2スペック目のソフトタイヤ導入で、選択肢が大きく増えたスーパーフォーミュラ第4戦もてぎの予選。限られた時間の中で、ソフトタイヤの開発を担ったヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル開発本部長の秋山一郎エンジニアに、その手応えを聞いた。
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──週末にソフトタイヤでの走行実績がないまま予選を迎えたが、ITOCHU ENEX TEAM IMPULがミディアムタイヤで予選Q1に臨んだ。今回の予選をどのように見ていたのか。
「まずはQ1でセオリーどおりに最初にミディアムタイヤでスタートして、その後ソフトタイヤというセレクトでみなさんアタックすると思っていましたが、上位2台(インパル)は最後もミディアムで、驚いたというか、すごいなと思いました。そういう意味では、(J-P.デ・)オリベイラ選手が残念でしたね。普通にアタックできていれば、インパルの1-2は堅かったでしょうね」
──富士のテストではソフトタイヤとミディアムタイヤのタイム差は約1秒だったが、今回のもてぎではそれほどの差はなかった。それはなぜなのか。
「2種類のタイム差は、今回の予選ではコンマ5秒くらいでしょうか。やはり富士の時と違い、暑い時期に向けてソフトタイヤを開発していたことがありますので、ちぐはぐな感じがしますがミディアムとのタイム差は縮まります。ですので、作りがしっかりしたミディアムタイヤはスティフネス(剛性)があるので、インパルのように乗り方次第、セッティング次第ではそれほど差は大きくなくなります。インパルはそのままソフトタイヤに代えてタイムゲインがあったので、タイヤを2種類作り分けた意味があったのかなと思います」
──コンマ5秒くらいの差になると、ミディアムタイヤとソフトタイヤのクロスオーバーが近くなる。事前にチームがそれを把握していたら、Q1でミディアムを選ぶチームも多くなったのではないか。
「そうですね。選んだチームはもっとあったでしょうね。そのあたりはそれぞれのタイヤでセットアップを詰めていけば、もっとタイムゲインもあったでしょうね」
──今回の予選を総括して、チーム、ドライバーの選択肢は大きく広がった。明日の決勝はあるものの、予選を見る限りでは2スペックのソフトタイヤ導入は成功と言っていいのではないか。
「2種類導入したことで、予選でいろいろあった。そういう意味では良かったかなと思います。ただ、この2スペックの方向でも何戦かすればチームの方でも勝利の法則のようなものができるので、すぐに戦略の幅は収斂していくと思います。ファンのみなさまが2スペック導入によって喜んで頂けるのであれば、今後もあっていいと思います」
──敢えて、今回の予選で課題を挙げるとすれば、サイドウォールの赤いラインがもう少し、見分けが付きやすいといいのだが……。
「ちょっとわかりづらかったかもしれないですね。それは反省点です。赤いラインをストロボラインのデザインにしたり、見た目の良さを頑張ったつもりでしたが、走行して回転したらピンク色っぽく見えたりして、ズッコケました(苦笑)。なかなかすぐには変えられませんが、反省点です」
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短い開発期間、そしてミディアムからソフトにタイヤを変えた時に、クルマの前後バランスが変わらないような特性にするなど、厳しい条件の中で進められたヨコハマのソフトタイヤ。今回はウエットタイヤも新しいスペックが投入され、チームからの評判も上々だった。ヨコハマタイヤのさまざまな積極的なアプローチが、これまで硬直化しかけてきたスーパーフォーミュラに大きな一石を投じていることは間違いない。