2016年08月31日 17:42 弁護士ドットコム
過重労働によるうつ病で休職していた東芝の元社員が、休業期間満了で解雇されたのは不当だとして、会社を相手に損害賠償などを求めていた訴訟の差し戻し審の判決が8月31日、東京高裁であった。奥田正昭裁判長は東芝に対し、差し戻し前の判決の倍以上となる約6000万円(利息除く)を支払うように命じた。
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原告の重光由美さん(50)は1990年、技術職として東芝に入社。2000年から工場で液晶生産のライン立ち上げに携わったが、長時間労働が続き、うつ病を発症した(のちに労災認定)。2001年9月から休業していたが、東芝は3年の休職期間が満了したとして、2004年に重光さんを解雇。重光さんは同年11月、解雇無効や慰謝料を求めて、東芝を相手に裁判を起こした。一審が始まってから約12年が経過している。
一審の東京地裁は2008年、解雇無効と東芝側に約2800万円の支払いを命じる判決を言い渡したが、双方が控訴。2011年の高裁判決でも解雇無効とされたが、重光さんが在籍当時、精神科に通っていることを会社に告げていなかったことから、過失相殺として賠償額が減額された。重光さんは最高裁に上告。2014年、最高裁が過失相殺を否定し、高裁に差し戻していた。
判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見した重光さんは、「過労やパワハラで被災した当事者は、症状もつらいですし、周囲からの偏見にも苦しみます。この裁判が過労やパワハラで被災する人が減る社会に役に立っていただきたいです」とコメント。判決については、評価できる部分もあるが、慰謝料の金額や会社から支払われる見舞金の額について不服な部分もあるといい、「上告するかどうかは、弁護士と相談します」と話した。
重光さんは東芝への復職を予定している。「東芝はメンタルヘルス対策をしていますと公言しているので、きちんとした対応をしていただきたいです」と語った。
一方、東芝は「判決を重く受け止め、その内容を十分に確認した上で適切に対応していきたいと考えております」とコメント。重光さんの復職後の部署については、「協議して決めていきたい」としている。
(弁護士ドットコムニュース)