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KinKi Kidsのコンサートは一味違う! パフォーマンスと2人の距離感が心を掴む

2016年08月28日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 今年、デビュー20周年を迎えるKinKi Kids。9月21日には、約2年ぶりとなる通算15枚目のニューアルバム『N album』が発売され、9月29日からは東京・武道館公演を皮切りに、名古屋、宮城、大阪、札幌、広島、福岡と『KinKi Kids Arena Tour 2016』がスタートする。


(関連:KinKi Kidsとタッキー&翼、ジャニーズにおける「二人組」の魅力を分析


 実はKinKi Kidsのコンサートは、他のジャニーズアイドルのコンサートとは一味も二味も違う。まだ彼らのコンサートを見たことがないという人は、今すぐ8月10日にリリースされたライブDVD『2015-2016 Concert KinKi Kids』を手にとってほしい。セットリストにデビュー曲から新曲まで、いわゆる王道の曲が多く入っている今作は、KinKi Kidsのコンサートの“超入門”にふさわしいからだ。


 今作は、毎年恒例の年末年始に行われている大阪・東京ドームコンサートのうち、堂本光一の誕生日である1月1日公演の様子を収録したもの。なんと東京ドームで元旦公演を行なうのは、2016年で18年連続。もちろん、これほど長い記録を持つのは、KinKi Kidsのほかにはいない。今回は、このライブDVDを通じて、KinKi Kidsの魅力について、紹介したい。


■ファンサービスではなく、パフォーマンスで心を掴む


 一般的なアイドルのコンサートは、手を振ったり、笑顔をふりまいたり、ウチワに書かれたリクエストに応えたり…と、ファンサービスが大きな魅力。だが、KinKi Kidsは、ここぞというときにしかそうした行動に出ない。なぜなら彼らの目指しているコンサートは、お客さんに「もう一度あのステージを見たい」と思ってもらえる質の高いパフォーマンスだからだ。


 今作のオープニングも、オーケストラバンドとコーラスの生演奏で、荘厳なメロディーが鳴り響く中、クールな表情で2人が登場。新曲「夢を見れば傷つくこともある」をしっとりと歌い上げていく姿は、まさに圧巻の存在感。


 堂本剛のボーカルは、彼自身がまるでひとつの楽器かのように、繊細でクリアに響き渡り、堂本光一は躍動感ある歌声で力強く、見ているものを惹きつけていく。


 個性と個性が調和し、絶妙なバランスで溶け込んでいく。そんなハーモニーに包まれながら「生で歌を聞く感動とは、こういうことか」と改めて感じられるのが、KinKi Kidsのコンサートなのだ。


 1公演1公演、そして1曲1曲が生き物。その瞬間を切り取ったDVDの映像を見ると、きっと「次は生で!」という気持ちにさせてくれる。


■とにかく名曲揃い!時代を越えて愛される楽曲たち


 KinKi Kidsには、これぞ名曲と言いたくなる楽曲が揃っている。それもそのはず、KinKi Kidsはデビューシングル『硝子の少年』から36作連続で初登場1位を獲得。これは、今もギネス記録を更新中なのだ。


 今作のセットリストでも、松本隆、山下達郎、織田哲郎、秋元康、伊秩弘将…と、KinKi Kidsの才能に惚れた名だたるミュージシャンたちの楽曲が並ぶ。


 デビューから20年、今や30代後半のKinKi Kidsは、大人の余裕と色香が加わり、同じ曲でも聞くたびにその魅力が深まっていく。そんな楽しみ方ができるのも、長く活躍している2人ならではかもしれない。


■深いの愛を歌わせたら、天下一品


 KinKi Kidsは、マイナー調の曲がよく似合う。新曲「夢を見れば傷つくこともある」も、応援ソングでありながらも、ポップさや寄り添う感じはなく、どちらかというと突き放した印象。


 MC中に、この曲について話す2人は「まるで居酒屋みたい」「夢を見たら、傷つくことだってあるんだよ、な!」と、酔っぱらいのコント風に歌詞を語ってみせて、笑いを誘っていた。


 だが、あたりさわりのない励ましや慰めよりも、相手を思ってあえてキツめなことを言うほうが愛情深いときもある。「KinKi Kidsらしい応援ソングだ」という彼らの真意はそこにある。


 表面的ではなく、深層的な愛。このスタンスは、2人の相方愛にも通じているのではないかと感じる。


 ふだん表面的なコミュニケーションはとらないかもしれない。ストイックな2人のこと、今や励まし合ったり、慰め合ったりもしないだろう。きっと、求めるレベルも高いが、それをクリアしてくるお互いの信頼関係もあるはずだ。愛情ゆえの厳しさが、彼らの愛の形。だから、こうした歌が胸を打つのかもしれない。


■相思相愛の瞬間を見つける楽しさ


 表面上は決してベタベタしないふたりだが、「やっぱり相思相愛なんだ」と感じる瞬間はある。それを見つけるのも、KinKi Kidsのコンサートの魅力かもしれない。


 年末年始のKinKi Kidsは、自分たちのコンサートと並行して、ジャニーズのカウントダウンコンサートのリハーサルを進めている。同じ東京ドームという会場で、同じ曲でありながら異なる段取りで披露するため、「混乱してしまう」のだそう。失敗してしまったときには、しっかりと笑いに消化できるのもKinKi Kidsの実力だ。


 今作でも、3曲目の「やめないで,PURE」のときに、立ち位置をチェンジをするはずだったのが、光一が間違えて剛とポジションがかぶり、見つめ合ってしまった。しかし、そのタイミングが「君のことを愛しているから」という歌詞のときだったので、ファンはむしろ大興奮だった。


 MCでは、そのミスに関連してカウントダウンコンサートでも、「硝子の少年」で「Stay…」と歌い出しをミスしてしまった話題に。しかし、2人で同じところを間違えたと気付き、ステージからはけながら確認して笑い合ったとのこと。


 彼らの自然に呼吸が合ってしまうところに、長年歩んできた絆、染み込んでいるコンビ感を垣間見えて、楽しいのだ。


■おもちゃを見つけたKinKi Kidsの自由さがたまらない


 毎年、光一の誕生日に公演があることから、剛は祝い続けている。今作でも、光一にサプライズで200名を超えるメンバーをまとめて、バースデーソングを披露した。もちろん、そこには、いつも関西人らしくお笑いのオチがつく。


 今回はハッピーバースデートゥー“ユー”のところで、剛がトロンボーンをひと吹き。うまく音が出ずに会場は笑いに包まれた。さらに、「一緒にやろう」と光一に色違いのトロンボーンと超入門テキストをプレゼント。光一は「マジか~」「絶対せぇへん」と苦笑をしながらも、ステージ上でテキストを熟読してしまう。さらに次の曲もトロンボーンを手放さず、「これ、おもろい」とハマる光一に、満足そうな剛だった。


 もともとレギュラーのテレビ番組から派生したトロンボーンネタ。次のコンサートでは、もしかしたらこの続きが見られるのではないか。「あのときの!」と繋がるネタが増えていくのが、KinKi Kidsを長く愛してしまう理由かもしれない。


■光一とファンの夫婦漫才は熟年の粋に!


 光一といえば、客いじりのドSっぷりが度々話題になっている。その毒舌ぶりは、今作でも加速する一方。そろそろMCを切り上げて後半にいこうというとき、お客さんからの「えー」と惜しむ声が響く。すると、「うるせーな、いい歳こいて、えーとか言ってんじゃねーよ」とバッサリ。「歌をカットしてしゃべるか?」と挑発し、歌もMCもと欲張るファンに「ワガママな娘じゃのー、娘かどうかはしらねーが」を追い打ちをかける。


 そんな冷たい対応をしたあとには「みなさんのそういうワガママを叶えるのが、私たちの役目だと思っています」とキュン発言…と思いきや、「そう簡単には叶わねーけどな!」と再びドS発言を繰り広げた。


 今回のMCでは、ついに「いつもディスってる」と認めた光一に対し、剛も「ネタでとか言うなら止めないけど」とツッコミを入れずにはいられなかった模様。これにはさすがに「みなさんへの感謝と信頼関係があるから言える」とフォローを入れつつ、「慣れろ」と最後まで亭主関白ぶりを維持していた。


 アンコールでも「早く帰って現実に戻ってください」「(ライブ中は)我々を彼氏を思ってくれてもいい。ただ、終わった瞬間、きっぱりと別れます」「あなたたちが思っているより、こういうことをやれば喜ぶんでしょっていうのを、めっちゃ知ってる、でもやらなーい」と言いたい放題。その様子を剛も「ド変態ドSってことですかね」と温かく見守るのだった。


■剛の男前が止まらない


 ツンデレな光一に対して、剛は意図的にまっすぐに愛を表現しようとしている節がある。


 「人生が一緒になる瞬間がライブ」「シンプルにKinKi Kidsを愛してください」「ごちゃごちゃ言うヤツ並んで、ビンタするから…その後チューしちゃうかも」という発言に続き、Wアンコールの「愛されるよりも、愛したい」を「僕たちは、ファンの人たちに、そういう気持ちで生きてるよという歌」として紹介。言葉を慎重に選ぶ剛だからこそ、こうした一言に重みが出る。


 MC明けで歌に入るとき、立ちたくないファンが増えてきたことを受けて「座ったままは、30年後のディナーショーで」という優しいフォローも付け加えていた。今年20周年を迎え、さらに30年後も夢のような時間を届けてくれることを連想させてくれる剛。もちろん、その隣には「いい歳して」といじってくる光一もいるはず…と、ファンはニヤニヤしてしまうのだ。


 一度知ったらやみつきになるのが、キンキコンの魅力だ。今からでも間に合う、いや、むしろ今だからこそおもしろいKinKi Kids。ぜひ、この魅力をDVDで味わい、コンサートでも体感してほしい。(佐藤結衣)