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今宮純の初日インプレッション:十代の競合力、マノーがマクラーレンを上回る

2016年08月27日 15:21  AUTOSPORT web

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マノーのルーキー対決で勢力図に異変か
スパ・フランコルシャンを貸し切って31年ぶりの“オランダGP”が再開か。そう思わせるくらい、金曜からコースサイド至るところにオランダから駆けつけたファンが群がった。30度を超える晴天の異常気象、いつもの雨がらみスパ・ウェザーとはまったく違うコンディション。熱気あふれる夏休み明けのベルギーGP、初日から「マックス・フェルスタッペン・フェスタ」が開演した。

 高速コーナリングがパワフルなレッドブル、勝負どころは約100mを一気に下るセクター2。ダイナミック・ダウンフォースに優れるRB12の空力グリップは抜群、加えて回頭性が俊敏なのはメカニカル・グリップが安定しているから。フリー走行2回目(FP2)で、その強みをはっきり引き出したフェルスタッペン1位、ダニエル・リカルド2位でワンツー発進。初めてFP2首位をとった後輩は、セクター最速タイム48秒386で、ここが得意な先輩を0.233秒上回った。

 余談だが、このエリアにスタンド椅子席はほとんどない。芝生というか草地の丘から見下ろしながら観戦する自由席ばかり。いつものスパ・ウェザーだと足もとは泥んこ、雨風にさらされて文字どおり立ち見のまま過ごす。そこで何度か彼らと一緒に見たことがあり、「耐えるファン気質」に頭が下がる思いでいた。今年は金曜から、このエリア自由席に上半身裸のファンがいっぱい、オランダ国旗があちこちに見える。父ヨスがいた1990年代後期にも7万人近い観客の中で彼らが目立ったがそれ以上、子は父を超えたと実感。

 フェルスタッペンの目に、この景色がどう映っただろう。リオ五輪メダリストたちのような気分になったか。応援があったからセクター2最速だったとは言わない。でも彼自身、初めて体験する“ホームグランプリ”気分に浸りつつ、ここぞとコーナリングに集中する様子は伝わった。

 金曜にCS生中継3時間ご一緒したのはベテランの竹下アナウンサー。何度もスパ現場取材に来ているだけに、記憶に刻まれた場面など話をふってくれた。控室で「スパも次のモンツァも“F1世界遺産”みたいなところですね」と談笑。そんなクラシックイベントでの18歳の鮮やかな一閃……。まだ金曜でも、フェルスタッペンはインラップを、まるでウイニングランのようにまわった。この経験も、きっとまた新たな学習になるはず。個の力が人々を奮い立たせる意義を、彼は味わった。

 タイトル争い渦中のルイス・ハミルトンにパワーユニット交換ペナルティ、同様にフェルナンド・アロンソとマーカス・エリクソンもグリッドダウンが確定。決勝レースの“ゲーム性”が増したことになる。それはさておき、金曜2セッションではマノー勢の内なる対決に見入った。パスカル・ウェーレイン対エステバン・オコン、メルセデスが育成する近未来スター候補たち。チーム戦力は劣ろうとも、その環境で速さを自力発見できるかどうか。ふたりは実力査定されていることを認識できていた。

 フリー走行1回目はオコン16位 vs ウェーレイン19位。FP2で逆転してウェーレイン11位 vs オコン21位。マノーがマクラーレンを抑えるポジションは今季初の事態、彼らの若い“競合力”がチーム構図を、さらにシャッフルしたと言ってもいい。

 世界遺産コースのスパ・フランコルシャンで、金曜から10代ドライバーがブレイク。今年あと9戦の後半にはタイトル争いとともに、見どころがふんだんにある。後半戦スタートの金曜スパは、その“予告”だった。