GP3の第6ラウンドの舞台スパ・フランコルシャンは、福住仁嶺にとって全くの初体験だった。金曜フリー走行で良い感触を掴んでいたものの、土曜朝の予選では肝心の2セット目でアタックミスが目立ち、土曜午後のレース1は11番グリッドからスタートすることに。これが不運の始まりだった。
レース1のスタート直後、ターン1の立ち上がりで2番グリッドから出遅れたジェイク・ヒューズにマシュー・パリィとアルジュン・マイニが追突。それを避けようと後方でも混乱し、福住はそこに巻き込まれてしまった。
「クラッシュを避けようとみんながアウトへ寄ってきてゴチャゴチャっとなっているのは見えていたので、僕もアウト側へいって避けようとしたんですけど、それに巻き込まれてしまったという感じです。そこにいたからぶつかってしまったと言われればそれまでだし、予選でミスして11番グリッドになっていなければ良かったんですけど……」
福住のマシンは、インにいた他のマシンに右リアが乗り上げ、サスペンションが折れてしまった。なんとかピットまで戻ったが修復は不可能だった。福住は走行経験の少ないサーキットだけに1周でも多くは走りかったが、それすら叶わず大きく肩を落とした。
「直せる可能性があればと思ってなんとかピットまで戻ったんですけど、もう直せるような状態ではなかったですね。今シーズンここまでの中で一番ガッカリなレースでした」
レースはポールから好スタートを決めたシャルル・ルクレールが制し、予選13位のジェイク・デニスが激しい追い上げで2位、予選3位のニック・デ・ブリスが3位となった。ART勢の中では選手権を争うアレクサンダー・アルボンだけがペースが振るわず9位に終わり、ジュリアーノ・アレジが10位でGP3初入賞を果たした。
最後方グリッドからのスタートとなったレース2では、福住にホンダの山本雅史モータースポーツ部長が「思いっきり楽しんでレースをやって来い!」と声をかける。
「スタートは良かったと言えるほどではないにしても、1台は抜いたので悪くはなかったと思います。スタートは(序盤戦は手こずったが)最近は安定してきていると思います。後方からのレースだったんで、タイヤのことは気にせずとにかくいけるだけいって攻めまくりました」
そう語る福住は1周目に16位、2周目に14位、3周目には13位と次々にポジションを上げていく。レコンブでレース1に続いてヒュースとペリーがクラッシュするなど、13周のレースで3度もセーフティカーが出動する荒れた展開となったが、8周目にはアルトゥール・ヤノスをパスして11位まで上がり入賞圏目前に。
しかし9周目のレコンブでケビン・ヨルグを抜こうとして接触し、相手をバリアに跳ね飛ばしたとして10秒加算ペナルティを科されてしまった。
「バックストレートでスリップについてアウトから抜こうとしたんですけど、向こうがすごくブレーキングを遅らせてきたんで僕も遅らせて、少しだけオーバースピードでターン5に入っていったんです。それでアウト側の縁石に乗って、クルマが跳ねてアンダーステアが出てしまい、彼にぶつかってしまったんです。それは僕のミスだし申し訳ないと思います」
11位でフィニッシュしたもののタイム加算で最終結果は16位。
速さは見せたレース2だったが、福住自身はこの週末の内容に満足していない。
「ホッケンハイムからレースペースはすごく良いと思うし、あとは予選を良くしてレース1から今日みたいなレースをすれば、良くなってくると思います。課題は予選ですね……」
レースはルノー育成のジャック・エイトケンが初優勝、フェラーリ育成のアントニオ・フォッコが2位でランキング2位へ浮上、ハース育成のサンティノ・フェルッチが3位となった。ランキング首位のルクレールは最終周の最終シケインでミスして6位に後退してチェッカードフラッグを受け、ランキング2位だったアルボンは10位で無得点に終わってしまった。ART勢にとってはGP2と同じくGP3でも苦戦のスパ・フランコルシャンとなった。
今後のレースに向けて、福住は予選でのメンタルの強さが課題だという。
「このタイヤは1周しか保たないんで、その1周をきちんとまとめる集中力、メンタルが大切なんですけど、自分はそこがまだまだだと思います。それと、予選のコンディションでの限界をいかに早く感じ取ってそこまで引き出すか。自分がこのくらいが限界だろうと思ったところが、周りのドライバーは全然上をいっていたりするので、自分が思った限界というのはまだまだなんだなとも思います」
今季も残すところ3ラウンド。まだまだ未経験のサーキットが多い欧州初年度の福住だけに、来季に繋がる経験を磨いてもらいたい。