GT500の予選はドラゴ モデューロNSX CONCEPT-GTの武藤英紀が初めてのポールポジションを獲得した。ドラゴはウエイトハンデが8kgとGT500の中で2番目に軽く、そのアドバンテージとエンジン出力が増したクルマ、そしてドライバーのアタックで2番手のS Road CRAFTSPORTS GT-Rにコンマ3秒差をつけるという、圧巻の速さを見せた。そのドラゴとともに、予選を湧かせたのがS RoadのGT500デビュー戦となった高星明誠だ。
「(GT500マシンは)FIA-GT3マシンと違って、ダウンフォースがあると聞いていましたけど、S字などでは(マシンが)ピーキーな動きをする感触がありました。そこに慣れるのは苦労しましたね。乗り方について、ある程度は本山(哲)さんや千代(勝正)さんからアドバイスを貰いましたけど、乗ってみないと分からない部分の方が多いです。なので、(自分のデータ)ロガーを比べてから、アドバイスを貰うほうが多かった」と話す高星はQ1を任され、7番手。8位までがQ2に残れるQ1の予選で、課せられたミッションを見事にクリアした。
チームメイトの本山哲も、「午前中に9割くらい、走行時間とタイヤを与えて、ちゃんとステップを踏んでいたし、すごく良かったと思う」と高星のGT500デビュー日を総括。高星も本山への感謝を言葉にする。
「もともと、チームのプランとして僕がQ1担当というものもあったので、公式練習で本山さんが(僕の練習に)時間を割いてくれました。そのおかげで、僕も少しずつレベルアップすることができたので、Q1を突破できたのかなと思います」と話す高星。それでも、予選Q1はチーム側としても、ドキドキだったようだ。S Roadの大駅俊臣監督が話す。
■決勝で体感するGT500の課題と難しさ
「高星はがんばりましたよね。まずはQ1をクリアするという目標でやってきて、ギリギリQ1を突破できた。今日は明日の天気を含め、高星にはできるだけ走ってもらおうと、練習走行でトータルで19周走ってもらいました。思ったよりは周回数が少なくなってしまったけど、ニュータイヤを2セット履いて、Q1突破いけるかなという感触を持ちました。Q1でマークした1分48秒1のタイムは、ちょっとドキドキしました(苦笑)。1分47秒台を目標にしていたけど、しっかりアタックしてQ1をクリアしてくれました」
高星も自身初のGT500の予選アタックには、完全には満足はしていない。
「Q1のアタックは、個人的にはまだまだと思っています。セクター3などに関しては、いいタイムが出ているので自信につながりましたけど、ピーキーさが出るコーナーで攻め切れないところがありました。ただ、どこを攻めきれなかったのかは把握していますから、そこはロガーを見ながら整理していきたいと思います」
ただ、スーパーGT、そしてGT500クラスの難しさはレースにこそ、凝縮されている。そこは大駅監督も冷静に見つめる。
「今、F3のクラスに乗っているドライバーはスピード的にはGT500にも乗れると思います。ただ、GT500はひとりで走って速い/遅いのレースではなくて、いろいろなことをしなきゃいけないレース。GT300との混走があり、いろいろなものをマネジメントしなきゃいけないし、ステアリング周りのスイッチ類も多い。いろいろ仕事量が多いので、まずはそれをレースで学習してもらいたいなと思います」
「日曜は雨でも晴れでも、高星はGT500のレースが初めて。1000kmは周りもいろいろ躓いたり、転んだりして、その中で怪我が小さいチームが上に残るレースなので、高星が無理してプッシュする必要がないように乗せたいと思っています」
高星もその点はもちろん、理解している。「GT500でレースを戦うのも初めて。今度は(GT300の)抜かれる立場から抜く立場に変わりますが、経験したことがないのでどうなるか分かりません。ただ、そのなかでもいいポテンシャルを発揮しながら、スティントごとに経験値を貯めて、レベルアップしていきたいですね」
大本命と言われ、まずは順当に2番手を獲得したS Road。それでもトップのドラゴは速さがあり、後ろ3番手のカルソニック IMPUL GT-Rは1000kmでの優勝もあり、言わずと知れた強豪チーム。その中でルーキー高星を擁するS Roadはどんな戦いを見せてくれるのだろうか。