2016年08月23日 11:32 弁護士ドットコム
年収が350万円から700万円に上がったのにお金が貯まらないーー。そんな悩みを打ち明ける投稿が、ネットの掲示板で議論となった。
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投稿者は32歳の独身男性で、2年前の転職をきっかけに、年収が350万円から700万円に大幅アップした。ところが、無駄遣いが多く、「金がたまらない」と感じているそうだ。
投稿者はお金が貯まらない原因を自分の無駄遣いだと考えているようだが、この投稿に対するコメントでは、税金の問題を指摘する声もあった。「年収が増えても、加速度的に税金やら社会保険料やら徴収金が増えるから可処分所得は然程変わらない」といった意見や、「年収400万ぐらいでのらりくらり生きてるほうが人間らしい生活かも知れない」という感想もあった。
年収が増えても税金が増えるから可処分所得はそれほど変わらないという指摘は正しいのだろうか。税金はどれくらい増えるのだろうか。三宅伸税理士に聞いた。
「実際は、年収(額面額)が増えると手取額も増えていきます。ただし、手取額の割合は、収入のおよそ85%から65%に低下します。
それは、額面金額から健康保険料(4.98%)、年金保険料(収入が約800万円まで8.91%。それ以上は一律)、雇用保険料(0.4%)、所得税(累進課税)、住民税(10%)が控除されるからです。
たとえば、『年収1000万円』といっても、使えるお金は約735万円になります」
三宅税理士はこのように述べる。これらの負担の中で、影響があるのはなんだろうか。
「特に影響が大きいのが、所得税です。所得税は5%から45%の累進課税です。収入が増えれば課されるされる税額も多くなります。
また、税額を計算する際の『給与所得控除額』も収入が増えると割合が低くなるので、実際使えるお金は低い率になります」
「このように、年収が上がると税金などの負担が大きくなるのですが、それでも、手取りが昇給の前より減るということは、もちろんありません。
『350万円だった収入が700万円に増えたのに生活が楽にならない。お金が残らない』と感じるのは、収入金額が増えても手取額が収入の額面どおり増えない事も一因となっているのではないでしょうか。
年収が350万円から700万円に収入が増えたからといって、『今までより自由に使えるお金が350万円増えた』わけではありません。実際の手取額は、約250万増えることになります。額面より100万円少ないわけです。
それなのに、収入のアップを額面通りに受け取って、支出をしていると赤字になってしまうのは当然です。消費の可能性が広がる分、支出も増えるというわけです。
付き合いが多くなる、ローンで家を購入する、便利な場所に引っ越し家賃が上がる…。収入が上がっても、様々な生活環境の変化が消費を押し上げます。収入と幸福度には一定の相関関係があると思いますが、収入が多い人すべてが幸せとは限らないのかもしれませんね」
【取材協力税理士】
三宅 伸(みやけ・しん)税理士
大阪府立大学卒業 一般企業を経て税理士法人に勤務。 平成26年11月に独立開業。独立当初からマネーフォワード会計やチャットワーク等のクラウドを積極活用し業務効率化に取り組む。創業支援、法人成、介護事業また相続関係が多い。
事務所名 : 三宅伸税理士事務所
事務所URL: http://miyake-tax.jp
(弁護士ドットコムニュース)