■大会名称:第11戦チェコGP
■開催日:2016年8月21日(日)決勝結果
■開催地:チェコ共和国/ブルノ(5.403km)
■周回数:22周(118.866 km)
■観客数:82,066人
■コースコンディション:ウエット
■気温:17度
■路面温度:19度
■PP:M・マルケス(1分54秒596/Honda)
■FL:C・クラッチロー(2分08秒216/Honda)
ロッシが2位、表彰台獲得!
Movistar Yamaha MotoGPのV・ロッシが、見事な走りと完璧なタイヤ・チョイスが功を奏して2位表彰台を獲得した。チームメイトのJ・ロレンソは、フロントタイヤの不具合のため途中でマシンを交換。17位でゴールした。
ウエット・コンディションで始まった決勝は、タイヤ・チョイスが重要な鍵を握る一戦となった。ロッシはグリッド2列目から慎重なスタートを切り、タイヤが暖まるのを待ってアタックを開始した。C・クラッチロー(ホンダ)に先行を許したあと、D・ペドロサ(ホンダ)、B・スミス、P・エスパルガロについて行って一気にパスする。
10周目には、A・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)がマシン・トラブルで遅れたため、9番手まで順位を上げて、さらにクラッチローのテールにつきながらD・ペトルッチ(ドゥカティ)とM・ビニャーレス(スズキ)を抜き去る。 A・エスパルガロ(スズキ)が戦列を離れたことで、次のターゲット、M・マルケス(ホンダ)の背中が見えて来る。この時点で残りは7ラップ。
自己ベストタイムを記録しながら好走を続けるロッシは、1ラップ後にH・バルベラ(ドゥカティ)をとらえ、さらにA・イアンノーネ(ドゥカティ)をパスし18周目には2番手へと浮上。その後もペースを緩めることなく後続を引き離していったが、すでにトップとの差が大きく開いていたため2位獲得へと作戦を切り替えてゴールし、貴重な20ポイントを獲得した。
一方のロレンソも、ロッシと同様のタイヤ・チョイスでスタート。慎重にタイヤを暖めながら一旦は後退するものの徐々にペースを上げていった。レース後半に入ってタイヤ・グリップがさらに上がると、10番手まで追い上げたが、残り7ラップになってフロントタイヤのセンター・トレッドを激しく消耗したため予定外のピットインを余儀なくされてしまった。
スペアマシンには、フラッグ・トゥ・フラッグのレースとなる可能性を想定してスリック・タイヤが装着されていたが、路面は依然としてウエットの状態。そのため1ラップを走行してすぐまたピットに戻り、この間にタイヤを履き替えた1台目のマシンに再び跨りレースを続行した。これによって完走を果たしたものの、17位とポイント圏外に留まった。
ロッシは20ポイントを加算して合計144ポイント。これでランキング2位に上がり、トップを53ポイント差で追う。
なお優勝はC・クラッチロー。バリー・シーン(ヤマハ)の1981年のスウェーデンGP優勝以来、英国人として35年ぶりの最高峰クラスでの勝利となった。次回、第12戦は2週間後、イギリス・シルバーストーンで開催される。
P・エスパルガロが貴重なポイント獲得
Monster Yamaha Tech 3のP・エスパルガロは、12番手から好スタートを見せ、すぐさま上位のファクトリー勢に絡んで7番手に浮上、3ラップ目で一つ順位を下げたものの、その後も果敢に攻め続けた。徐々に路面が乾き始めると上位の順位が目まぐるしく入れ替わり、このなかでエスパルガロは13番手へと後退。残り7ラップを走り切り、貴重なポイントを獲得してランキングも7位へ上がった。
一方、B・スミスは、グリッド4列目からスタートし、すぐさまペースを上げて9番手まで浮上した。レース後半に向けタイヤを温存しながら順調に走行を続けていたが、残り8ラップで不具合が発生し、リタイアとなった。
2週間後ホームであるイギリスGPで復活を目指す。Monster Yamaha Tech 3はチェコGP後のIRTAテストに参加する。
コメント
Movistar Yamaha MotoGP
V・ロッシ選手談(2位)
「タイヤ・チョイスを間違えてしまったと思い、始めはがっかりしていたんだ。でも走るごとにリアのハード・コンパウンドの状態が良くなってきた。長いレースなので、そのあとも最後まで集中力を切らさず、ミスをしないように心掛けて走ったんだ。一時12番手まで下がってしまったことを考えれば、2位まで挽回し、20ポイントを獲得できてとてもうれしい。しかもランキングも2位まであがった。チームとしていい仕事ができたし、正し
い選択をすることができた」
J・ロレンソ選手談(17位)
「いいレースができていただけに本当に悔しい。序盤は雨がひどかったのでブレーキングが難しく、またコーナー出口ではハード・コンパウンドがしっかりグリップせず苦労した。慎重にいかなければならないと思っていたので、序盤に大きく後退してしまったが、少しずつ路面が乾いてくるとリアタイヤの状態が良くなり自信が戻ってきていたんだ。激しくプッシュするうちに、今度はフロントタイヤがだめになってマシン交換を余儀なくされてしまった。しかも2回もね。そういうわけで、結局、最初のマシンでチェッカーを受けて17位。ロッシはムジェロで不運に見舞われたが、今回は僕の番。そう考えると今シーズンはバッドラックが多いね......。こんなことがまた何度も起こらないように、これからも懸命に仕事に取り組んでいかなければならない。こうした問題はドライでも起こるし、今日のようにウエットでも起こる。こんな不運な出来事がもう二度とないようにしないと......」
M・メレガリ、チーム・ディレクター談
「今朝の天気予報を見たとき、今日のレースはタイヤ・チョイスが鍵になるとわかった。チームとしては路面が非常にゆっくりと乾いてくると考えていたため、硬めのタイヤをチョイスすれば最後までマシン交換せずに走り切れると判断した。ふたりのリアにハード・コンパウンドを採用し、これがぴたりと当たった。もちろん、序盤が厳しい展開になることも承知していた。そして彼らは完璧にその状況をコントロールした。バレンティーノは持ち前の冷静さと豊富な経験を生かして序盤の状況に対処。12番手まで後退したときも少しも慌てる様子はなかった。ペースアップのチャンスが巡って来たときにも、これを逃さずすぐさま対応することができた。2位は完璧な結果と言っていいだろう。一方のホルヘは、最終結果は残念だったがレース自体は素晴らしかった。フロントタイヤの問題さえなければ、きっと表彰台に上っていただろう。初日の金曜日から好調で、決勝ではどんなコンディションにも立ち向かう準備ができていたのだ。明日はブルノに残り、IRTAテストに参加する。ニューパーツをいくつか試し、シーズン後半戦の方向性を見つけたい」
P・エスパルガロ選手談(13位)
「午前中に行われたウォームアップ・セッションでは、ウエット・コンディションにかなり苦戦した。でも決勝までの間にマシンの状態が格段に良くなったため、レース序盤で多くのマシンを追い抜くことができた。ところが路面が乾き始めると、グリップとトラクションが十分に得られなくなりふたたび厳しい状況に陥ってしまった。それでもペースを守り、ミスをしないように気を付けながら最大限のポイントを獲得できたのはとても良かったと思う。今日は電子制御システムのポテンシャルを十分に引き出すことができなかったし、レース終盤では、リアにハード・コンパウンドを履いたほうが良かったのかもしれない。今は何よりも、次のシルバーストーンがドライ・レースになることを祈る」
B・スミス選手談(DNF)
「マシン・トラブルでリタイアすることになり非常に悔しい。それまでは順調に走れていたからなおさらだ。オープニングラップはとてもうまくいって、いくつかポジションを上げることができたし、マシンのフィーリングも上々だった。路面が乾いてくるとペースを上げ、近くのライバルたちにしっかりついて行くこともできたんだ。同時にレース終盤の鍵となると確信していたのでタイヤを温存することも忘れていなかった。不運にも、ピットインを余儀なくされてしまった。それまで競り合っていたライダーたちが5位や6位に入っているので、トラブルさえなければ僕もそのあたりにいたはず。スタート直後から順調に上位陣に近づいていったのに、このようなことになり非常に残念だ。今季2度目のトラブルによるリタイアも不運だった。明日のテストでいくつかの課題に取り組み、自信を持って次のホームGPに臨みたい」
H・ポンシャラル、チーム・マネジャー談
「今日のような日には、どんな事態も起こりうることを誰もが知っている。今シーズンに入ってからアッセン、ザクセンリンクに続いて3度目だ。ドライとウエットが入り混じった非常に難しいコンディションだったので、他のライダー同様、唯一テストできたソフト・コンパウンドを選択した。今朝のウォームアップ・セッションでは、大量の雨のなかでしっかり機能してくれていたからだ。ところが、路面が乾き始めると、ハード・タイヤでギャンブルに出たライダーたちがアドバンテージを握ることとなった。ポルもブラッドリーもベストを尽くし、少しでも前の順位をキープしようとがんばったが、ブラッドリーにトラブルが発生してリタイア。それまで力強いレースを展開していただけに残念だった。ポルは懸命に攻め続け、貴重な3ポイントを獲得し、チャンピオンシップで順位をひとつ上げた。次のシルバーストーンは晴天に恵まれ、ドライ・コンディションになることを期待している。そして最後に、カル(クラッチロー/かつてTech3で参戦)の優勝を祝福したい」