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欅坂46・渡邉理佐のフォトジェニックな存在感ーー『徳山大五郎』でトップヒエラルキーに

2016年08月27日 14:41  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)「徳山大五郎を誰が殺したか?」製作委員会

 これまでクラスの中でも際立った存在感を放ってきた渡邉理佐のグループ。第1話から、「(徳山殺しの犯人が)先生とは限らないんじゃない? この中にいるかもしれないし。」などと、ハッキリした物言いで、クラス中を凍りつかせてきた渡邉。そして渡邉に常にくっついているのが石森虹花と齋藤冬優花の二人だ。番組ホームページの相関図を見ると、無関心で美意識が高いグループだと説明されているが、あながち事件に無関心というわけではなさそうだ。


参考:欅坂46、長沢菜々香 & 米谷奈々未コンビの個性ーー『徳山大五郎』で見せたコメディリリーフの才能


 『徳山大五郎を誰が殺したか?』第6話は、前半部のクライマックスであろう。徳山大五郎の遺体をどうするか、ということに困りあぐねていたクラス全員は、不登校だった長濱のロッカーにそれを入れていたが、長濱の登校によって事態は急変。埋めちゃえばいいと言いだす長濱と、それに賛同する渡邉の二人の意見によって、彼女たちは夜の学校に忍び込んで徳山の遺体を埋める作戦に打って出るのだ。


 第4話まで不在によるミステリーを作り出していた長濱が、一気にクラスをかき回すわけだが、一番かき回されるのが渡邉理佐のグループで、長濱の登場によって仲間割れが起き始める。第5話の美術の時間中、裁判にかけられている長濱が、クラス全員が犯人かもしれないと言いだすのに対して、「オリエント急行かよ」とツッコミを入れる渡邉。それに怪訝そうな表情を浮かべる石森は、放課後の教室で意味深なやり取りをする二人を目撃してしまうのだ。


 これまで何度も解説しているように、このクラスのヒエラルキー構造は明確で、菅井のグループは、クラス委員という立場上、いざという時に責任を押し付けられるだけの一番低い位置にいる。実際行動を起こすのは守屋のグループであるが、それ以上にクラスへの影響力を持っているのが渡邉のグループなのだ。実質的なボスに当たる渡邉を、長濱が支配し、そのグループ内を壊していくとなれば、クラス全体のバランスが歪み始める。そもそも「無関心」だった渡邉が、徳山殺しに長濱が関わっているというドラマ序盤の疑念によって、関心を持たざるを得なくなったということだろうか。


 欅坂46メンバーの中で、土生瑞穂に次ぐ高身長の持ち主である渡邉理佐。長身で小顔というレベルの高いルックスは、間違いなくフォトジェニックでもあるが、映像でも決して見劣りしない。わかりやすい演技をつけなくても、立っているだけで妙に貫禄があるというのは、まさにこの役柄に適している。さすがは欅坂46で常に上位人気を誇るだけはある。これまでのAKBグループや乃木坂46の傾向から考えるに、今後モデル業に進んで、さらなる人気を獲得する可能性も充分にあるだろう。


 ただ、演技面に関しては少しぎこちなさが残る渡邉。それを補完するのは石森虹花と齋藤冬優花の役割だろう。二人とも決して巧みな台詞読みができるわけではないが、メンバーの中で誰よりも先に映画女優デビューを果たした石森の経験値は侮れない。現在公開中の映画『コープスパーティー Book of Shadows』で、乃木坂46の生駒里奈と共演を果たした彼女は、表情の芝居が際立つ。メンバーのほとんどが自然に近い演技や、キャラクター作りに重きを置いているように見える中で、彼女だけが演技らしい演技をしているのである。


 また、メンバー内でも卓越したダンスのセンスを持つ齋藤も、その長所が動きの芝居に反映されている。もっとも、二人とも渡邉というリーダーに付きっきりの没個性的なキャラクターで、雰囲気だけでは体現しづらいだけに、単体で見ると他のメンバーよりも印象が弱く感じる部分もある。しかし、3人並ぶと絶妙な存在感を放ち、クラスを牛耳るトップヒエラルキーらしさをまざまざと見せつけるのである。非常に良いバランスを持った3人だ。


 ところで、メンバーを把握し始めると、やたらと細かいところに目がいってしまう。今回、徳山を埋めるために夜に教室に集まったメンバーは、全21人のうち13人。来なかったのは、尾関梨香、菅井友香、小池美波、原田葵、佐藤詩織、上村莉菜、長沢菜々香、米谷奈々未の8人だ。さらに、夜の教室で警備員がやってきたときに、ロッカーに隠れる平手と長濱と渡邉グループの面々。他の4人が横並びのロッカーに入る中で、長濱だけは自分のロッカーの方に敢えて向かっている。ところが、実際に入ったのは、ひとつ隣の長沢のロッカーだった。徳山の遺体がもう入っていないのを誰よりも知っているはずの彼女が、何故そうしたのかが妙に気にかかる。ミステリードラマである以上、こういった些細な部分が推理の手掛かりになるのだろうか。(久保田和馬)