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木南晴夏、名セリフ「この泥棒猫!」のインパクト “ヤンデレ”演技が加速している

2016年09月01日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 現在TBS系列の火曜22時から放送されているドラマ『せいせいするほど、愛してる』。ティファニーで働く栗原未亜(武井咲)と、若き副社長・三好海里(滝沢秀明)の禁断の恋を描いた本作は、不倫という、今年とくに注目されているセンセーショナルなテーマを扱う。もっとも、これまで数多くのドラマで扱われてきた題材なだけに、特別奇をてらった筋書きになっていないのが魅力的だ。


参考:滝沢秀明 vs 中村蒼、好対照のイケメンぶりーー『せいせいするほど、愛してる』のキャラ比較


 主演の二人の周囲を取り巻くキャスティングが、橋本マナミや中村隼人、中村蒼など、個性の強い俳優でまとめられている中で、一際異彩を放つのが木南晴夏だろう。彼女が演じている海里の妻・三好優香は、交通事故で長いあいだ意識不明のまま眠り続けていた。第3話までは、橋本マナミ演じる優香の姉・遥香が、海里の妻であるかのようにミスリードさせ、優香の姿は登場しない。海里が抱えている秘密とは何かを知ろうとする未亜が中心に描かれてきたのだが、第4話でついに優香が目覚めると、物語は急転する。


 さも“女の勘”というやつだろうか、海里に頻繁に未亜の話を振ったり、積極的に彼女に近づこうとする。結果、未亜に「絶対に敵わない」と思わせるほどの、最大のライバルとして立ちはだかる。よくよく考えてみたら主人公目線で見れば悪役のような位置づけになってしまうだけで、主人公が道を外れた行為をしている以上、真っ当なキャラクターと言われればそう見えなくもない。


 しかし、どこかトゲのある冷静さと、狂気に満ちた表情は、もはや悪役以外の何者でもない。第6話の終盤の空港の場面、車椅子から立ち上がり、未亜に向かって「この泥棒猫!」と罵るところは、不倫ドラマの典型的描写ながら、彼女の迫力に押されて、一気にこのドラマ全体のハイライトとなった。TVスポットで流れたこの映像を見たいがために視聴率が急に上がったのではないかと思ってしまうほどだ。例によって第7話でもこのカットが繰り返し流されるから、作り手側も味をしめたのだろうか。


 本作の全体的にベタな展開と、登場人物のインパクトの強さは、昼メロか大映ドラマかといった印象を受けるが、ここまできたら完全に後者だろう。昨年秋クールに放送されていた『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』のような往年の大映ドラマを想起させる作品が近年再び見受けられるようになったが、やはり本作のようなドロドロの愛憎劇のほうがその面白みが増す。とくに、この空港での場面の木南晴夏の猟奇的な演技は、98年に同じTBS系列で放送されていた大映テレビ製作のドラマ『仮面の女』で雛形あきこが見せた怪演を思い出さずにはいられない。


 木南晴夏といえば、アイドルからバラエティ番組を経て女優に転身したり、公式プロフィールに書かれた趣味の多さからも象徴されるように、多彩なキャラクターを持ち合わせている。2015年まで3年間出演していた『心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU』で見せていた明るく朗らかなイメージが強いからこそ、強烈な女優オーラを放った演技を見ると、ギャップに圧倒されるのだ。


 2006年に放送されたドラマ『ダンドリ。~Dance・Drill~』で演じた個性的なキャラクターで頭角を表すと、2009年に公開された映画『20世紀少年 第2章-最後の希望』でヒロイン・カンナの友人・小泉響子を演じ、大きな注目を集める。とにかく彼女の表情が原作のキャラクターに酷似していたのだ。その後も多くの映画やドラマに出演、ホラーからコメディ間で幅広いジャンルで表情の幅広さを見せる。彼女の近影で印象的だった作品といえば、大きな話題をさらった『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』だろうか。そこで彼女は主人公の夫に言い寄る会社の部下を演じていたので、いわば今回のドラマとは正反対の立場を演じているわけだ。


 30日に放送された第7話では、さらに狂気溢れる演技を見せてくれた。海里の携帯電話を預かると言いだすときの表情、そして自分にナイフを向ける食卓の場面。簡単な言葉で言えば“ヤンデレ”演技が毎話加速していくわけだ。もはや本作の見所は彼女のトチ狂った演技になりつつあるのだから、残りのエピソードでどこまで突き抜けてくれるのか楽しみでならない。(久保田和馬)