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映画『青空エール』で「キセキ」歌うwhiteeeen、なぜ“歌声”だけで10代リスナーの心を掴んだか?

2016年08月26日 17:01  リアルサウンド

リアルサウンド

whiteeeen

 甲子園を目指す野球部員と、甲子園のスタンドで野球部を応援することを夢見る主人公の青春ストーリーを描く映画『青空エール』が8月20日より公開となり、土日2日間で動員16万人、興収1億9700万円で動員ランキング3位に初登場を果たした。同作品の主題歌は、これまでにも不良野球部員が熱血教師と甲子園出場を目指すドラマ『ROOKIES』(TBS、2008年)、第81回選抜高等学校野球大会で開会式入場行進曲と、甲子園ものの定番曲となっているGReeeeN「キセキ」。しかし、今回『青空エール』の主題歌となった「キセキ」は、透明感ある女性の歌声で歌われていることで話題となっている。


(参考:GReeeeNの変わらない“強さ”とは? 年月を経ても愛される楽曲的魅力を探る


 その主題歌を担当しているのは、女性ボーカルユニットwhiteeeen。2015年春に公開した映画『ストロボエッジ』の主題歌がGReeeeNの「愛唄」に決定した際、GReeeeNのメンバーから、新たに女性ボーカルを募集して同曲をカバーしててもらいたいとの提案があり、whiteeeenの結成に至ったとGReeeeNオフィシャルHPにて明かされている。実際のオーディションは、コミュニケーションアプリ「LINE」を使ってオーディションが開催され、メンバー4人全員が10代の女子であることも特徴だ。映画『ストロボエッジ』の主題歌は、「愛唄~since 2007~」というタイトルで、iTunes/レコチョクほか計8配信サイトでチャート1位を記録し、レコチョクアワード月間最優秀楽曲賞4月度シングル月間1位を獲得。また、第30回(2015年度)日本ゴールドディスク大賞「ベスト5ニュー・アーティスト」を受賞するなど、各方面から高い評価を受けている。


 現在、whiteeeenは、映画『ストロボエッジ』の主題歌に続き、『青空エール』の主題歌に抜てきされ、10代から絶大な支持を受けている。「キセキ ~未来へ~」のMV(竹内涼真出演)は、映画のなかで甲子園を目指す野球部員が主役となるアナザーストーリーが描かれ、公開直後から再生数が59万再生を突破。ほかにも、先日、メジャーデビューを発表した“双子ダンス”で活躍する高校を卒業したばかりのまこみなが振り付けを考え、コラボした映像を公開。振り付けを真似して投稿した動画が、動画共有コミュニティMixChannelをはじめSNSを通して広がっている。また、10代を中心に人気の動画アプリ『SNOW』から、アパレルショップ『SPINNS』デザインによるwhiteeeenオリジナル動画スタンプがリリース。『SNOW』スタンプが、アーティストの楽曲とコラボするのは、初めてのことで、タレントのGENKINGや木下優樹菜らも自身のInstagramに投稿し、10代に限らず話題を呼んでいるようだ。


 whiteeeenが歌う「愛唄~since 2007~」「キセキ ~未来へ~」などのカバー曲には、今の10代に響く、GReeeeNとは異なる彼女たちオリジナルの楽曲の魅力がある。「キセキ ~未来へ~」で使用されているトラックは原曲と同じではなく、whiteeeenの透き通った声に合わせた軽やかな音色が奏でられ、4人ひとりひとりの声質の個性が楽しめるようになっているのだ。また、甲子園球児の熱い仲間との日々を描いた『ROOKIES』に比べ、男女間の恋模様が描かれる『青空エール』には、主人公と同じ世代の女の子の声で歌われる「キセキ」がとても合う。曲中に含まれているwhiteeeenとGReeeeNのコラボパートを聞くと、昔から現在へ楽曲が歌い継がれていく瞬間を感じる。2008年に誕生し、当時の多くの人の耳に馴染んでいった「キセキ」は、whiteeeenのメンバー1人1人が、真っ直ぐでひたむきな気持ちを込めて歌ってるからこそ、今、たくさんの人の耳に届いていく。


 映画『青空エール』の挿入歌としてが起用されているwhiteeeenのオリジナル曲「メロディー」は、メンバー本人が作詞を手掛け、10代である彼女たちの等身大の言葉が綴られている。同曲の歌詞には映画とリンクした内容が描かれており、主人公が恋に気づくピュアな瞬間が、彼女たちの言葉と歌で表現されていた。whiteeeenの楽曲は、歌詞の中にある“女の子らしさ”が特徴的で、10代女子の気持ちを代弁するような曲が多い。『愛唄~since 2007~』のカップリング曲「ハンブンコ」や2ndシングル『ポケット』のカップリング曲「恋のテンキヨホウ」で歌われている女の子ならではの恋心は、彼女たちの優しい声で口ずさむ甘くて少し切ないメロディに乗せて、まっすぐに心に届く。また、1stミニアルバム『声』に収録の「卒業ソング」は、青春時代の思い出を語りかけるようにしっとりと歌い上げる4人の歌声が、涙を誘うバラード曲だ。


 アイドルブームの最中、多くのグループが、メンバー1人1人のルックスやダンスパフォーマンスなど、様々な武器を持って活動を続けている。一方でwhiteeeenは、GReeeeNと同様に姿を出さずに活動し、「歌声」という魅力だけで10代のリスナーの心を掴んだ。彼女たちの歌声は、10代のひたむきな姿が描かれる『青空エール』の世界観を最大に引き出し、今後も青春時代を歩んでいく10代にとって欠かせない存在になっていくだろう。


(文=大和田茉椰)