2年目のGP2で思うように結果の出ない苦しいシーズン前半戦を過ごした松下信治。夏休みのインターバルで「いったん頭を冷やして、じっくりと考え見つめ直したい」と語っていたとおり、リフレッシュしてスパ・フランコルシャンに臨んだ。
しかし、スパを得意とするはずのARTのセットアップが思いのほか不調だった。予選は自身のミスもあって9位。しかし、それがなくてもプレマ勢には敵わず、3位くらいだっただろうと松下は語る。
土曜午後の厳しい暑さのなかで迎えた決勝レース1では、上位勢がソフトタイヤでスタートするのを見て、ハードタイヤを選択。ハード勢では最上位だったが、1周目にチームメイトのセルゲイ・シロトキンにケメル・ストレートで抜かれてしまった。
「スタートはホイールスピンが少し多くてベストではなかったけど、まわりもあまり良くなかったので、まずまずでした。僕はオプションでスタートする予定だったんですけど、僕の前が全員オプションタイヤだったんでプライム(ハード)スタートに変えました。イニシャルのグリップが違うので彼らを抜けなかったのはしょうがないなとは思います。ターン1で1台抜いて、ターン5の手前で前の1台と争っていたら外側からセルゲイ(シロトキン)に行かれてしまいました」
ピエール・ガスリーを先頭とする上位のグスタフ・マルジャ、ノーマン・ナト、ジョーダン・キングらは6周目から続々とピットインしてハードタイヤに交換していき、ハードスタート勢が上位に上がる。9周目にアルテム・マルケロフがシロトキンを抜いて首位、2位シロトキン、3位松下となった。
しかしART勢は、その後のペースの伸びがなかった。後方からオリバー・ローランドにプッシュされ、松下は17周目にピットインしてソフトタイヤへ交換。
「レースペースがもっと良いと予想していたんですけど、一番速いヤツと較べると、ふたりとも1秒以上遅くて。セクター1や3は良いんですけど、セクター2のクネクネしたところが遅いというのが明らかでした。2台ともそうだったんで、僕の走りがどうとかではなさそうです。いまの自分のペースより1秒以上速く走らないといけないって言われたんですけど『絶対無理!』って言って。ミスをしないようには走っていましたけど、タイヤをマネージメントしていたわけでもなく、ギリギリのレベルで走っていましたから」
これで再びガスリーが首位に戻り、そのまま2位キング、3位アレックス・リンを寄せつけずに優勝。松下はピットストップで左フロントタイヤがはまらず約5秒のタイムロスを喫したこともあって14番手まで後退してしまう。マルケロフが8番手からソフトタイヤで前走車を抜いて5位まで這い上がったのに対し、ART勢のペースは振るわなかった。逆にシロトキンは一度ローランドに抜かれてしまうが、最終ラップの最終シケインでローランドがセルジオ・カナマサスを抜こうとして接触したのを見逃さず、立ち上がりで接触されながらもオーバーテイクして9位へ浮上。松下は10位ローランドに0.131秒及ばず、11位に終わった。
松下はピットアウト直後にファステストラップを記録したが、入賞圏外の11位に終わったためファステストのボーナスポイントは与えられなかった。
「(リバースグリッドのポールポジションになる)8位までは行きたかったんですけどね……基本的にレースペースが速いというのがARTの良さなんですけど、それがなかったのはキツかった。予選で3番グリッドあたりが獲れたとしても、このペースではレース1でも2~3台に抜かれて終わっていたと思います」
11番グリッドとなった日曜の決勝レース2は、午前中のやや涼しいコンディションで行なわれたものの、ART勢のペース不足は相変わらずだった。
スタートで首位に立ったマルジャを、ガスリーと選手権を争う僚友アントニオ・ジョビナッツィが5周目にパスして首位へ。ガスリーもリン、キング、ラファエル・マルチェッロを抜いて4位まで浮上し、スパではプレマ勢が圧倒的な速さを見せた。
松下はスタートでカナマサスに抜かれて12番手に後退し、抑え込まれる展開に。
「スタートは悪くなかったんですけど、カナマサスを抜けなくて後ろをずっと走っていた。一度はオーバーテイク寸前まで行ったんですけど、ひどい幅寄せをされてダートまで行ってしまって、そこからペースが上がらなくなってしまいました。最後はタイヤのデグラデーションがひどくなり、2台に抜かれてしまいました」
ナトとニコラス・ラティフィに抜かれて13位フィニッシュ。混戦のGP2において1秒のペース差は大きい。松下にとっては、いかんともしがたい苦しいスパ・フランコルシャンの週末となってしまった。