トップへ

スポーツと音楽の深すぎる関係 GReeeeNはなぜアスリートを惹き付ける?

2016年08月24日 18:31  リアルサウンド

リアルサウンド

GReeeeN

 たくさんのドラマを生み、先日閉幕したリオデジャネイロ五輪。様々な懸念材料を抱えたまま始まった今回の五輪だが、終わってみれば日本選手団は過去最高のメダル数を獲得し、熱戦に次ぐ熱戦で期間中は酷い睡眠不足と戦っていた方も多いのではないだろうか。私も睡眠不足と涙で常に目を腫らし続ける17日間となってしまった。


(参考:GReeeeN、福島への深い関わりーー新曲「始まりの唄」と“青春小説”からグループの本質を読む


 さて、各局の中継番組にもその局の特色が反映されたテーマソングが起用されたり、来たる2020年東京五輪への引き継ぎとして閉会式で行われたセレモニーでは「トーキョーショー」の「クリエーティブ スーパーバイザー/音楽監督」を椎名林檎、ARと50人のダンサーによるパフォーマンス演出の音楽担当を中田ヤスタカが務めるなど、スポーツと音楽がシンクロする瞬間を今回の五輪期間中もいくつも見ることができた。たくさんの選手たちにとって、音楽はとても大切なもの。過酷な練習を乗り切るために、試合前に集中するために、大好きな曲を聞いている選手の姿をドキュメンタリーなどで見ることも少なくない。


 DREAMS COME TRUE、ゆず、Mr.Childrenなど、応援歌やテーマソングとしてスポーツとゆかりの深いアーティストは多く存在するが、その中でも昨今スポーツとリンクする音楽として強く想起されるのはGReeeeN。アスリートの舞台裏を鋭く切り取るNHK「アスリートの魂」のテーマソングに東日本大震災を受けて制作された「Green boys」が起用されたり、全国高等学校サッカー選手権大会の応援歌として「僕らの物語」が選出されたりと、スポーツの物語を彩る上でGReeeeNの楽曲はお馴染みとなっている。GReeeeNにスポーツのイメージが強くなったのは、彼らの出世作である「キセキ」がきっかけだろう。人気ドラマ『ROOKIES』の主題歌として700万DLを記録したこの曲は、のちに甲子園の入場行進曲としても使用され、ABC『熱闘甲子園』のテーマソングにもなった。ちなみに読売巨人軍現主将の坂本勇人選手やオリックス・バッファローズの中島裕之選手もこの曲を登場曲として使用している。


 そして、フィギュアスケートのソチ五輪金メダリスト、羽生結弦選手が熱唱する「はたちの献血」のCMソングとしても話題を集めた「ビリーヴ」もまた、多くのアスリートにとってゆかりのある楽曲。また、〈別に特別な力があるわけじゃない / 諦めないって決めただけ それを信じてんだ〉という歌うこの曲を、昨年惜しまれつつ引退した女子サッカー界のレジェンド、澤穂希さんも試合前に聞いていたという。GReeeeNは2015年、トップアスリートとコラボしたMVを3本制作しているが、「ビリーヴ」ではリオ五輪で惜しくもメダルには手が届かなかったものの、決勝まで力強い泳ぎを見せた競泳日本代表の入江陵介選手が出演。この楽曲に乗せてひたむきに練習に打ち込む姿や率直な心境を語る姿を見せる、素晴らしい作品になっている。ちなみに「Pride」では前述の坂本勇人選手が、「Green boys」ではボクシングのロンドン五輪金メダリスト村田諒太選手が登場しているが、こちらも胸が熱くなる作品だ。


  9月14日にリリースされるGReeeeNのニューアルバム『縁』には上記の「ビリーヴ」のほか、今年2年連続のトリプルスリー達成に期待のかかるヤクルトスワローズの山田哲人選手の登場曲である「遠くの空 指さすんだ」も収録。実際に〈さあ いざいけ 準備はOK~〉と神宮で流れ出すと、観客の手拍子と歓声が鳴り止まない、山田選手の登場にはなくてはならない一曲になっている。GReeeeNが山田選手のために書き下ろした〈雨の日も 風の日も/こんな僕の事を信じてる 願ってる/この声がある限り/どんな時も負けないと誓った 願った〉という言葉が、山田選手の背中を押してくれるかもしれない。


 こうして見てみると、やはりGReeeeNの楽曲はスポーツシーンにぴったりだなあと思わざるを得ない。GReeeeNの活動方針もまた、スポーツシーンとマッチする要素がある。今年でデビュー10周年を迎えるGReeeeNだが、未だにメンバーの顔を伏せたまま活動を続けている。どんな年代の、どんな姿のメンバーたちなのかわからないからこそ、全ての世代のリスナー、そしてアスリートたちにGReeeeNの生みだす普遍的なメッセージを届けることができるのかもしれない。


 また、多くのGReeeeNの歌詞には上手くいかなくて揺らぐ情けない自分と、それでも周りの温かさや優しさに助けられて、なんとかかんとか立ち上がろうとする姿が率直に描かれている。それは毎日をがんばって生きる全ての人が経験することで、その共鳴力こそがGReeeeNがこれほどまでに長い間支持されてきた理由に他ならないが、スポーツ映像とともにGReeeeNの楽曲が流れると、大舞台で輝くアスリートたちもまた、後悔も苦悩も弱さもあるひとりの人間であることに気付かせてくれる。心が折れそうな出来事に何度もぶつかっても、それでもなお立ち向かうアスリートをぐっと自分の近くに感じさせる力を、GReeeeNの楽曲は持っているのだ。


 東京五輪に向け、日本のスポーツ熱はさらに高まっていくだろうし、これからもたくさんのアスリートの姿に私たちは心を揺さぶられるだろう。そんな時、ただ遠い出来事としてその感動を受け取るのではなく、彼らの頑張りや人生そのものを、明日の自分が頑張るためのエネルギーとして受け止めたい。GReeeeNの音楽は、きっとそれを手助けしてくれるはずだ。(文=岡野里衣子)