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高畑裕太さん逮捕でドラマ「撮り直し」、母淳子さんCM中止…損害賠償はどうなる?

2016年08月28日 11:32  弁護士ドットコム

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俳優の高畑裕太さん(22)が8月23日、前橋市内のホテルで、女性従業員に性的暴行を加え、強姦致傷容疑で群馬県警に逮捕されたことで、芸能界に大きな衝撃が走った。


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報道によると、高畑さんが出演していた日本テレビ「24時間テレビ」内のドラマ「盲目のヨシノリ先生」(8月27日午後9時)は、急きょ代役を立てて撮り直した。また、母親の高畑淳子さんが出演するNHK大河ドラマ「真田丸」にも登場する予定で、既に収録を追えていたが、代役を立てて再度撮影することになった。


一方、高畑淳子さんは、8月26日の記者会見で謝罪。仕事を続けることが「私の贖罪」だとして、9月に幕を開ける主演舞台「雪まろげ」の降板を否定した。東宝の関係者から「高畑さんは立たなくてはいけないんです」と言われたそうだ。ただし、出演した花王のCMの放送が8月24日から中止になるなどの影響が出ている。


今回のような事件を起こしたことで、出演した映像が撮り直しになったり、もしお蔵入りになったりした場合、放送局などから損害賠償を請求される可能性があるのだろうか。太田純弁護士に聞いた。


●信用や品位を損なう言動をしてはならないという義務


「ドラマやCMの出演契約や、所属事務所とのマネジメント契約などでは、タレントが負う義務として、『イメージ条項』と呼ばれるものが書かれていることがあります。契約相手の信用や品位を損なうような言動をしてはならないという義務を記しています。仮に明文がなかったとしても、契約の趣旨に照らして、同様の義務を認定できることもあります」


賠償金はどう算定されるのか。


「損害の認定と因果関係によります。今回の場合は、主に高畑容疑者の出番の頻度によるでしょう。撮り直しするとのことですので、賠償金額は、他の出演者のスケジュール確保なども勘案して設定することになりますね。


万が一、お蔵入りになった場合、損害は制作費だけではありません。番組スポンサーやテレビ局、あるいは他の出演者への迷惑など、無形の損害も考えられます。こうした損害について、違法行為との因果関係を吟味していくことになります」


損害賠償の請求は、タレント個人に行くのだろうか。


「大物の俳優さんであれば、自身の個人事務所を持っている場合もあるでしょう。しかし、通常は、タレント個人は直接の契約関係にはありません。テレビ局側や制作会社と契約を結ぶのは所属事務所ですから、賠償義務の負担も、たいていは所属事務所になります。タレント個人は何も負担する必要がないのかという疑問がわきそうですが、これには、所属事務所が『求償』という形式で、負担を求めることになりますね」



●高畑淳子さんについては?

母親の高畑淳子さんも、8月29日に出演予定だったNHK総合「スタジオパークにこんにちは」の出演が取りやめになったり、CMの放映が中止になるなど影響が出ている。もし今後、高畑淳子さんの出演作品が撮り直しなどになった場合、高畑淳子さんが損害賠償を求められる可能性はあるのか。


「そもそも、息子さんの行為と、親御さんの番組等への出演は、何ら因果関係がないと見るのが一般的です。高畑裕太さんのように、行為者が成人であれば、親御さんが被害者に対して、


保護者として法的に責任を負う立場になることは想定されません。


ただ、例外的に、親御さんが事務所を経営しており、そこにタレントが所属していて、事務所経営者、あるいは使用者として、そのタレントの監督責任を法的負担すべき立場にあるなどの場合には、状況次第では、可能性があります。


今回のケースでは事務所も異なるので、被害者に対して、法的な責任を負うことはないと考えていいでしょう。


したがって、被害者に対して法的責任を負担しない立場の親御さんが、ご自身の出演内容を降板するならば、それは出演先とご自身との間の協議や合意に基づく取りやめと解されます。そうであれば、その協議や合意によって賠償や補償を決めたのでなければ、法的な意味において、損害を賠償する義務を負担する必要はありません」


裕太さんに求められた損害賠償金を、淳子さんが支払う義務はないのか。


「こちらについても、既に述べましたとおり、成人が行為者ですので、原則として、親御さんが支払う義務はありません」


太田弁護士はこのように話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
太田 純(おおた・じゅん)弁護士
訴訟事件多数(著作権、知的財産権、労働、名誉棄損、医療事件等)。その他、数々のアーティストの全国ツアーに同行し、法的支援や反社会的勢力の排除に関与している。
事務所名:法律事務所イオタ
事務所URL:http://www.iota-law.jp/