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2017年の新規則でオーバーテイクは本当に増える? 相反するタイヤへの要求

2016年08月30日 07:11  AUTOSPORT web

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2017年の新規定でF1はどう変わるのか
2017年に導入予定の新たな空力レギュレーションは、スピードとラップタイムを大幅に向上すると考えられている。しかし、本当に「F1史上最速マシン」が実現するのか、否定的な意見もある。

 レッドブルでチーフ・テクニカルオフィサーを務めるエイドリアン・ニューウェイは、空力レギュレーションが停滞していた時期に、別のプロジェクトを重視するようになっていた。しかしチーム代表のクリスチャン・ホーナーによると“デザインの天才”として名高いニューウェイは「再びレースを楽しんでいる」という。

 一方でトロロッソ代表のフランツ・トストは、新たな空力パーツとサイズを拡大したタイヤの組み合わせは、必ずしも良い効果を生むものではないと懸念している。

「これが正しいやりかただと、100%納得しているわけではない。コーナーでは非常に速いスピードで走れるようになるが、誰もコーナーでのスピードなど見ないだろう。オーバーテイクは、より複雑になると考えている。より多くのダウンフォースと幅広のタイヤを得るということは、コーナーで追従するのが難しくなるということ。ブレーキングを遅らせることができるので、仕掛けるのはより困難になる」

 来季はどうなっていくのか。大きな鍵を握るのはタイヤだ。

 ピレリは現在、24日間に渡るテストプログラムをスタートしたところだ。開発プログラムは11月29日にアブダビで最終日を迎える予定となっており、このころまでには2017年仕様タイヤの構造とコンパウンドを最終決定したいとピレリ側は考えている。

 2011年にピレリがF1へ参入した際、ピットストップ回数を増やすことを目的に、劣化の早いタイヤの開発を求められていた。しかし2017年に関しては、とくにドライバーから耐久性の高いタイヤを要求されている。ピレリのモータースポーツ・ディレクターであるポール・ヘンベリーによると、温度に対する反応を鈍くし、ピーキーさをなくすことで解決できるという。

 ある程度のデグラデーションは必要だが、オーバーヒートすることなく限界まで攻められるだけの耐久性と、少なくともレース中に2回のピットストップを行うという部分との兼ね合いになる。

 ブリヂストンのF1最終年度となった2010年のコンパウンドは非常に安定したものだった。当時ザウバーの小林可夢偉はハードタイヤで、バレンシアで53周ものロングスティントを走行。ヘンベリーは同様の事態が発生して、レースが退屈な展開になる可能性を指摘する。

「いくつかのレースでは、少々のリスクがある。レースが2ストップになるよう努力するが、必要性がなければ彼らはピットに入らない。それにはパフォーマンスの低下やデグラデーション、摩耗が条件になる。デグラデーションが少なく、パフォーマンスが発揮できていれば、タイヤを変えようとは思わないだろう」

「一方で、ドライバーにとって運転しやすいタイヤを作ることも目標としている。激しく攻めてもオーバーヒートしないタイヤであれば、積極的にオーバーテイクを仕掛けることができる」

 新たな設計のマシンはストレートでのドラッグがより増加し、コーナーでは失ったぶんを取り戻すかたちになると期待されている。しかし、もしもコーナリング時のグリップが期待どおりに素晴らしく「オン・ザ・レール」で曲がることができれば、ドライバーはブレーキングを大幅に遅らせることも可能だ。

 ヘンベリーは、オーバーテイクを成功させるチャンスは限られていると語る。

「誰に聞いても異なる意見が出てくる。何人かは『(オーバーテイクは)改善する』と言い、ドライバーの誰かは『絶対に改善しない』と言う。何がどうなるかについて一致した意見というものはない」

 F1では過去3年間に渡り、チームがエンジン規則に集中できるよう、タイヤ開発を凍結していた。そのためヘンベリーは「タイヤに大きな変更を加えるには良いタイミング」と感じている。しかし劣化スピードの遅いタイヤでは、ピットストップの回数が減少する。コーナリング時のオーバーテイクも難しくなる可能性があり、変更がF1をより退屈なものにするリスクが懸念される。

「私が言いたいのは、それだ。より攻められるようになることでオーバーテイクが増えるか、ブレーキングゾーンでアグレッシブな抜き方ができるかどうかでも、これだけ異なる意見が出てくる。さらには後続のマシンが受ける影響に関係する要素もある。多くの人たちが、いまの課題は気流の乱れだと話している」

「誰かの後ろについて走れば、それが空力を乱すことになり、パフォーマンスが少し低下する。まずは失敗だと決めつけず、やってみよう。このレギュレーションに関しては、さまざまな考えがあるようだからね」