ポコノ・レースウェイで開催されたインディカー・シリーズ第14戦。決勝レースは、雨で順延となり翌日の22日に行われ、チャンピオンを争うウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が今季4勝目を挙げた。予選3番手と今季ベストグリッドからスタートした佐藤琢磨(AJフォイト)だったが、1周目のターン3でバランスを崩しウォールにクラッシュ。悔しいリタイアとなってしまった。
雨に見舞われたために翌月曜日の正午過ぎから行われた決勝レースでは、フロントロウのふたりが序盤から激しいトップ争いを繰り広げた。キャリア初ポールから発進したミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)と、予選2位のジョセフ・ニューガーデン(エド・カーペンター・レーシング)だ。
アレシンの速さは非常に安定しており、彼は200周のうちの87周をリードした。もちろん今日の最多リードラップだ。しかし、あと一歩のところで初勝利を手にすることは叶わなかった。
優勝は、165周目にトップに躍り出たウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が掴んだ。予選8位だったパワーは序盤戦にはトップ10圏外に落ちることもあった。しかし、レースの中盤からスピードアップし、クルーたちの素晴らしいピット作業も味方につけて165周目にトップに立った。
レース終盤の彼のマシンは圧倒的なスピードを誇っており、アレシンをもってしても攻略はできず。残り10周でも0.3秒差に食らいついていたアレシンだったが、そこからは差を広げられてしまった。
パワーは2013年のフォンタナ戦に続く500マイル・レースでの2勝目を手に入れた。オーバルでの優勝回数は、テキサス(2011)、フォンタナ(2013)、ミルウォーキー(2014)に続く4回目だ。ゴールでのアレシンとの差は1.459秒まで開いていた。
ホンダ勢はレース前半には優位を保っていた。しかし、パワーがレース中のマシンチューニングの巧みさで逆転勝利を実現した。
「レース序盤の僕らのマシンは良くなかったが、ピットストップで変更を重ね、マシンを良くしていき、100周目を過ぎた頃に速さを実感できるようになった。そこからは思う通りに走れた。ポイント差も大きく縮めることができた。残る3レースが楽しみだ」とパワーは目を輝かせていた。
ポイント・リーダーのサイモン・ペジナウ(チーム・ペンスキー)がピットアウト直後の158周目にターン1でラインを少し外れたためにクラッシュ。18位に沈んで13点しか稼げず、パワーとのポイント差はレース前の58点から20点にまで縮まった。
表彰台最後のスポット、3位を得たのはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)だった。土曜日のプラクティスで予選シミュレーション中にクラッシュし、予選を走れなかった彼は最後尾グリッドからスタートした。
しかし、レース距離の4分の1にも届かない49周で彼はトップに躍り出た。そのスピードは驚くべきものでポコノ2連勝の可能性は十分になった。しかし、163周目のリスタート直後にバックストレッチで突如としてエンジンパワーが失われた。
ピット・ロードに入ってプログラムをリセットするとエンジンが息を吹き返し、レースに戻ることができたが、その時点で1周遅れに陥ってしまった。それでも、この直後にコースに出たマシンのパーツが転がったためにフルコースコーションが出され、それを利用してリードラップに復活。
そこから今日2回目の猛チャージを見せ、トニー・カナーン(チップ・ガナッシ)、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)、ファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)、カルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)、さらにはニューガーデンまでパスしてトップ3フィニッシュを達成した。
佐藤琢磨( AJ・フォイト・エンタープライゼス)は今季ベストの予選3位からスタートしたが、1周目のターン3で3位を保っていながら単独スピン! 1回転したマシンはフロントから外側のセーファーバリアに激しく突っ込み、その場でリタイアとなった。フロントウイングのセッティングが間違っていたのが原因だ。
「いいスタートが切れて、3位でターン3を迎えたんですが、突然リヤが流れた。フェニックスの予選でクラッシュした時にはフロントのダウンフォースの計算が2パーセント間違って大きくなっていたんですが、今回は3.5パーセントも前にいっていたんです」
「僕らがセッティングを変更する時には、だいたい0.2パーセントぐらい変えていくのが普通なんですが、3.5パーセントも今日は間違ってしまった。前がグリップし過ぎ、突然スピンしちゃうのも仕方が無かったですね」と琢磨は残念がっていた。左足をコクピット内で打って腫れていたが、「テキサスは右足しか使わないから大丈夫」と琢磨は話していた。