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初登場『青空エール』『ゴーストバスターズ』は2強に及ばず 2位の『シン・ゴジラ』は本年度邦画1位を射程に

2016年08月25日 16:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『ゴーストバスターズ』場面写真

 少女マンガ原作実写化作品『青空エール』、80年代エンターテインメント大作のリブート作品『ゴーストバスターズ』。それぞれ、日本映画とハリウッド映画の最新トレンドをおさえた期待作が公開された先週末であったが、いずれの作品も夏休み興行後半戦の2強、『ペット』&『シン・ゴジラ』には及ばなかった。


参考:SMAPは日本映画界に何を残したか? 宇野維正が振り返る「SMAPの映画史」


 『青空エール』は土日2日間で動員16万人、興収1億9700万円で動員ランキング3位に初登場。少女マンガ原作、三木孝浩監督、夏休み公開と共通項の多い2年前の『ホットロード』の初週の週末成績は動員28万4367人、興収3億8924万2000円だったから、それに比べると少々物足りない出足。高校の野球部で活躍する少年を応援する吹奏楽部の少女が主人公ということで、夏の高校野球が最も盛り上がるはずの時期に公開時期が設定されたと推測できるが、メディアにおいては高校野球も本作のプロモーションもオリンピックの話題に吹き飛ばされた感が否めない。作品自体はとても丁寧に仕上げられた良作だけに、現状では観客の中心層となっている女子高生から、口コミによって客層が広がっていく可能性も十分にあるだろう。


 動員ランキングでは初登場4位となった『ゴーストバスターズ』だが、土日2日間の興収2億3700万円という数字は、幅広い観客層と3D上映による入場料金上乗せによって興収では3位の『青空エール』を上回っている。また、週末のランキングには反映されていないが、8月11~14日の先行公開でも既に7万人を動員していて、動員力でも『青空エール』以上のポテンシャルを見せている。もっとも、主題歌ともども日本でも社会現象化した第1作公開時の1984年のブームには遠く及ばず、アメリカ本国と同様に「大ヒットを期待されたが、結果は中ヒット」という結果に終わりそうだ。


 さて、本コラムでは公開直後にどこよりも早く『シン・ゴジラ』が興収50億前後行くのではないかと予測をしたわけだが、8月後半に入ってからようやく巷のネット・ニュースでも「『シン・ゴジラ』50億突破確実!」といった見出しが躍っている。本日発売の週刊新潮にいたっては「興行収入100億円が見えてきた」とまでぶち上げているが、さすがに「100億円」というのは映画興行の仕組みをまったく知らない素人予測だと一笑に付さずにはいられない。現状、最終興収約46億の『信長協奏曲』を超えて2016年度の実写邦画ナンバー1作品となるのは確実だが、最終興収約63億の『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』を超えて、アニメ作品も含めた2016年度の邦画ナンバー1作品になるかどうかは予断を許さないといったところ。同じ東宝作品で、非常に高い前評判を集めている今週末公開の『君の名は。』がどれだけ化けるか(それによって今後の『シン・ゴジラ』上映館の割り振りも影響される)が鍵を握っていると予測しておこう。(宇野維正)