エンジン対決が熾烈なスーパーフォーミュラ。この第4戦ツインリンクもてぎは、年間使用できる2基のエンジンの2基目の投入タイミングにあたり、トヨタ、ホンダともにニューエンジンを搭載してきたが、その出来映えはどうだったか。開発ポイントを探るとともに、JRP主催の会見ではトヨタ、ホンダの開発エンジニアの探り合いも見られた。
土曜日に行われた会見では、お互いの開発状況を探り合い、TRD開発部の永井洋治エンジニアとホンダSakura研究所の佐伯昌浩エンジニアで以下のようなやりとりが行われた。
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永井 「佐伯さんにお聞きしたいのが、今回、ホンダさんは相当頑張って、かなりの馬を連れてきたと聞いていますが。何頭くらい連れて来たのですか?」
佐伯 「それは言えないです(笑)。それでも後半スペックはある程度、燃焼の部分を突き詰めようと。燃料流量は決まっているので、その燃料をしっかり燃やして、使い切る。その部分に集中して開発してきたエンジンですので、(馬力は)上がっていることは上がっています」
永井 「風のウワサではダービーの出走馬(最大18頭)の倍くらいだとか」
佐伯 「そんなことはないです(笑)」
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現在のエンジンの熾烈な開発競争を垣間見れたひと幕だったが、両メーカーとも、今回の後半用ニューエンジンはかなり力を入れて開発を行ってきていた。
「今回の狙いはピックアップの向上、イメージとしてはNAエンジンにより近づける。あとはパワーを上げることです」と話すのは、TRD永井エンジニア。今回のトヨタR14-Aはハードウエア面では吸気系、カムシャフトを変更、吸気効率を改善させ、ソフトウエア面ではエンジンのレスポンス、ピックアップの向上が盛り込まれているという。実際、ドライバーからも「ドライバビリティが良くなった」という声が聞こえた。
■ほぼ全面見直しで新しくなったホンダHR-414E
一方のホンダHR-414Eは、佐伯エンジニアが「マップ面、制御データなど、ほぼすべて新しくなっていまして、基本的にはこれまでの実績があまり使えないような、それくらい、大きな変更をかけています」と話すように、ビッグチェンジを行った。
「後半スペックは、今年の前半はタイヤメーカーが変わるということもあって、去年、入れたかった項目を除外した状態で今年の前半スペックの開発をスタートさせています。その除外したものというのは、ドライバビリティ。やはりタイヤ特性をつかむために重要であるので、ドライバビリティに影響しそうな項目については、前半から除外して開発を進めてきました。その除外していた項目、そしてもともと後半に向けて開発していた項目、それらをすべて投入したのが、今回のスペックになっています」と話す佐伯エンジニア。
これまでトヨタ陣営に対して劣勢だったホンダ陣営。チームやドライバーからは、今回のニューエンジンの評判は上々で、「下のトルク感がよくなった」「ようやく、トヨタと戦えるようになった」という声が聞こえる。
しかし、佐伯エンジニアとしては、「ドライバーからも良いというコメントを聞きましたが、良いという割には予選順位はもう少し上に行きたかった」というのが本音。「実際、金曜日の走行ではデータ上の不具合が出て、性能を出し切れなかったという状況も出てきました。それがなければ、金曜日からセットアップをもっと詰めることができたと思うので、チームさんにご迷惑をかけてしまった」とは、佐伯エンジニアの予選を振り返ってのコメント。
そのセットアップの詰めの懸念が反映されたのか、決勝では上位のホンダユーザーが結果的に上位を逃し、ホンダ勢最高位は6位。本格的な逆襲は次の岡山ラウンドに持ち越された。一方、ホンダのニューエンジンを警戒していたトヨタはトップ5を独占。TRDの佐々木孝博エンジニアは「予定どおり、新しいエンジンの性能を発揮することができました」と、レース後に笑顔を見せた。