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バンドじゃないもん!、“再メジャー”で快進撃 不思議なグループ性と人気の秘密を紐解く

2016年08月25日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

バンドじゃないもん!

 2016年8月25日に放映された日本テレビ系『ZIP!』でも紹介され、さらに注目されつつあるバンドじゃないもん!。彼女たちが7月31日に豊洲PITで開催したワンマンライブもレポートしましたが(参考:バンドじゃないもん!がついに掴み取った成功 豊洲PIT公演を機にグループの歴史を振り返る)、バンドじゃないもん!が一般的な「アイドルグループ」とはちょっと違うことは誰の目にも明らかでしょう。なにしろ、ドラムを叩き続けているメンバーがいて、しかもベースやキーボードを弾くメンバーもいるのですから。6人のメンバーのうち、ライブで楽器を演奏するメンバーは実に3人。しかも、グループ名は「バンドじゃないもん!」。どうしてこんな不思議なグループが生まれ、人気を獲得しているのでしょうか?


 バンドじゃないもん!でドラムを叩いているのは、リーダーの鈴姫みさこ。彼女は神聖かまってちゃんのドラムでもあります。神聖かまってちゃんの活動と並行して、2011年に活動を始めたのがバンドじゃないもん!でした。そして、2012年にメジャー・デビュー。さらに2013年には、恋汐りんご、七星ぐみなど3人が加入します。同年にはオリジナル・メンバーのひとりが脱退し、新メンバーとして望月みゆが加入。望月みゆは、初ステージからベースを弾いていたのが衝撃的でした。「バンドじゃないもん!」という名前なのに、また楽器を演奏できるメンバーが入ってきたからです。バンドじゃん!


 2014年にはメンバーがひとり脱退。そして加入することになったのは、甘夏ゆずと天照大桃子でした。甘夏ゆずはマルチプレイヤーで、初ステージからキーボードを演奏。天照大桃子は、ボーカル面での強力さをバンドじゃないもん!にもたらしました。


 2014年のこのとき、鈴姫みさこ、恋汐りんご、七星ぐみ、望月みゆ、甘夏ゆず、天照大桃子という現在のメンバー構成が固まりました。それまでは常に激動が続いているような感覚だったのです。強力な新メンバーが入った……と安心したのも束の間、今度はメジャー契約の満了がアナウンスされました。つまり、甘夏ゆずと天照大桃子は、バンドじゃないもん!がインディーズになることを承知の上で加入したのです。そして、実はこのときに初めて鈴姫みさこは正式にリーダーとなりました。彼女はバンドじゃないもん!を背負っていく覚悟を決めたのです。この時期に「この6人が最後のメンバー」という発言も出ていたことを記憶しています。


 バンドじゃないもん!に急激に勢いがついたのは、2013年に恋汐りんご、七星ぐみらが加入したときでした。新メンバーは当時、でんぱ組.incを生み出した秋葉原のライブスペース&バーのディアステージに所属していたため、そこからファンが流入して一気に人気に火が付いたのです。


 そして、天照大桃子は2014年の加入当時、すでに「テラスハウス」に出演して「ちゃんもも◎」として知名度があり、現場にさらに女性ファンが増えた記憶があります。10代~20代の若い女性ファンが多いことは、バンドじゃないもん!の現場の特徴です。


 また、メンバーの多彩な個性が、ファッションアイコン化している点も見逃せません。ヴィレッジヴァンガードやWEGOなどのショップで推されているのもバンドじゃないもん!の特徴。だからこそ、インディーズになってもバンドじゃないもん!の勢いは増すばかりで、その勢いが彼女たちをメジャー・シーンに引き戻すことになります。


 2015年にインディーズでリリースしたシングル『NaMiDa / White Youth』では、バンドじゃないもん!はオリコン週間シングルランキングのベスト10入りを目指しました。しかし、結果は11位。あと少しのところでベスト10に手が届かなかったバンドじゃないもん!でしたが、2016年にポニーキャニオンから2度目のメジャー・デビューをすることが発表されました。再メジャー・デビュー・シングル『キメマスター! / 気持ちだけ参加します。』は5位となり、結成してから5年にして初のベスト10入りを果たしたのです。


 アイドル的な要素とバンド的な要素が混ざったライブの面白さに加えて、バンドじゃないもん!には大きな特徴があります。それは基本的にハッピーな面しか見せない、という姿勢です。活動をしていれば喜怒哀楽があるのは当然なことであるはずなのに、バンドじゃないもん!はサニーサイドしか見せようとしません。その姿に胸打たれた人々は、「もんスター」と呼ばれるファンになっていきます。


 音楽面では、一貫してバンドの要素を持ちつつもポップである点が大きな特徴です。現在のメンバー構成になった2014年以降のシングルのうち、「ツナガル!カナデル!MUSIC」や「NaMiDa」は、最初期からバンドじゃないもん!に関わるミナミトモヤが作曲。バンド畑の出身である彼は、メンバーのキャラクターや声質まで理解した楽曲を提供しています。ミナミトモヤが編曲した虹のコンキスタドールの「THE☆有頂天サマー!!」は、オリコンデイリーシングルランキングで1位を獲得しています。


 再メジャー・デビュー・シングル『キメマスター! / 気持ちだけ参加します。』のうち、「キメマスター!」は畑亜貴、田代智一、黒須克彦、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)が結成したプロデュースチーム・Q-MHzが作詞作曲を担当。 メジャー感を意識した楽曲です。そして、「気持ちだけ参加します。」は沖井礼二(TWEEDEES/ex. Cymbals)が作曲。渋谷系の流れを汲むサウンドでは、ストリングスの音色も鮮やかに響きます。


 そして、8月24日にリリースされた再メジャー・セカンド・シングル『夏のOh!バイブス』では、NAOTO(ORANGE RANGE)がプロデュースを担当し、HIROKI(ORANGE RANGE)が作詞で参加。ORANGE RANGEとバンドじゃないもん!という思いがけない顔合わせに驚きました。そして楽曲は、尋常ではないほどキャッチーな方向に振り切れているのです。「千葉 九十九里」という歌詞にも驚かされました。近場すぎる。ORANGE RANGEとの意外な顔合わせは、バンドじゃないもん!の新しい面を切り開いてみせました。


 カップリングの「HAPPY TOUR」は、2016年にスタートした、約30公演にも及ぶ全国ツアーの中で生まれた楽曲。奥脇達也(アカシック)が作曲、MOSAIC.WAVが編曲を担当しています。MOSAIC.WAVによるサウンドは、バンドっぽさとチャーミングさをあわせもつものです。


 「夏のOh!バイブス」では、通常盤に加えてユニット盤が3形態リリースされました。恋汐りんごと望月みゆによるユニット「Chou Chou Cream」盤に収録されているのは、PandaBoYが作詞作曲編曲した「アイスクリームになりたいの▽(▽の正式な表記はハートマーク)」。甘酸っぱいテクノポップです。七星ぐみと天照大桃子によるユニット「ブルーツインズ」盤に収録されているのは、松永天馬(アーバンギャルド)が作詞作曲し、アーバンギャルドが編曲した「シンデレラブルース」。ドラマティックさとアンニュイさをあわせもつテクノポップです。鈴姫みさこと甘夏ゆずによるユニット「コットンラビッツ」盤は、なんとふたりが制作した「ヒーローズ」を収録。甘夏ゆず作曲、鈴姫みさこ作詞による雄大なロック・ナンバーです。


 バンドじゃないもん!は、メンバー構成の面でも、音楽的な面でも、さまざまな変遷を経てきたグループです。近年のアイドルはストーリー性が重視されるのも特徴ですが、メンバーは「お涙頂戴」をする気をまったく見せません。その代わりに、ただ前だけを見る姿勢をストイックなまでに貫いています。その結果生み出されたのが、ポップにして多彩な最新シングル『夏のOh!バイブス』だと言えるでしょう。『キメマスター! / 気持ちだけ参加します。』が5位になったときや、4000人キャパシティの豊洲PITでのワンマンライヴを成功させたときには歓喜しましたが、いや、まだまだなのです。バンドじゃないもん!の全国ツアーのタイトルが『バンドじゃないもん!全国ツアー2016 ~てっぺん目指そうぜ!武者修行編~』であるように、目指すところは「てっぺん」なのですから。(宗像明将)