではベストリザルトとなる10位入賞を果たしている。