F1ベルギーGP初日のフリー走行を終えたパドックでは、タイヤについて不満を述べるドライバーが少なくなかった。
「タイヤの内圧がかなり高いから、タイヤをいたわって走るのがすごく大変だった」(ルイス・ハミルトン)
「タイヤを機能させるのが、とても難しかった。今回、指定されたタイヤの内圧には納得できない」(ロマン・グロージャン)
「タイヤをもたせるのに苦労したよ。どのコンパウンドとか関係なく、すべて。でも、みんな同じ条件だからね」(セバスチャン・ベッテル)
ピレリがベルギーGPのために設定したタイヤの内圧は、フロント23.5psiでリヤが22psiである。昨年の内圧はフロントが20psiでリアが18.5psiだったから、フロント/リヤともに3.5psi上がったことになる。この変更にフェリペ・マッサは「ジョークだろ!!」と声を上げたという。
なぜピレリは、ここまで内圧を上げたのか。昨年のベルギーGPでニコ・ロズベルグやベッテルのタイヤがバーストしたからである。ピレリは直後の調査でバーストの原因を縁石もしくはデブリ(破片)によるカットだとしていたが、コンストラクションがマシンのダウンフォースに耐えきれずに、構造材が破壊された可能性は否定できない。
今年のマシンは昨年よりもさらにダウンフォースが増加しているので、ピレリは内圧を上げざるを得ないと判断した。その場合、最もダウンフォースの大きいマシンを基準に内圧を設定するため、今回の内圧変更はダウンフォースが少ないチーム、つまり下位チームにとって不利な決定となり、ドライバーの不満も相対的に下位チームになるほど多かった。
ピレリが不安を感じている様子は、今回ベルギーGPにコンストラクションを新しくしたプロトタイプを持ち込んでいることからもうかがえる。1チームに4セット(ひとりにつき2セット)配布されたプロトタイプは、コンパウンドはソフトだが、構造が新しくなっている。金曜日のフリー走行のみ使用され、フリー走行2回目のあとに返却。この新しいプロトタイプは次戦イタリアGPにも持ち込まれ、問題がなければ、早ければマレーシアGPから実戦投入されるという。
シーズン中のコンストラクションの変更は、きわめて異例。今回このプロトタイプの内圧がどれくらいに設定されていたのかは不明だが、もしマレーシアGPからコンストラクションが新しくなったタイヤが投入されるとなると、タイヤのアロケーション(配分)は10月末のメキシコGPまで決定しているだけに、やはりチーム側から不満の声が上がるかもしれない。
内圧を変更するか、構造を変えるか──どちらにしてもピレリにとっては難しい判断を迫られることになる。