今回のスーパーGT鈴鹿1000kmでは5回のドライバー交代を伴うピットストップが義務づけられているが、運用面ではいくつかイレギュラーなケースが想定されている。1000kmの耐久戦では戦略が重要になるだけに、観戦する際に把握しておくと、よりレースを深く見ることができるが、今回の規定について坂東正明GTA代表が見解を述べた。
1000kmの周回数は173周で、5回ピットストップ/6スティントが義務づけられる。6スティントだと、1スティントの平均周回数は28.8周。毎スティント給油をすれば、スタートでは燃料満タンでスタートする必要はなくなり、軽めの燃料でプッシュする展開も考えられるが、実際にはセーフティカーに備えて戦略の幅を広げるために、GT500はほとんどのチームが満タンでスタートすることになりそうだ。
ただ、この5回ピット義務規定はレース中に赤旗中断などのアクシデントが起きた場合、競技審査委員会の判断により、義務回数が減らされる場合がある。特に今日の決勝は雨が降ったり止んだりの不安定なダンプコンディションのため、荒れた展開になる可能性が高い。
また、決勝レース終了時点でドライバー交代を伴うピットイン義務回数を履行していない場合、1回の不履行に対して決勝結果から1周減算のペナルティが科される。
今回の義務規定は第2戦富士で起きたガス欠問題を回避させる狙いで設けられたが、チーム側からは安全面や公平性を評価する声が聞こえる一方、「戦略の幅が狭まって面白くない」「耐久戦の醍醐味が削がれてしまう」という意見も聞こえていた。
また、ハード面でも方向性が複雑になる。今回の5回ピット義務を前提とした場合、鈴鹿1000kmに向けたタイヤ開発は1スティントの周回が少なくなることでよりソフト傾向のタイヤが必要になり、エンジンも高燃費、高出力の方向にシフトしてしまう。低燃費、高効率を求めている現在の世の中と逆行してしまう恐れもあり、日曜の決勝前のGTA会見ではGTA坂東代表が今回の規定が限定的であることを明らかにした。
「(スーパーGTのレースは)より燃費が良くて高性能のエンジン、タイヤ開発が目的なので、燃費が悪くて高性能というクルマは、マニュファクチャラーとしても売れるとは考えられない。よりクオリティを高くしたクルマをスーパーGTに参加させるべきであるというのがGTAの考え方です」
「大排気量、大トルク、最悪の燃費というレースであっては困る。そういったことを考慮すると、来年の鈴鹿1000kmはもっと戦略をオープンな形にして、ピット義務を3回以上にするとか、ドライバーには周回数の1/3以上走行しなければポイントは付かないとか、そういう形で考えていきたい。今回の5回義務のルールに関しては今年のシーズンの流れの中で、今年起こったことに対しての措置であり、来年に向けては変えて行きたい」