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竹内涼真は理想の“ヒロイン男子”だった? 若手演出家が読み解く『青空エール』

2016年08月29日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)2016映画「青空エール」製作委員会(c)河原和音/集英社

 若手の脚本家・演出家として活躍する登米裕一が、気になる俳優やドラマ・映画について日常的な視点から考察する連載企画。第10回は、『青空エール』に出演している若手俳優・竹内涼真について。(リアルサウンド映画部)


参考:竹内涼真と土屋太鳳、“ありえないキャラ”を普通に見せる『青空エール』の演技


 先日、映画『青空エール』を鑑賞して、竹内涼真君はヒロインが似合う俳優さんなのだと感じました。もちろん男性の役を演じていたのですが、でも私の中で竹内涼真君が演じた山田大介はヒロインなんです。ちょっと唐突ですよね。今回はヒロイン男子について解説させてください。


 私は少女漫画が好きで、よく読みます。色々なパターンはありますが、王道は一生懸命努力を続ける主人公の女の子(ヒロイン)と、その主人公の努力を認めてくれる男の子(ヒーロー)の関係を描く物語でしょうか。


 ヒロインは概ね、普通の子が多いですよね。そのヒロインが陰で頑張っている姿に、ハイスペックで、学園のアイドルだったり、天才型だったり、Sキャラだったりするヒーローがそっと気付いてくれる。ヒロインは努力を惜しまない人。ヒーローはそのヒロインの承認欲求を満たしてくれる人だと考えます。


 『青空エール』では、土屋太鳳さんが演じる小野つばさがもちろん“ヒロイン”ですが、竹内涼真君が演じる山田大介も「何も持っていないけれど、努力だけは惜しまない普通の人」であり、物語におけるヒロインのポジションにいます。つまり『青空エール』は、“ヒロインとヒロインの物語”とも見ることができます。


 竹内涼真君は、努力を惜しまないけれど、葛藤も抱えた、男女問わずに応援したくなるタイプの“普通さ”を持ったヒロイン男子でした。物語の中で、大介が甲子園出場チャンスを逃してしまう際に、つばさは1人でトランペットを吹きます。つばさは時に、ヒーロー役になるんです。だからこそ、大介もよりヒロインとしての魅力を増し、つい共感してしまうのではないでしょうか。


 日常生活において、少女漫画に出てくるようなヒーロー男子はなかなか見かけません。ハイスペックな天才型であり、尚且つ他人が影で頑張っている姿にそっと気付いてあげられる存在というのは、現実にはあまりいないタイプでしょう。もちろん、だからこそ少女漫画では需要があり、描かれ続けているのですが。


 だけどヒロイン男子は、そもそもどこにでもいそうな普通の人なので、日常生活の中でも見かけるタイプです。竹内涼真君の芝居には、この“どこにでもいそう”な感じがしっかりとありました。もともと持っている資質なのかもしれませんが、役に対する準備をきちんとしていたのだと思います。きっと、日常においても努力を惜しまない人なのでしょう。ヒロインを演じるうえで、理想的な俳優さんだと思います。(登米裕一)