写真 スーパーフォーミュラでは初となった2スペックタイヤ導入の今回の第4戦もてぎ。予選ではチームやドライバーのタイヤ選択が分かれて多様な展開になったが、レースでは結果的に順位変動は多くはなく、大きなアクセントがつけられたとは言い切れない内容だった。表彰台を獲得したドライバー3人のコメントをもとに、2スペックタイヤ制の今後の可能性と課題を探った。
見事、優勝を果たしたITOCHU ENEX TEAM IMPULの関口雄飛はソフトタイヤの印象を「自分のクルマに関してはソフトタイヤは一発があってタレるというイメージだったのが、今回のタイヤは一発もあってタレないという、すごくいいタイヤで、これまでのミディアムが(全体的に)進化した感じでした。タイヤとしてはスーパーGTだったらこれで最高ですけど、ワンメイクでレースを面白くするという意味では、もっとタレてもいいのかなと思います」と、ドライバーとファンの視点で言及。
2位のVANTELIN TEAM TOM'Sのアンドレ・ロッテラーは「いいタイヤだね。だけど予選での2セットの使用はちょっと混乱が発生する。ウォームアップが1周のドライバーと2周のドライバーが混在してクレイジーなトラフィックになって、僕も接触(DRAGO CORSEの小暮卓史と)があった」と、予選でのウォームアップのトラフィックを指摘。
「今までのミディアムはもちが良すぎてレース中のタイヤ交換が必要ないので、ソフトタイヤの導入自体はいいと思う。今回のソフトタイヤはピットストップの作業があって、ファンももっとエキサイティングになれるんじゃないかな。ソフトとミディアム、両方あっていいと思うけど、予選に関してはもっとバラエティが広がるようになっていいと思うね」
今回はデータがなかったため、どのドライバーもソフトタイヤがどのくらいで温まるのか把握できず、さらに高気温となったためオーバーヒートを考えてペースを大幅に落とすドライバーも多かった。そのため予選セッションの終盤は数珠つなぎにマシンが並ぶ渋滞シーンが見られ、後ろからアタックするマシンがそこに突入するという、危ない場面もあった。
■ソフトタイヤのセット数、運用面で新たなアイデアも
3位となったP.MU/CERUMO·INGINGの石浦宏明は「グリップも高いしタレも少なくて、普段からこのソフトタイヤがいいなと。僕のドライビングスタイルにもソフトタイヤの方が合っている感じがするので(笑)。レース内容も予選も戦略の幅が出て面白かったと思いますが、強いて言うなら、2つのタイヤが戦略的に差が出るようにしたら面白いし、たとえばソフトタイヤを2セットではなく公平にするなら3セットでもよかったと思いますし、戦略の幅を広げるという意味では1セットでも面白いと思います。やる方は大変になりますけどね」と、セット数に関して新しいアイデアを提案。予選が3セッションの中でのソフトタイヤ2セットのみは、たしかに中途半端な形になったとも言える。
パドックの関係者、エンジニアやメーカーの方々に聞く限り、今回のソフトタイヤはおおむね好意的に受け入れられ、タイヤ自体としては「もっとレースでタレれば、戦略的に面白くなる」という意見がほぼ大半を占めた。石浦が話すように、スペック数を変えた方が良いのではという意見も多く、さらには「予選上位のタイヤをマーキングして決勝スタートにするべき」「いずれにしても、事前に公平にテストさせてほしい」と言った運用面での要求も同じように高かった。
レースにアクセントをつけるという目的は、今回のソフトタイヤでは完全には達せられなかったが、結果よりもまずはヨコハマタイヤ、JRPの今回のような積極的な姿勢が、今後のスーパーフォーミュラの人気向上になくてはならない要素になるのは間違いない。今回は開発期間が短く、エントラント側への説明や実走テストが少ないなかでの投入となったが、今後、もっと計画的で公平な形で進めることができれば、今まで以上に一枚岩となってスーパーフォーミュラを盛り上げることができそうだ。