ドラゴ モデューロNSX CONCEPT-GTの武藤英紀、そしてS Road CRAFTSPORTS GT-Rの本山哲がコースレコードを更新してフロントロウを獲得したスーパーGT第6戦鈴鹿1000kmのGT500クラス。この2台が上位に来ることはある程度、予想が付いていたものの、今回の予選では他の上位候補が次々と脱落していく予想外の展開となった。
まずは優勝候補にも挙がっていたau TOM'S RC Fが予選Q1で11位になり、ノックアウト。「午後になって気温が上がったのでセットアップを変更したら、オーバーステアになってしまいm130Rでリヤがスライドしてスピンしかかってしまった」と、アタックを振り返る伊藤大輔。
同じくQ1でまさかの脱落となったのが、練習走行ではドラゴに次ぐ2番手と好調だったRAYBRIG NSX CONCEPT-GT。「ウォームアップのデグナーでスピンしてしまいましたけど、それは大きな影響はありません。フラットスポットも出来ていない。単純にアタック中の最後のシケインで行き過ぎてタイムロスしてしまった」とアタックを担当した伊沢拓也。その翌周も伊沢は連続アタックに入ったが、路面温度が44℃にも上がった鈴鹿での予選では、すぐにリヤタイヤが厳しくなって連続アタックのタイム更新は難しい。タイヤのピークを失った伊沢は予選13位と、まさかの下位に沈んだ。
続く予選Q2でも波乱が起きた。歴代最多ポールポジションを獲得中のZENT CERUMO RC Fの立川裕路がスプーンで飛び出し、まさかのQ2最下位の8番手。「単純に踏みすぎてしまった。縁石に乗ってフロアをぶつける形でアウトに出てしまった。アクセルを緩めれば良かったのかもしれないけど、アタック中なので緩めるわけにはいかない。それくらい予選はギリギリでアタックしていたけど、そのギリギリを最後までつなげて来れなかったのは自分のミス。自分に腹が立つ」と、立川。それでもまだ8番手で決勝ではチャンスもありそうだが、「順位が決まる最後のアタックで、こういったミスをしたのは初めて」と、予選順位以上に立川の落胆ぶりは大きい。
前回の富士の予選でもRC Fのブリヂストン勢が全車Q1落ちしてしまうという波乱があったが、この鈴鹿でもRC F+BSが低迷する結果となってしまった。ブリヂストンは第2戦富士の決勝で起きたカルソニック IMPUL GT-Rのバーストの後、安全性を高めたタイヤを導入。具体的にはタイヤの構造を変えたと聞くが、この構造変更がRC F陣営には影響が大きかったようだ。同じブリヂストンユーザーでも、ニッサン陣営、ホンダ陣営ではそこまでの影響は起きていないようなので、レクサス陣営のチーム側の方で、セットアップをまとめ切れていない状況が続いていると考えられる。
レクサス陣営としての光明は、ヨコハマタイヤを装着したWedsSport ADVAN RC Fが予選4番手を獲得したこと。Wedsは昨年の1000kmでも予選10番手から4位フィニッシュしており、今回は表彰台を狙う展開となる。Wedsの坂東正敬監督が話す。
「ひとまず4番手ですけどレクサス陣営としては予選最上位、そしてチームとしてもRC Fで予選最上位なので、本当にドライバーのふたりが頑張ってくれた。ふたりともスーパーフォーミュラでも好調(関口雄飛が優勝、国本雄資が4位)の流れで、その後のトレーニングもイベントもいいコンディションのまま頑張ってくれました。今回は新しいタイヤを投入してきていて、ヨコハマさんのチャレンジがいい方向にも向かっている。明日はタイヤ次第ですけど、この鈴鹿と次のタイはチャンスなので、いいところを見せたいと思います」
決勝日はどうやら雨の予報で、5時間を越えるレースの中では当然、時間とともに雨量が異なる展開になりそうだ。タイヤメーカー4社のウエットタイヤの性能とともに、チームのタイヤ選択、そしてドライバーのウエットでのドライビングと、かなりタフな戦いとなることが予想される。そうなれば、ドライでは四苦八苦したRC F+BS勢も息を吹き返し、ミッドシップでリヤタイヤが温まりやすいNSXがウエットで優位になる。決勝レースは今回の予選の勢力図とはまた、ガラリと違った形になりそうな気配だ。