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Arnage Racing スーパーGT第5戦富士 レースレポート

2016年08月22日 16:21  AUTOSPORT web

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ODYSSEY SLS
SUPER GT Rd.5 Fuji 300km
2016/8/6~8/7

TEAM RELEASE

Arnage Racing

チーム一丸で流れを取り戻し、ポジションアップして16位で完走!
次戦鈴鹿1000㎞に向けて弾みをつける。

 悔しいリタイヤを喫した前戦菅生ラウンドから、富士ラウンドまでのインターバルは実質10日間。チームは、慌ただしい短期集中のメンテナンスを行なった。幸い外装パーツには傷みがほとんどなかったため、ガレージではリアバンパーの小さな傷を補修し、折損してしまった左側のドライブシャフトを新しいものに交換した。菅生ラウンドでは、わずかなミスが招いた歯車の食い違いから本来のレースをすることができなかったチームは、もう一度ピットワークを細かく検証し、レースの組み立てを見直した。7月29日には第5戦富士での参加条件が発表され、車高、エアリストリクター径、給油リストリクター径等の変更を求められるマシンも多いなか、Mercedes Benz SLS GT3はエアリストリクター径、給油リストリクター径ともに変更なしと決まった。ストレートの長い富士スピードウェイで、このアドバンテージが活かされることを期待しつつ、チームはレースウィークを迎えた。

August 6th Qualifying Day
晴れ/ドライ  気温:33℃→32℃ / 路面温度:48℃→47℃
入場者;18,400人

 全国的に厳しい暑さが続くなか、高地御殿場も夏本番を迎えていた。レースウィークも連日30度を超える猛暑となっていたが、夏休みということもあり、搬入日から富士スピードウェイには多くの観客が訪れた。ODYSSEY SLSも機材と共に金曜日に搬入され、入念に走行準備が行われたが、最終暖気の際に6速ギアが入らない症状が出て、メカニック一同をひやりとさせた。しかし、ガレージでのデータを元に再調整をしたところ、症状は解消され、無事に予選日を迎えることができた。
予選日の朝も真夏の太陽が照り付け、8時50分からの公式練習の始まるころには気温が30度近くに上昇していた。練習走行のスタートと同時に、安岡選手がコースイン、凜太郎選手と交替しながら、ここ富士でのマシンのフィーリングを確認した。2度の赤旗に走行を中断される場面もあったが、サファリの時間も使って、決勝を見越した細かい調整が行われた。心配された昨夜のギアの動きにも問題はなく、マシンは順調に走行することができた。この夏の決戦に向けて投入した新しいセットアップの確認が行われ、ピットイン、ピットアウトを繰り返しながら、セットを煮詰めていった。

 午後になると、真夏の日差しはますます厳しさを増し、じりじりと照り付ける。路面温度が50度近くまで上昇するなか、14時25分から予選が行われた。夏の富士ラウンドでも安岡選手がアタックを開始した。渾身のアタックをかけた3Lap目、安岡選手が1'39.555をレコードして18位と好ポジションに位置したとき、コース上でストップしたマシンが出たため赤旗が提示され、予選は中断された。残り時間は4分、このまま予選が終了するかと思われたが、アタックできていないマシンが多かったため、予選は再開された。厳しい暑さが予想される明日の決勝でのタイヤ無交換作戦を考えると、タイヤ温存が第一と考えたチームは安岡選手を再アタックさせず、他車のタイムアップの結果、ODYSSEY SLSは明日のレースを23位から戦うことになった。とはいえ、この時期の予選タイムとしては、これまでにない好タイムで、明日の決勝を戦うには悪い材料ではない。予選終了後、日が陰ってくるにつれて気温は下がり、雄大な夏富士が心地よい夏の夕暮れに映えていた。チームは明日の決勝に向け、ミスなく、一秒でもピット作業のタイムを縮められるよう、熱心にドライバーチェンジとタイヤ交換の練習を行った。

 予選の結果は以下の通り

P1 #55 ARTA BMW M6 GT3 高木真一 / 小林崇志  (1'37.545)
P2 #21  Hitotsuyama Audi R8 LMS リチャード・ライアン / 藤井誠暢 (1'37.889)
P3 #51  JMS LMcorsa 488 GT3 都筑晶裕 / 新田守男 (1'37.908)
P23#50 ODYSSEY SLS  安岡秀徒 / 久保凜太郎 (1'39.555)



August 7th Race Day
晴れ/ドライ 気温:33℃→32℃ / 路面温度:54℃→48℃
入場者:33,500人

 決勝の日も、朝から夏らしい青空が広がった。ピットを吹き抜ける風は富士山麓らしい爽やかさだったが、真夏の太陽が高くなるにつれ、気温が上がっていった。午後の路面温度を考えると、タイヤの使い方がレース運びを考えるうえで間違いなく重要になってくる。Arnage Racingも今回こそタイヤ無交換作戦を成功させ、少しでもアドバンテージを稼ぎたいところである。9時から始まった朝のフリー走行では、土曜日に使用したタイヤを使って、凜太郎選手、安岡選手の順で走行し、タイヤがどの程度の走行距離に耐えうるかのテストをした。その結果、リアタイヤにはかなり負担がかかっているものの、なんとか決勝は無交換作戦を決行できそうだということが分かった。チームは最後まで入念にマシンのチェックを行い、決戦の時を待った。

 14時30分、気温33度、路面温度は54度。暑さと熱気が最高潮の中、真夏の決戦の火ぶたが切って落とされた。静岡県警のパレードランからフォーメーションラップと続き、今大会もスタートドライバーを任された凜太郎選手が、23番グリッドからレースを開始した。

 非常によいスタートを切った凜太郎選手は、スタート直後の混戦をうまく潜り抜けて2つほど順位を上げ、21番手のポジションから1分42秒台の安定したペースで走行を始めた。荒れたレース展開がつきもののこの時期の富士ラウンドらしく、序盤からマシン同士の接触やタイヤのバーストが相次いで前方車両の順位の変動があり、凜太郎選手はスタートから9Lapで19位まで浮上した。その後凜太郎選手は、後方から迫ってくる速いマシンを敢えてスルーさせ、自らのペースをキープする作戦に出る。凜太郎選手は21位までポジションを落とすも、1分42秒台のペースを守り続け、無理をしない走行でタイヤをいたわりながら落ち着いた走りを見せた。


 レース展開に変化が起きたのは、レース序盤の形勢が固まりつつあった15Lap目。300クラス同士の接触によるアクシデントが起き、パーツがコース上に散乱したためセーフティーカー導入となる。このタイミングはチームにとって好機。23Lap目にレース再開となるとすぐに、Arnage Racingはドライバー交替のため、凜太郎選手をピットに呼び戻した。前戦菅生と同じ轍は踏むまい。今度こそ素早いピットワークでタイヤ無交換作戦を成功させようと、チームは手堅く給油と素早いドライバーチェンジを終わらせ、安岡選手がエンジンをかけようとした。

 ところが、エンジンがかからない。安岡選手がエンジンを始動させるタイミングでエンストが起き、その際に電源が落ちてしまっていたのだ。そのことに気づかず、安岡選手は懸命にエンジン始動を試みる。時間は刻々と過ぎていく。ようやくメインスイッチをオンすることに気づいたメカニックが駆け寄り、エンジンがかかったが、Arnage Racingは貴重な40秒ほどをロスしてしまった。

 安岡選手は、やっとコースに出ることができ、Arnage Racingはレースを再開した。この時点でODYSSEY SLSは見かけ上24位までポジションを落としていた。しかし、36Lap目、すべてのチームがルーティンのピットインを済ませると、ODYSSEY SLSは20位までポジションアップ、レースは後半へと突入する。安岡選手も凜太郎選手から引き継いだタイヤをいたわりながら、1分42秒台の落ち着いたペースで走行を続けた。気温は次第に下がってきていたが、路面温度は相変わらず50度台から落ちる気配を見せない。過酷な路面状況に悲鳴を上げて脱落してくるマシンのおかげで、ODYSSEY SLSは、さらに44Lap目に19位、56Lap目には17位と、少しずつ順位を上げていった。そしてゴール直前の60Lap目、ついに前方の60号車をとらえた安岡選手は更にもう一つポジションを上げ、16位でチェッカーを受けた。

 Arnage Racingは、ドライバーを含めたチームの一人一人が菅生ラウンドからの反省を活かし、悔しさをばねにして、再びチーム一丸で富士ラウンドを走りぬくことができた。

P1 #55 ARTA BMW M6 GT3 高木真一 / 小林崇志  
P2 #21  Hitotsuyama Audi R8 LMS リチャード・ライアン / 藤井誠暢
P3 #61  SUBARU BRZ R&D SPORT 井口卓人 / 山内英輝
P16 #50   ODYSSEY SLS 安岡秀徒 / 久保凜太郎

<ドライバー 安岡秀徒>
おつかれさまでした。菅生よりはいいレースで、ちゃんと完走できて、目標だった(トップとの差が)1周以内の完走で3点が取れて、よかったと思ってます。今回も、若干セッティングに苦労して、そこから何とかまとめて迎えた決勝だったんですけど、予想してたよりはポジション的には苦戦しました。自分も凜ちゃんも、もう少し速いペースで走れる予定でいて、それができればもうちょっと上の順位が望める…ってなってくると、300kmのレースでもポイントが争えるようなペースになるので、その「あとちょっと」が欲しいですね。個人的には菅生で、前回動いちゃって、今回動かなくて…(苦笑)それを取り返せるような状況でもないし、フィニッシュまでいいペースで走れるように、淡々と走りました。でもそれは、これまでもできていることだし、今回それができたことは、長いスティントを走るつもりでいる鈴鹿に向けては、よかった。ピットワークを含めて、チームとやる部分はもうちょっと改善できると思いますし、なんとか、鈴鹿に向けての形はできたのかな…っていうことで、ほんとに、どんなレースになるのか、次戦鈴鹿が楽しみです。頑張るのはもちろんですけど、楽しみです。期待していてください。ありがとうございました。

<ドライバー 久保凜太郎>
お疲れ様でした。前回の菅生のことがあり、心機一転とはいかないまでも、気持ちを新たに、ドライビングなんかを見直そうっていうことで、事前に安岡選手のところで、シミュレーターをやってるんですけど、今回は前回富士の動画も踏まえて、安岡さんに注意点とか改善点を教えてもらいながら練習して、そのイメージをしっかり持ってサーキットに来ました。修正点や反省点もいろいろあったんですが、いろんな考え方の部分でちゃんと変えられたところもあったと思うので、よかったと思います。レース自体は、予選で先輩が頑張っていいアタックをしてくれたので、決勝のスタートからいい流れが作れましたね。ストレートの速さは今回、周りよりも際立ってたんで、ストレート一本に絞って、しっかりとオーバーテイクもし、ブロックもできたのはよかったです。タイヤ温存についても、やれる限りのことはやったつもりです。ピットストップでエンジンがかからなかったのは、ちょっともったいなかったけど、鈴鹿の前にそれが起こったってことは、次は克服すればいいってことですから。次の鈴鹿は加納さんも走るし、チームとしてもホームだし、鈴鹿公式テストの時は不調だったので、それがどう成長したかを自分自身で知るためにも、鈴鹿が楽しみです。頑張ります。応援よろしくお願いします。

<アドバイザー 加納政樹>
おつかれさまでした。前回の菅生はチームとしての流れも悪くて、そこから短いインターバルでの富士だったので、チーム自体がどこまで流れを戻せるのかっていうのが一つの課題やったと思うんですが、予選も、39秒真ん中くらいのタイムが出たし、いろいろ試してることがうまくいった週末でしたね。土曜日のタイヤ交換の練習の時のメカニックの目つきや表情を見てると、改善せなあかん!という意識の中でみんなが頑張った成果が出たんじゃないかとすごく思ってます。ひとつのミスが一つ二つの順位に大きくかかわってくる。今、SUPER GTって、それくらいの厳しい状況だと思うんで、そんな中できちっと完走できて、チームポイント3を取れたっていうのは、ほんとに良かったと思います。ただもう一つ上のステージを戦おうと思うんであれば、そのステージを戦うためには何が必要かもう一回考えないといけないところに来てます。次はチームにとって一番大事な鈴鹿1000kmですが、これまで忘れ物をたくさんしてきてるはずですので、それをきっちり全部取りに行きたい。僕も乗りますし、なんとか、3人でポイントを獲れるとこで戦えるように頑張ります。また応援よろしくお願いします。ありがとうございました。

 次戦は8月27日、28日に鈴鹿サーキットで開催予定の第6戦鈴鹿ラウンドとなります。引き続き、応援のほど宜しくお願いいたします。

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