マクラーレン・ホンダのジェンソン・バトンは、来季の新規定F1が、以前のようにドライバーを「震え上がらせる」ものになると考えている。
先日、ピレリのポール・ヘンベリーは、ダウンフォースが大幅に増強される2017年のマシンは、「レールの上を走るように」ドライブできるだろうと語った。だが、2009年のワールドチャンピオン、バトンによれば、それは完全に見当はずれな予想だという。
バトンは、彼が過ごした17シーズンのなかで最良の時期と比べると、現在のF1マシンはあまり魅力的ではないと感じている。だが来季は、チャレンジングなマシンを危険を感じながら走らせる感覚を、再び味わえるようになりそうだという。
「(かつてのF1マシンで)ヘレスのターン5を抜けてバックストレートへ出るときには、片目をつぶって『このまま持ちこたえてくれるだろうか?』と思いながら走っていた」と、バトンは言う。
「進入で強くブレーキを踏むことはできないんだ。そうするとタイヤが変形して、ステアリングがものすごく重くなって、ターンインできなくなる。だから、軽く当てる程度のブレーキングで入って、ターンインしたら、出口が見えるまでは、いつクルマが挙動を乱しても反応できるように身構えているしかない」
「もしリアが急に滑ってオーバーステアになれば、コースから飛び出すか、良くても大きくタイムロスするかだ」
「だが、いまのクルマならごく普通に進入して、コーナリング中はずっとタイヤを滑らせながら、ドリフト状態で通過できる。以前とはまったく違う感覚なんだ。あの震え上がるような感じがない。だけど、来年はその点ではずいぶん良くなると思う」
バトンによると、現在のクルマも予選トリムであれば、まだそれなりにドライビングを楽しめるという。しかし、先月のドイツGPでのドライブと、彼がF1で過ごした最初のシーズンを比較すると、全体的として華々しさが損なわれたのは間違いないと、彼は考えている。
それでもバトンは、タイヤがワイドになり、空力も強化される来年の新ルールによって、かつてのF1の魅力が多少は取り戻せると信じている。車重が今年よりさらに20kg重くなることは差し引いてもだ。
「いまのクルマでも予選ラップはかなり楽しいよ。レースでも順位を争って、いいバトルができれば、まだ十分に楽しめる。レースの後で、ホッケンハイムの中継を録画で見たんだ。そして、その直後にたまたま放送されていた2000年のスパのレースを見た。当時のエンジン音は、やはりすばらしかったよね。あれが重要な要素のひとつだった」
「来年、F1はタイヤと空力に関しては、正しいことをやろうとしている。それは大きな進歩であり、このスポーツが進むべき道だろうから、僕もうれしいよ。ただ、物事には何でもネガティブな面が伴うもので、これに関して言えば、ネガティブなのはクルマがさらに重くなることだ」