2016年08月31日 10:21 弁護士ドットコム
観光名所などに結婚衣装姿で現れ、許可なく記念写真を撮影し去っていくーー。そんな「ゲリラ撮影」が沖縄で問題になっていると沖縄タイムスが報じた。
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沖縄タイムスによると、「ゲリラ撮影」を行っているのは、香港や台湾、中国からの観光客。プロのカメラマンや美容師を同行させる点で、一般の観光客の個人的な撮影とは異なるという。新郎新婦は車内や公共トイレで結婚衣装に着替え、目当ての撮影スポットに現れるそうだ。
「ゲリラ撮影」は、ホテルに隣接したチャペルや、世界遺産の首里城、国定公園にある万座毛(まんざもう)などで行われているという。ほかの観光客の迷惑や、リゾート地としてのイメージダウンなどが懸念されている。
沖縄リゾートウェディング協会が、カメラマン向けのマニュアルを作ってマナー意識向上を呼び掛ける予定とのことだが、こうした「ゲリラ撮影」は法的にはどのような問題があるのか。田村ゆかり弁護士に聞いた。
「ゲリラ撮影がどういった場所で行われるのかによって、刑事上、民事上の責任を問えるかが異なってきますので、場合分けして考えます。
まず、立ち入りが禁止されている建物について考えてみましょう。たとえば、使用時間外で施錠されているチャペルに無断で入って撮影した場合には、建造物侵入罪に当たる可能性があります。法定刑は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
また、ゲリラ撮影によって、その場所で行われていた結婚式などの業務を邪魔した場合には、威力業務妨害罪として、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せされる可能性もあるでしょう。
さらにこの場合、民事上の責任として、不法行為に基づく損害賠償請求も考えられます。損害の金額としては、本来であればそのチャペルで撮影を行う場合支払わなければならない撮影料が考えられます。
一般に公開されていない私有地など、立ち入りが禁止されている土地に入ってゲリラ撮影を行った場合にも、同様に考えることができます。
民事上は不法行為に基づく損害賠償責任を負います。また、刑事上も、建造物侵入罪や、撮影の態様によって威力業務妨害罪に処せられる可能性があることも同様です」
一般に公開されている場所で撮影するのであれば、問題はないのだろうか。
「そうとは言い切れません。たとえば、沖縄県の景勝地として有名な万座毛(まんざもう)でゲリラ撮影が行われた場合、業務妨害罪に当たる可能性があると考えられます。
業務妨害罪における『業務』とは、継続して行われる社会生活上の活動であれば足り、収入を得る目的でなくても当たり得ます。
また、万座毛は、沖縄海岸国定公園に含まれており、沖縄県が管理することとなっています。
沖縄県が万座毛を一般に公開しているのは観光客や地元客にその眺望を楽しんでもらうためでしょうから、ゲリラ撮影によって他の来訪者の観光等を妨害するに至る場合には、威力業務妨害罪に当たる可能性があるでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
田村 ゆかり(たむら・ゆかり)弁護士
経営革新等支援機関。2016年度沖縄弁護士会破産・民事再生等に関する特別委員会委員。
事務所名:でいご法律事務所
事務所URL:http://www.deigo-law.com/