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夢みるアドレセンスが5年目にして手に入れた、“カワイイだけ”じゃない強さ

2016年08月24日 18:01  リアルサウンド

リアルサウンド

夢みるアドレセンス『結成4周年記念フリーライブ』の様子。

 アラビアンなシタールのフレーズが流れると、「5年目行くよーー!!」リーダー・荻野可鈴の第一声で、夢みるアドレセンスの5年目が幕を開けた。


 8月12日に結成4周年を迎えた夢みるアドレセンスが、翌13日、東京ドームシティ ラクーアガーデンステージにて『結成4周年記念フリーライブ』を開催した。人気ティーンファッション誌のモデルを中心として、2012年に結成された彼女たち。「カワイイだけじゃダメなんですか!?」元々はファン投票によって選ばれたこの挨拶も、今やこうしてファン以外が目にするであろう公の場でも、他アイドルがいる場であろうとも、堂々と言い切る姿には清々しさを感じる。「とにかく全員カワイイ」という宣伝文句を含めて、こんな強気な、いや、自信に満ちあふれた言葉が様になるグループなんて彼女たち以外にいないだろう。


 1曲目「おしえてシュレディンガー」に続いて、「ひまわりハート」で会場を沸かせる。小柄な身体を振り乱してダイナミックに歌い躍り煽る荻野可鈴、どこか飄々としながらも圧倒的な殿上人オーラをバンバン放ってくる山田朱莉、太い歌声と爪先から足先までしなやかな美しい動きで惹きつける志田友美、長い手足が繰り出すキレとシャープさで秀麗に舞う小林れい、最年少のほとばしるパワーと大人の表情が交錯する京佳。見た目も性格も異なる、言動もそれぞれが自由奔放な5人だが、同じステージでの動きをとってみても、これほどまでに各個性が現れるグループはそうそういない。そして何よりも、異様なほど絵になるそのシルエットが、夢みるアドレセンスの大きな武器でもある。


 「結成4周年フリーライブ、ようこそお越しくださいました!! 夢みるアドレセンスは昨日、結成4周年、4歳を迎えました!!」荻野が叫ぶ。「とはいっても、まだ4歳ですから、全然子どもですよ」と山田が続けるが、「アイドル年齢で言ったら、4歳はまあまあでしょう」との京佳の返しに「まあまあか……」と思わず苦笑いの空気が。それを遮るように志田が「じゃあさ、4周年を記念して、みんなでお祝いの歌を唄おう?」と提案。会場一体となったバースデーソング「Happy birthday to 夢アド」の合唱が夏の遊園地に響き、祝福ムードに包まれた。


 ノリノリのディスコ・ロック「舞いジェネ!」、最新シングルのサマーチューン「Love for You」へと続く。夢みるアドレセンスは2015年のメジャーデビュー以降、さまざまなアーティストとのコラボを果たしてきた。OKAMOTO’S・オカモトショウ、ドレスコーズ・志磨遼平、KEYTALK・首藤義勝といった、意外性のあるロックミュージシャンの起用は、楽曲はもちろん、ビジュアルイメージやパフォーマンスをひっくるめた総合芸術としてのアイドル性の振り幅を広げ、夢みるアドレセンスのポテンシャルを引き出したといえる。当ライブでは披露されなかったが、「Love for You」のカップリング曲である「リーダーシップ」は彼女たちの持つ、クールビューティーな側面と、歳を重ねて増した女性の色香を漂わすミステリアス&セクシーさを存分に表顕した楽曲となった。リリースの度に多角的な楽曲と種々のビジュアルで攻めながらも、それでいて支離滅裂にならないのは、各々の気位の高さとグループとしての確固たる自負を持っているからだろう。


 「ここで、重ー、大ー、発ー、表ー!」荻野が高らかに声を上げる。この日、“重大発表”があると事前に告知されていた。「私たち、夢アドからみなさんへ、重大な発表が、いや、はっ“ぴよ”うがありまーす!」山田の“ぴよぴよ”あかりんワールド全開の紹介で、ステージ後方のビジョンに注目が集まる。『1stアルバムリリース決定!』の文字が映し出されると大歓声があがった。メジャーとして初、インディーズ時代の『第一思春期。』から数えれば約2年ぶりとなるアルバム。「これからレコーディングする新曲もがっつり入る」そうだが、タイトル、発売日など詳細については、今後「ワクワクしながらお待ち下さい(荻野)」とのことだ。


 “重大発表”はこれだけでは終わらなかった。“PART2”として発表されたのは、2014年から続く定期公演『YUMELIVE!』が9月で終了することだった。観客から思わず「えーっ!?」という声が漏れるが、その反応を予想していたかのように荻野が「ですが……?!」と続け、新たに『YUMELIVE! JAPAN』企画が始動することを発表。秋葉原・AKIBAカルチャーズ劇場から渋谷・WWWへと会場を移し、9月23日から毎月行われるという。このところの『YUMELIVE!』は激しいチケット争奪戦となっていたが、場所の変更、キャパシティの拡大だけではないようで、「日本全国まわっちゃうかも!?」との注目発言も。それを受け、「全国行きたいっ! 盛岡とか花巻とか川井とか行きたいっ!!」と志田が興奮するも、「それ全部岩手だよね?」とバッサ切られて会場の笑いを誘った。(※志田は岩手出身)


 「こうして4周年をみなさんとワイワイお祝いできたのも、これからワクワクすることが待ってるのも、ここにいらっしゃるユメトモ(※夢アドのファン)が私たちを支えてくださってるからだと思っております。ユメトモのみんな、いつもありがとうございます」


 荻野があらためて感謝の意を述べると、温かい拍手が起こる。


「夢みるアドレセンスは5年目を迎えます。ここから先、リアルな話、カワイイだけじゃダメだと思ってます。今はまだ“顔だけカワイイ”とか言われがちな私たちですが、これから出るアルバム、パワーアップしたライブ……新しい武器を手に入れて、私たちは、私たちの、私たちなりの道を進んでいきます!! なので、夢アドについてきてくれますかーー?」


 ユメトモが歓声をあげて応えると、「5年目もよろしくね! ファンタスティックパレードォォォーー!!!!」荻野がありったけの声でタイトルコールでバックビートのリズムとオリエンタルなギターフレーズが襲い掛かる。今やライブの盛り上がりには欠かせないキラーチューン「ファンタスティックパレード」。手を回す印象的な振りを、荻野の扇動する「くるくるとーん!くるくるとーん!」の掛け声に合わせ、メンバーに負けじとユメトモも右へ左へと手を回して熱狂する。この日、一番の盛り上がりを見せ、ライブは終了した。


 ライブ後に行われた、グッズ購入者の特典会終了後の最後の挨拶にて、ファン有志によるサプライズ。メンバーカラーに彩られた花束が贈られた。


 「みんな大好きーー!! ユメトモ大好きー!!」


 荻野の喜びにあふれた甲高い声が、真夏の空に響き渡った。


 ライブは全5曲、30分ほど、欲をいえばもう少し観たかった気持ちはあるが、夢みるアドレセンスの現在を魅せつけるに充分な内容だった。まだそれぞれがティーンファッション誌のモデルだった頃には想像も出来なかった、ジャンル無双のさまざまなアーティストとのコラボによる異様なほどの強度を誇る楽曲群と、底知れぬ5人の力量の融合。とくにここ最近、イベントなどで見せる、初見の観客をも飲み込んでいく気迫は凄まじいものがある。先述の『YUMELIVE! JAPAN』は1回目となる9月23日のチケットが販売開始3分で即完売するなど、その勢いは止まらない。カワイイだけじゃない、5年目の夢みるアドレセンスに期待が膨らむばかりだ。(冬将軍)