8月28日に173周の決勝レースが行われたスーパーGT第6戦鈴鹿1000km。レースは立川祐路/石浦宏明組ZENT CERUMO RC Fが優勝を飾ったが、一瞬ヒヤリとするシーンがあった。129周目、スプーンカーブでau TOM'S RC Fを追い抜いたシーンだ。
予選8番手からスタートしたZENT CERUMO RC Fは、前日の予選Q2でコースアウトした立川が、「ミスを取り返す」と意気込みスタート直後からオーバーテイクを連発。22周目の日立オートモティブシステムズシケインでドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTもかわし、トップに浮上した。
その後も首位を守り続けていたが、116周目のピットストップ後、着実に順位を上げてきていたau TOM'S RC Fに先行を許してしまう。その状況が変化し始めたのは、126周目あたりから西コースを中心に降り出した雨だった。
ZENT CERUMO RC Fをドライブする立川は急速にau TOM'S RC Fをドライブするニック・キャシディとのギャップを削り、129周目、スプーンで一気にキャシディの背後に迫った。立川はスプーンひとつめのポスト(T13)からふたつめのポスト(T14)の間で、アウト側にはらんだキャシディのインを突きオーバーテイク。首位を奪還している。
しかし、この直前にスプーンでは小暮卓史がドライブしていたKEIHIN NSX CONCEPT-GTがコースアウトしグラベルにストップしており、T13からT14はイエローフラッグの区間になっているように見えた。実際、中継映像では立川がキャシディをかわす瞬間、画面内に映ったT13ポストに黄旗が提示されているように見えた。
そのため、ZENT CERUMO RC Fに対し黄旗追い越しの検証があったが、その後この検証に対し「問題ないと判定」する結果がタイミングモニター上に提示された。つまり、ZENT CERUMO RC Fの黄旗追い越しはなかったということだ。
立川はレース後の記者会見で「スプーンひとつめ(T13)のフラッグは正直、あまり確認はできなかった。ふたつめ(T14)でフラッグが出ているのは分かっていたんです。ただ、そもそも抜きにいくというより、普通に走っていただけで、36号車がはみ出していただけです。前の周からあの場所でフラついていましたからね。タイミングとしては微妙ではありましたが、大丈夫かな、と思っていました」と状況を語った。
この判定について、レース運営を担当するGTアソシエイションの服部尚貴氏に話を聞くと、「他のレースと同様、通常どおりの検証の結果、問題がないと判定しました」という。
中継映像では、角度の関係で黄旗が提示されている状態でZENT CERUMO RC Fがau TOM'S RC Fのインを突いたように見えたが、レースコントロールが使用する監視カメラの映像内には、ポストの区間を示すラインがあるという。
この映像を確認したところ、まずKEIHIN NSX CONCEPT-GTのコースアウト後、T14では黄旗二本振動が提示されていたが、T13では、まず滑りやすい状態を示すオイルフラッグと、KEIHIN NSX CONCEPT-GTを牽引するためのキャタピラー車(=低速車)が出動していたことを示す、ホワイトフラッグが提示されていた。
その後、T13には新たにイエローフラッグが提示されることになるのだが、ZENT CERUMO RC FがT13の区間開始を示すラインを通過したのは、イエローフラッグが提示されるほんのわずか直前であることが監視映像で確認された。そのため、ZENT CERUMO RC Fが通過した瞬間のT13は黄旗区間ではないため、ペナルティは課されなかったということだ。
中継映像では繰り返しこのシーンが流されたため、黄旗追い越しがあったようにも感じられたが、実際は“ギリギリセーフ”だったのだという。迅速に判定が導き出され、その後のレース展開が阻害されなかったことは、サーキット側とGTアソシエイションの現代の運営がうまくいっている証明ではないだろうか。