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現実逃避の自炊が題材。面白料理エッセイ!

2016年08月28日 00:02  オズモール

オズモール

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【毎週土曜日10:00配信】
コミック、エッセイから、絵本、レシピ本まで、ページを読み進めると思わずグーーッとお腹が鳴ってしまう、食欲刺激系の本を、“食” にまつわる本棚プロデュースやイベントなどを通じて、いろんなおいしいを提案・表現する〈COOKCOOP〉のブックディレクター・鈴木めぐみさんがピックアップ!




◆COOKCOOP 鈴木めぐみさん選

『逃避めし』

自分に課せられたなにかがあるとき、やらなければいけないことの期限が迫っているとき、人間はどうしてほかのことに気持ちが向いてしまうのだろう。「今やる?」と自分自身に問いかけながらも、現実から目を逸らしてしまった経験が一度くらいはありませんか。

『逃避めし』は、漫画家・吉田戦車さんが〆切が追った非常時に、ごはん作りに逃げてしまう様子をつづった料理エッセイ。例えば、めんつゆは使わず梅干しの味だけで素麺をいただく「日の丸そうめん」、〆切直前の「エビピラフ」。これなんか、エビの背わたを取る下処理から始めて、殻と脚としっぽを煮だしてザルで漉したりして、めちゃくちゃ手間がかかっている。

著者は、こうやって完成させた品々を、“思いつき料理”と表現する。調理に走らせるきっかけは、少年時代の思い出やアニメ。何てことないことがモチベーションとなっているにもかかわらず、完全にやり切っているのが潔く、スリル感を楽しんでいるのが面白い。キワッキワの〆切の辛さは人気マンガ家でなければ理解し難いものであり、これはたしかに“逃避”に違いないかもしれないが、日々の一食をおざなりにせず、食べることを楽しんでいる様は、なんだかいいなぁと感じずにはいられないのだ。






『逃避めし』吉田戦車・著 イーストプレス 1501円





COOKCOOP
鈴木めぐみさん

食を中心とした雑誌の編集者を経て、料理本専門書店〈COOKCOOP〉のブックディレクターに。現在、実店舗は持たず、ブックセレクトや食関係のイベントの企画運営に携わっている。